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開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー

プロダクトの方向性が見えなくなったら?~「インセプションデッキ」で開発の"核"を見つけよう

開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー 第7回


解説 「インセプションデッキ」

今回の解説は、藤沢が担当します。プロジェクトを全員の力を集結して正しいゴールに到達するためには、全員合意のもと、向かいたい先や制約をクリアにすることが求められます。今回は、プロジェクトの目的や制約などの全体像を明らかにするプラクティス、「インセプションデッキ」を紹介します。

 今回の解説は、藤沢が担当します。全員の力を集結して、プロジェクトの正しいゴールに到達するためには、全員合意のもと、向かいたい先や制約をクリアにすることが求められます。

 今回は、プロジェクトの目的や制約などの全体像を明らかにするプラクティス、「インセプションデッキ」を紹介します。

インセプションデッキの10の問い
インセプションデッキの10の問い

インセプションデッキとはなんでしょうか?

 インセプションデッキは、上の図にあるように10個の問いで、プロジェクトのWhyとHowを明らかにします。プロジェクトの目的や制約やリスクなどをクリアにするためにメンバー全員で作成します。リーダーが独自に作るものではなく全員で作成するため、期待値を合わせやすく、合意のもとでプロジェクトを推進できます。

 各問いで明確にすることをリストアップしておきましょう。

Whyを明らかにする問い Howを明らかにする問い 
1. われわれはなぜここにいるのか  プロジェクトの目的やミッション 6. 技術的な解決策 採用する技術やアーキテクチャー
2. エレベーターピッチ プロダクトのニーズ、顧客、差別化ポイントなど 7. トレードオフスライダー ローンチ時期、スコープ、予算、品質などの優先順位
3. パッケージデザイン ユーザーから見たプロダクトの価値 8. 期間を見極める 期間の見立て
4. やらないことリスト スコープを決定する 9. 何がどれだけ必要か 期間、費用、チーム編成など
5.「ご近所さん」を探せ プロジェクトのステークホルダー 10. 夜も眠れない問題 不安やリスクを洗い出し

なぜやるの?

 インセプションデッキを作成する意味を押さえておきましょう。以下の3点です。

プロジェクトの向かう先を明らかにする

 目的やスコープ、リスク、差別化ポイントなど、WhyとHowを明らかにするために実施します。

チームで作ることに意味がある

 メンバーがいない場所で決定した合意事項は、メンバーの自分事感が薄くなり、行間も伝わらないため、必ずチームでやりましょう。

プロジェクト内外のギャップを埋める

 解像度の粗い状態や認識のズレをチーム内で合わせ、プロジェクトの外とも認識を合わせるために活用します。

インセプションデッキとは
インセプションデッキとは

そうはいっても全員で全部作る時間がとれないんですが

全員でインセプションデッキを一からすべて作るのは、時間的にもハードルが高いことがあると思います。そういった場合は、以下のポイントを試してみてください。

 メンバー全員でインセプションデッキを一から作るのは、時間的にハードルが高いこともあるでしょう。そういった場合は、以下のポイントを試してみてください。

 
1.たたき台をリーダーや少人数のメンバーで作成して、それをベースに全員で共通理解を得る

 主要メンバーなど少人数で10個のデッキをざっくり作成してします。ただ、あくまでも作成するのはたたき台レベルです。作成した後に、行間を埋めるべく、チームでより濃く言語化していくことが重要になります。この時間によってチームが強くなり、方向性を合わせられるのです。

2.10個のデッキからプロジェクトで明らかにすべきデッキだけに絞る

 プロジェクトの性質やメンバーの状況などで、重要なデッキは異なるでしょう。みんなのゴールの認識をあわせるデッキにフォーカスを絞るのです。一般的なプロジェクトでは、目的、顧客像、差別化要因、リスクなどが重要になるケースが多いでしょう。そんな場合には、下記の3つをクリアにしましょう。

  • われわれはなぜここにいるのか
  • エレベーターピッチ
  • 夜も眠れない問題

 今回も、この3つに絞り作成手順を説明していきます。

事前準備

 以下を準備しておくと良いでしょう。

  • ペン
  • 付箋紙
  • A3用紙
  • タイマー
 

当日の進め方

 今回は3つのデッキを作成する手順になります。次の手順で実施すると良いでしょう。2時間から3時間くらいかかります。

「われわれはなぜここにいるのか」編(30~45分)

