初心者だからこそ、初心者の目線に立って伝えられる
――湊川さんは、何をきっかけに書籍を執筆するようになったのですか?
私はもともと、ある企業のWebデザイナーとして働いていました。会社員を続ける傍ら、メディアプラットフォームのnoteに「マンガでわかるWebデザイン」という漫画を掲載していて。半年間ほど投稿を続けていたところ、出版社からお声がけを頂き『わかばちゃんと学ぶ Webサイト制作の基本』という本として出版することが決まりました。
――さまざまな表現方法があったと思いますが、漫画という形式を選ばれたのはなぜでしょうか?
読者の方々が読み飽きないコンテンツにしたいと思ったからです。一般的な技術書は文字が多くて、内容を理解するのにとてもエネルギーがいります。初学者の方々にとって、そういった本を参考に学習を進めるのは大変です。でも、漫画ならば肩の力を抜いて読み進められます。暇なときに、家にある漫画をついパラパラと読んでしまうことは多いですよね。漫画で技術を解説すれば、きっと多くの人が楽しみながら勉強できると思いました。
『わかばちゃんと学ぶ Webサイト制作の基本』を執筆している段階で、出版社の方が「1冊で終わらせるのはもったいないですから、シリーズものにしませんか?」と言ってくださいました。次に何を書こうか、とても迷ったのを覚えています。というのも、私はWebデザイナーでしたから、自分の得意領域であるWebデザインのことしかわかりません。他のテーマを取り扱うなんて無理だと思っていました。
でも、せっかく2冊目を執筆すると決まったからには、良いものにしたい。一生懸命テーマを考えた結果、自分自身が仕事で困っていることを解説すれば、同じように困っている人たちの助けになると気づきました。当時、私が苦労していたのはGitの使い方を覚えることです。GitであればWebデザイナーもエンジニアも使いますから、多くの方が読んでくださるはず。このテーマで『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』を書こうと決めました。
――自分がもともと苦手だった領域をテーマにするのは大変だったのでは?
Gitについてわからないことも多かったので、頑張って学習しながら本を執筆していきました。でも、苦に思ったことは全くありません。調査をしていくなかでGitをもっと好きになれましたし、自分自身が「こんな便利な機能があるんだ!」「こういう使い方ができたんだ!」と感動した気持ちを、そのまま漫画に盛り込めたと思います。私がGitにそれほど詳しくなかったからこそ、初心者の目線に立って本を書くことができました。
困ったらSNSで質問しよう
――アウトプットすることを、長期にわたって継続できない方もいます。そういう方は、どのようにしてモチベーションを維持するといいでしょうか?
私は制作途中のものや、他の人の意見を聞いてみたいものを、TwitterなどのSNSに積極的に投稿します。そうすると、誰かから反応が返ってくるからです。好意的な反応が返ってくれば、この方向で制作を続けていいんだと気づけます。
――もしも、内容が間違っているとか、面白くないというコメントが返ってきた場合には、どうすればいいですか?
私の場合は、コメントをくださった方に「どこを直すと良くなるでしょうか?」と質問します。その方は必ず何かの考えがあって返信していますから、丁寧に教えてくれるケースが多いです。また、修正したものを「このようなご指摘をいただいたので修正してみました」と再アップロードします。そうすれば、自分だけの学びにせず、フォロワーさんにも正しい情報が伝わります。
――SNSでのやりとりが、コンテンツ制作に生きた事例はありますか?
『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』が良い例です。この本は、DQNEOさんという方に監修をしていただきました。マンガでわかるGitを1話ずつ公開していたとき、DQNEOさんがいつもコンテンツをより良くするための意見をコメントしてくれたのがきっかけで、この方に監修に入っていただければ心強いと感じたからです。「指摘してくる=攻撃」だと怖がるのではなく、コメントしてくださる方を積極的に仲間にしていけばいいと思います。
もちろん、単なるアンチコメントであれば、相手をせずに受け流してしまえばいい。コメントの内容を読めば、良かれと思って意見を書いてくれているのか、そうでないのかは見分けがつくはずです。
――SNSに投稿する際に、多くの方に反応していただくためのコツはありますか?
コツは2つあります。まず1つ目は、「この人にFavしてほしい!」という人を、1人だけでいいので思い描いてツイート文やイラストを作ることです。自然とターゲットが明確になりますし、その人に似た属性の人が拡散してくれることもあります。
2つ目のコツは、Twitter上で議論を深めたい場合、フォロワーの方々がコメントを返しやすい形で投稿することです。単に「○○がわからない」と投稿するのではなく、「○○は□□だと理解しているけれど、合ってるのかな?」とか「○○の場合は□□になるけど、△△の場合はどうなるんだろう?」といった具合です。後者のような投稿の方が、有意義なやりとりに発展する可能性が高いと思います。
――湊川さんが、周りの方々の意見をとても大切にされていることが伝わってきます。
私はマーケター気質なところがあります。世の中の人々がどんな情報を必要としているのか、何をすれば喜んでもらえるのかを考えるのが好きです。需要があるものを書きたいという気持ちを常に持っています。例えば、最近はコンテナ技術であるDockerをインフラエンジニアだけでなくWebエンジニアが使うことも増えてきましたよね。実は私も、仕事で突然Dockerを触ることになって慌てた経験があったのです。そういったIT現場の動向が、『マンガでわかるDocker』を執筆するきっかけになっています。