デザインシステムを“みんな”で作り続けていくために
ここまで、デザインシステムのコンテンツを作る前に「ユーザー」と「目的」から始めること、「対象にとって良いデザイン」を伝えるためのデザイン原則について紹介しました。
これらを考えることは、関係者で多くの対話や認識合わせを必要とする、労力のかかる取り組みだと思います。まずはUIコンポーネントのガイドラインから作りたくなることもあるでしょう。
しかし、デザインシステムの「誰のために作るか」と「何のために作るか」をチームで共有することは、デザイナーだけが更新する状態や更新が放置される状態を回避し、デザインシステムをチームで作り続けるために必要なステップだと考えています。
また、お客さまに業務アプリを提供しているかぎり、私たちはプロダクトを作り続ける必要があります。デザインシステムは、チームでプロダクトを作り続けていくための仕組みのひとつであり、ひいてはエンドユーザーのプロダクト体験を整えるための土台として機能し続けるものだと捉えています。
SmartHR Design Systemを公開して
プロダクトに関するコンテンツをSmartHR Design Systemに公開した時点(2020年11月)では、「デザイン原則」、「デザインシステム自体の運用ガイドライン」、「ボタンコンポーネントのガイドライン」程度の最小規模のコンテンツから始め、現在も立ち上げ中です。
「小さくルールを作り、当てはまらない場合があればより妥当なルールに見直す」という常にWIPの考えかたで、プロダクト開発のかたわら、業務で必要になったルールやパターンを都度デザインシステムに追加していく方法で更新を続けています。
公開から3ヵ月経ち、規模やシーンは限定的ですが、以下のような効果が開発チームに見えてきました。
- デザインを決めていく過程で、デザイン原則が振り返る観点になった。
- アウトプット先が明確になったことで、ある機能開発内に閉じたデザインの決定ではなく、プロダクト全体でどうあるべきかの議論がしやすくなった。
- 「ボタンのラベルの書きかた」など、プロダクト開発で頻繁に発生する「どうすればよいか」のコミュニケーションが効率化され、デザイナーが都度判断しなくても開発が進んだ。
一方で、まだまだ課題はあります。
- デザイン原則があることは知っていても、まだ活かせていない。
- 「UIコンポーネントの使いかたが一元化されたリファレンス」としては十分なコンテンツがない。
- UIコンポーネントライブラリとデザインシステムの場所が分かれており、参照しづらい。
- 利用している作成ツールの制約で、エンジニアがコミットしづらい。
引き続きコンテンツは増やしながら、さらにエンジニアリングとつなげるように、私たちの作りかたに合った更新しやすい仕組みを準備しはじめています。この記事が公開される頃にはすでに変わってるかもしれません。
最後に、SmartHRプロダクトのデザイン原則のひとつをご紹介します。SmartHRでは、このデザイン原則のとおり、みんなでデザインするためのコミュニケーションツールとして、デザインシステムを少しずつ育ていきます。
次回のSmartHRプロダクトデザイングループ連載もお楽しみに。