★図版の引用問題ないでしょうか?使用許可など★
(c)Jonathan Rasmusson、出典元(Agile Samurai Japanese Edition

 まずは、プロジェクトの目的を明確にする「われわれはなぜここにいるのか」です。チームは、多様なスキルのメンバーで構成されているでしょうから、目的の一致は絶対必要になります。

このプロジェクトに我々が参画している大事な理由を考える

このプロジェクトにわれわれが参画している大事な理由を考える

「各自、付箋紙を使って、なぜここにいるのかを書き出しましょう」

「各自、付箋紙を使って、なぜここにいるのかを書き出しましょう」

メンバーが複数枚を書き終わったタイミングで共有する

メンバーが複数枚(2~3枚)を書き終わったタイミングで共有する

「各自、一枚ずつ書いた内容を発言しながらみんなに共有してください。一枚話したら次の人の番です」

「各自、1枚ずつ書いた内容を発言しながらみんなに共有してください。1枚話したら次の人の番です」

同様の付箋紙を寄せる

同じ内容の付箋紙を1カ所に寄せる

「同じ内容の付箋紙は寄せましょう。ニュアンスが異なれば別のままにしてください。丸めすぎて貴重なメッセージが消えてしまうのを防ぐためです」

「同じ内容の付箋紙は寄せましょう。ニュアンスが異なれば別のままにしてください。丸めすぎて貴重なメッセージが消えてしまうのを防ぐためです」

全員のメンバーの意見を聞いたので、共感した点や、より重要な存在理由を議論する

全員のメンバーの意見を聞いたら、共感した点や、より重要な存在理由を議論する

「全員の意見がでてきました。共感した点はありますか?より重要な存在理由はありましたが?みんなで議論しましょう」

「全員の意見が出てきました。共感した点はありますか? より重要な存在理由はありましたか? みんなで議論しましょう」

プロジェクトの根幹に関わる理由を一つに絞る

プロジェクトの根幹に関わる理由を1つに絞る

「議論も白熱してきたことでしょう。われわれにとってミッションとも言える存在理由や根幹に関わる理由を一つに絞り、A3用紙に記載しましょう。結合するのも良いアイデアです」

「議論も白熱してきたことでしょう。われわれにとってミッションとも言える存在理由や根幹に関わる理由を1つに絞り、A3用紙に記載しましょう。結合するのも良いアイデアです」

「エレベーターピッチ」編(60~90分)

