クラウドサインが作ったのは「仕組み」 根底にある挑戦し続ける姿勢
――電子契約サービス「クラウドサイン」にはどういった特徴があるのでしょうか。
弁護士ドットコムが運営しているため、弁護士が監修しているという安心感に加え、さまざまなアプリケーションと連携している点が大きな特徴です。
またこれは機能面ではないのですが、前例のないことに挑戦し続けるという意識がある点も、クラウドサイン事業本部の特徴だと思います。
2015年にクラウドサインがサービスを開始した当時、そのときの電子署名法に準拠した形だと、電子署名を利用したい企業は認証局から電子証明書を発行しなければならないなど、時間も費用も必要でした。2020年7月に法律の解釈が変わり、事業者署名型のクラウドサインをはじめとする電子契約も法律に準拠したものになりましたが、サービス提供当時のクラウドサインは法に準拠しない形で、利用者が使いやすい事業者署名型の電子契約を普及させていきました。
法律に準拠していないと思われる可能性もありましたが、民法には契約自由の原則がありますし、約20年前につくられた電子署名法もまた、現在の技術に反映したものとはいえません。クラウドサインの仕組みを用いれば、効率良く、かつ電子契約がもっと使いやすくなるという判断のもと新しいサービスを生み出しました。それがのちのちスタンダードになると信じて挑戦し続ける姿勢は、クラウドサインらしさだと感じています。
――弁護士ドットコムの体制や笛田さんの仕事の進めかたについて教えてください。
弁護士ドットコム全体は、いま300人ほどの組織です。弁護士ドットコムや税理士ドットコムなどを運営する専門家プラットフォーム事業本部、クラウドサイン事業本部にそれぞれデザイナーが所属している形です。
マーケティングや営業など、クラウドサイン内のさまざまなチームからSlackの専用チャンネルに依頼がくるので、チームで要件の確認や相談をしながら進めています。クラウドサイン事業本部が拡大し依頼も増え続けている状態なので、ルールや動きやすい環境も設計しなければいけないと感じています。
――BtoBのサービスに携わるからこそ、意識していることはありますか?
最近ではとくに大手企業さまの導入も増えてきたことから、遊びすぎないようなデザインは意識するようにしています。
それを考えるようになったのは、2019年に行ったロゴの変更です。それまでクラウドサインは中小企業のお客さまが多かったのですが、少しずつ大きな企業さまにも使ってもらえるようになり、いままでのカジュアルな印象よりも誠実さや安心感を訴求していかなければいけないと感じました。そのためにはクラウドサイン自体の振る舞いかたを変える必要性があり、ロゴの変更に踏み切りました。
デザイナーとしてはロゴデザインにかなり手を加えた感覚がありますが、ユーザーさまの印象は大きく変わらないように気をつけました。サイトなど含めフルリニューアルをすることもできましたが、すでにクラウドサインに慣れ親しんで下さっている方々が「昨日までとは別物のようだ」とはならないように、そのバランスはとても慎重に扱う必要があると考えていたためです。
現在はより安心感や誠実さなどが伝わるようなデザインを作ろうと思っていますが、とはいえ電子契約を身近に感じてほしいですし、そのためにフレンドリーな部分も入れていきたい。その点はいつもせめぎ合いですね(笑)。