曖昧な表現を深堀りする
1. 定義する
曖昧な表現の解像度を上げるために、まずはその表現について、チーム全員が共通したイメージを持つための指標を作ることが必要になります。定義が定まっていない言葉や概念は、チームで話しあって独自の定義を作ってもよいでしょう。すでにある文献から自分たちのイメージに近い定義を選択してもよいかと思います。
2. 評価指標を作る
定義が定まったら、測定するための指標を考えます。チームでオリジナルの指標を作ることがベストですが、世の中に存在するフレームワークを参考にカスタマイズするのもよいでしょう。
たとえば「UX」では、その良し悪しを測定するための数多くの方法が存在します。
- SUS (System Usability Scale)
- NPS (ネットプロモータースコア)
- Product Reaction Card
下記の表は、「UX」の概念を示すものとして用いられる「UXハニカム構造」です。ユーザーが感じる価値を中心に、「UX」を構成する6つの要素が配置されています。
このようにゼロから指標を作るのではなく、先人たちの知見をもとにカスタマイズしていくとよいのではないでしょうか。
フィードバックをプロダクトに反映する
デザインを正しくフィードバックする方法として「デザイン批評」というルールが注目されています。
批評を分析・定義し、批評を与える側/受ける側それぞれの観点から見た評価方法を整理したもので、批評をデザインプロセスの一部に組み込む方法を提案しています。書籍『みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド』によると、批評までの枠組みは大きく4つで構成されています。
この4つのステップに具体例を当てはめてみると下記のようになります。
批評とは目的に照らして何かを分析することです。つまりデザインに置き換えれば、その良し悪しを判定するのではなく、さらに良くするためにデザインを分析すること、と言えるでしょう。
目的を互いに理解し合うことは、批評のみならずプロダクトやチームの成功にとって非常に重要です。そうした分析やレビュー会にはチームメンバー全員で参加することをオススメします。その際には、他者からのフィードバックに耳を傾け、それをデザインしているプロダクトの目的に関連づけながら分析することが大切です。
これらをふまえて今後のデザイナーに必要なことを考えてみると、「曖昧な表現に向き合い、プロダクトをよりよい方向へ磨き込む実行力」なのではないかと思います。
第1回でもお伝えしたように、アフターコロナの環境化によってリモートワークが当たり前になった状況であっても、充実しているコミュニケーションツールを上手く活用すれば、リモートによるコミュニケーションの弊害を取り除くことができます。また、第2回で紹介したプロトタイピングによって非言語のコミュニケーションをサポートすることもできるでしょう。複数人でデザインをする際、目的達成への共通の認識をもち、プロダクトを改善するための批評を整備することも重要です。
専門性の高いメンバーによる共創を可能にするため、これまでの当たり前の概念を整理し、正しく議論できるようにすること。これこそが、今後さらに重要になっていくのではないでしょうか。
参考書籍
- 『UX言論 ユーザビリティからUXへ』(著:黒須正明、近代科学社、2020年)
- 『みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド』(著:アーロン・イリザリー、アダム・コナー、翻訳:安藤貴子、ビー・エヌ・エヌ新社、2016年)