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開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー

プロダクトの方向性が見えなくなったら?~「インセプションデッキ」で開発の"核"を見つけよう

開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー 第7回


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 この連載では、開発現場で実践できるカイゼンのやり方と考え方について、お伝えしていきます。下敷きになっているのは、「カイゼン・ジャーニー」という書籍です。「カイゼン・ジャーニー」も、現場のカイゼンがテーマになっています。この新たに始める連載は、内容としては書籍を補完するもので、チームが現場でこのWebページを開きながら、実際にふりかえりをしたり、カンバン作りをしたりできるように作っています。本を開きながらより、Webページをモニタに映す方が、ワークショップもやりやすいですよね :) また、読者の皆さんが実際の状況を重ね合わせられるよう最初にストーリーがあり、その後解説が続く、といった構成にしています。ストーリーでは、カイゼンを実施するにあたってどんな背景や課題を想定しているかを描いています。よく知らない手法については、ストーリーに目を通すようにしてください。

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 このお話の舞台は、飲食店の予約サービスを提供するIT企業のプロジェクトチーム。ツワモノぞろいのチームに参加した新人デザイナーのちひろは、変わり者のメンバーたちに圧倒されながらも日々奮闘しています。第7回となる今回のテーマは「インセプションデッキ」です。

登場人物

和田塚ちひろ(25)この物語の主人公。新卒入社3年目のデザイナー。わけあって変わり者だらけのプロジェクトチームに参加することに。自分に自信がなく、人に振り回されがち。

和田塚(わだづか)ちひろ

この物語の主人公。新卒入社3年目のデザイナー。わけあって変わり者だらけの開発チームに参加することに。自分に自信がなく、周りに振り回されがち。

御涼()プログラマー。物静かだが、今後もちひろをよく見て助けてくれるお姉さん。

御涼(ごりょう)

物静かなプログラマー。チームではいろんなことに気を回すお母さんのような存在。今後もちひろをよく見て助けてくれる。

鎌倉()社内でも有名な凄腕のプレイングマネージャー。冷静で、リアリストの独立志向。ちひろにも冷たく当たるが…

鎌倉

業界でも有名な凄腕のプレイングマネージャー。冷静で、リアリストの独立志向。ちひろにも冷たく当たるが…

藤沢()頭の回転が早い、このチームのリードプログラマー。鎌倉の意向をうまく汲み取る。

藤沢

チームのリードプログラマー。頭の回転が速く、リーダーの意向を上手くくみ取って、チームのファシリテートにもつとめる。

境川(?)ほぼしゃべらない。実はチーム随一の天才プログラマー。自分の中で妄想を育てていて、ときおり滲み出させては周りを慌てさせる。

境川(さかいがわ)

彼の声を聞いた人は数少ない。実は社内随一の凄腕プログラマー。自分の中で妄想を育てていて、ときおりにじみ出させては周りをあわてさせる。

片瀬()インフラエンジニア。ちひろのOJTを担当していた。

片瀬

インフラエンジニア(元々はサーバーサイドのプログラマー)。他人への関心が薄いケセラセラ。ちひろのOJTを担当していた。

見えないプロダクトの核心

「どうも最近、鎌倉さんからのフィードバックの量が多いですね。」

 スプリントレビューの後片付けをしながら、ぽつりと御涼さんはつぶやいた。

「確かに」

 藤沢さんもホワイトボードを消す手を止めて、同意した。

 私たちのチームがつくっているツールは新規プロダクトで、要はチャットツールなのだけれど、ネットワーク上でドキュメントを共有し、そのドキュメントイメージの上にレビューコメントを直接残し、履歴管理もできるという機能が評価されており、特に開発現場で利用される場合が多い。そういう意味で、私たちもこのツールのユーザーであり、ドッグフーディングに余念はなく、プロダクトとしての方向性については理解しているつもりなのだけど……。

「機能のふるまいとしては合っていると思うのだけど、なんか鎌倉さんの見ている観点が違うというか」

「……ミーティングにただ参加しているだけと思ったら、結構鋭いですね、片瀬さん」

 例えば、今回のレビューであがったのは、ドキュメントの共有時の権限設定を細分化していくという機能について、ゲストの存在が指摘された。普段このツールを使っていない(アカウントを持っていない)人にも一時的に共有できるような設計が欠落しているという内容だった。

 機能要求レベルでごっそり、やるべきことが抜けている感じだ。そんなときの鎌倉さんは淡々としているものの、とてつもなく圧を感じる。

「でも、個別のフィードバックはしてくれるけど、何か核心については話してない気がするんだよね」

 御涼さんの勘には、皆同意なのだけど、誰もそのもやもやの正体が分からない。

 唐突に、藤沢さんが両手をあわせて、パチンと鳴らした。

「インセプションデッキを見直しましょうか」

「それは良いアイデア」

(インセプションデッキ、そういえば私見ていない気がする……)

「善は急げ、今からやりましょう」

「でも、鎌倉さん帰っちゃってる」

「……一旦ぼくらだけで眺めて、何か変わっているのではないか気づけないか、見てみません?」

 御涼さん、片瀬さんが親指を立てて、賛意を示す。

(なんか、仲良いなあ、この人たち)

 と、そこへ、トイレに行っていた境川さんも戻ってきた。御涼さんが経緯を話して、境川さんにも参加を促す。その間も、藤沢さんは境川さんに目を合わすことはない。この2人が表立って衝突することはなくなったけれど、和気あいあいになったわけでは決してない。

「……いいよ」

 藤沢さんと片瀬さんは顔を見合わせた。境川さんが、こうしたイレギュラーなミーティングに参加するのはとても珍しい。

「じゃあ、はじめましょう。藤沢くん、ファシリテートよろしくね!」

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この記事の著者

市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)

 ギルドワークス株式会社 代表取締役/株式会社エナジャイル 代表取締役/DevLOVEコミュニティ ファウンダー サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

新井 剛(アライ タケシ)

 株式会社ヴァル研究所 SoR Dept部長/株式会社エナジャイル 取締役COO/Codezine Academy Scrum Boot Camp Premiumチューター CSP(認定スクラムプロフェッショナル)/CSM(認定スクラムマスター)/CSPO(認定プロダクトオーナー) Javaコンポー...

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https://codezine.jp/article/detail/11666 2019/08/08 18:13

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