★図版の引用問題ないでしょうか?使用許可など★
(c)Jonathan Rasmusson、出典元(Agile Samurai Japanese Edition

 次は、プロダクトの特性や顧客像を明らかにする「エレベーターピッチ」です。

 超多忙な社長にエレベーターで会った際に、承認を得たい企画を数十秒で端的に説明するため、この名前がついています。

エレベータピッチの7項目の説明

エレベータピッチの7項目の説明

「ピッチは7項目あります。順番に埋めていき、最後に全体を行ったり来たりしながら見直しましょう」

「ピッチは7項目あります。順番に埋めていき、最後に全体を行ったり来たりしながら見直しましょう」

"潜在的なニーズ、解決したい課題"を付箋紙で書き出しながら議論する

「潜在的なニーズや解決したい課題はなんでしょうか? どんな問題を抱えてますか?」

「潜在的なニーズや解決したい課題はなんでしょうか? どんな問題を抱えてますか?」

"対象顧客"を付箋紙で書き出しながら議論する

「どんな顧客向けのプロダクトでしょうか?顧客の状況や利用シーンをイメージしながら顧客像を明らかにしましょう」

「どんな顧客向けのプロダクトでしょうか? 顧客の状況や利用シーンをイメージしながら顧客像を明らかにしましょう」

"プロダクト名"を付箋紙で書き出しながら議論する

「世の中に発表するプロダクト名はどんな感じになりますか?」

「世の中に発表する際、プロダクト名はどんな感じになりますか?」

"プロダクトのカテゴリー"を付箋紙で書き出しながら議論する

「そのプロダクトはどんなカテゴリーに入るでしょうか? メンバーと齟齬があったらまずいですね」

「そのプロダクトはどんなカテゴリーに入るでしょうか? メンバーと齟齬があったらまずいですね」

"ユーザーがこのプロダクトを使用することによる重要な利点、ユーザーの対価に見合う説得力のある理由"を付箋紙で書き出しながら議論する

「どんな利点がありますか?本当にそれは利点ですか?」

「どんな利点がありますか? 本当にそれは利点ですか?」

"代替手段の最右翼"を付箋紙で書き出しながら議論する

「顧客はどんな代替手段で、ニーズや課題を解決してますか?違う業界や異なる手段で顧客は解決していることもあるでしょう」

「顧客はどんな代替手段で、ニーズや課題を解決していますか? 違う業界のツールや異なる手段で解決していることもあるでしょう」

"差別化の決定的な特徴"を付箋紙で書き出しながら議論する

「われわれの作ろうとしているプロダクトの決定的な差別化はなんでしょうか?本当にその差別化で顧客はみなさんのプロダクトに乗り換えてくれますか?」

「われわれの作ろうとしているプロダクトの決定的な差別化ポイントはなんでしょうか? 本当にその差別化で顧客はこのプロダクトに乗り換えてくれますか?」

全体を眺め、読みながら前後関係を見直しアップデートする

全体を眺め、読みながら前後関係を見直しアップデートする

「全項目が埋まりました。一度、声に出して読んでみましょう。その後、前後関係を見ながら、矛盾点やもっと良いアイデアはないかを議論しながら、アップデートしましょう」

「全項目が埋まりました。一度、声に出して読んでみましょう。その後、前後関係を見ながら、矛盾点やもっと良いアイデアはないかを議論しながら、アップデートしましょう」

議論した結果を整理してA3用紙にまとめる

議論した結果を整理してA3用紙にまとめる

「これらを整理してA3用紙にまとめて、立ち返る場所に貼り出しておきましょう」

「これらを整理してA3用紙にまとめて、立ち返る場所に貼り出しておきましょう」

「夜も眠れない問題」編(30~45分)

★図版の引用問題ないでしょうか?使用許可など★
(c)Jonathan Rasmusson、出典元(Agile Samurai Japanese Edition

 最後は、プロダクトのリスクを明らかにする「夜も眠れない問題」です。

 もし起きたら怖いことを、プロジェクトの初期段階からリストアップしておきます。現場のメンバーだからこそ知っている不安や懸念点を明らかにしておくのです。

このプロジェクトのリスクを各自考える

このプロジェクトのリスクを各自考える

「各自、もし起きたら怖いことを付箋紙に書き出してみましょう。」

「各自、もし起きたら怖いことを付箋紙に書き出してみましょう」

メンバーが複数枚を書き終わったタイミングで共有する

メンバーが複数枚(1~2枚)を書き終わったタイミングで共有する

「各自順番に1枚ずつ話しながら共有してください。1枚話したら次の人の番です。」

「各自順番に1枚ずつ話しながら共有してください。1枚話したら次の人の番です」

最大のリスクや他のメンバーが経験していることで軽減できるリスクなどを議論する

最大のリスクや、他のメンバーが経験していることで軽減できるリスクなどを議論する

「全員の意見が出てきました。他のメンバーが経験していることで不安が減ることもあるでしょう。最大のリスクは何でしょうか。議論してください。」

「全員の意見が出てきました。他のメンバーが同じ経験をしていることで不安が減ることもあるでしょう。最大のリスクは何でしょうか。議論してください」

プロジェクトのリスクを整理し用紙に記載する

プロジェクトのリスクを整理し用紙に記載する

「不確実性が高く怖いリスクの順番に整理して、A3用紙に残しましょう。」

「不確実性が高く怖いリスクの順番に整理して、A3用紙に残しましょう」

次のページ
ちょっとしたテクニック

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この記事の著者

市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)

 ギルドワークス株式会社 代表取締役/株式会社エナジャイル 代表取締役/DevLOVEコミュニティ ファウンダー サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

新井 剛(アライ タケシ)

 株式会社ヴァル研究所 SoR Dept部長/株式会社エナジャイル 取締役COO/Codezine Academy Scrum Boot Camp Premiumチューター CSP(認定スクラムプロフェッショナル)/CSM(認定スクラムマスター)/CSPO(認定プロダクトオーナー) Javaコンポー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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