Transformの課題は尽きない
変革の求心力
変革を進めるにあたっては、大企業、伝統的な組織ほど「求心力」が求められていきます。ハコだけ用意して中身は変わっていない、というハリボテを作り上げるのではなく、中身から真に変革する。そのためには迷わず活動するための目印、「求心力」が必要となります。
しかし、この求心力とはいったい何なのでしょうか。カリスマがいればいいのか、文化が紡ぎ出すものなのか、ルールによって規定されるものなのか。
そのヒントは、すでに「DX」である組織に隠されています。
DXを必要としない組織は既にDXである
「DX」という言葉を聞いたときにイメージする概念は、人によって異なります。それこそDigital Transformationという言葉の中でも、何を指すのかは文脈によって異なってくるでしょう。そして、実はDXという略語があてられている言葉には「Developer eXperience」も存在しています。おそらくエンジニアの方には、こちらの言葉のほうが馴染み深いのではないでしょうか。私はそうでした。この「もうひとつのDX」に軸足を置いている組織、中心プロダクトとチームがある組織は、DigitalのDXについては完了していたり、組織が誕生した時点でDigitalが前提となっていたりします。そういう組織を真似ていく、というのが、ひとつの有効な手段になりえます。
たとえば、DBSというシンガポールの銀行。2009年からDXを推し進めてきたこの銀行では、以下の3つの標語を掲げ、変革へと漕ぎ出して行きました。
- Become digital to the core.(会社の芯までデジタルに)
- Embed ourselves in the customer journey.(自らをカスタマージャーニーへ組み入れる)
- Create a 22,000 start-up.(従業員2.2万人をスタートアップに変革する)
このように、スタートアップの動き方を参考にDXを進める、という動きはすでに先行事例があり、また一定の成功をおさめています。
また、印象的なのは「自らをカスタマージャーニーへ組み入れる」という点です。顧客体験を変えるためのプロダクトづくりだけではなく、そもそも自分たち自身を変えていくために、プロダクトファーストで組織変革を牽引していくという力強いステートメントとなっています。
「プロダクトを作り、中心に据えよ」
「プロダクトを作り、中心に据えよ。これって、我々がこれまでも追い求めたことですよね。それこそ、デブサミでもずっと言ってきたことです」そう市谷さんは熱く語ります。
プロダクトを作り、世に問う。コードを書き、仮説検証し、手を動かす。それが「組織」を変える術となる。これは、手を動かし続けてきたデブサミに参加しているような人たち、市谷さんの言葉を借りるなら「同胞たち」にとっては希望のある話です。
「伺うのは偉い人の顔色ではなく、プロダクトを使う相手。『未来』を変える可能性はその指先にかかっている。活動の中心にはソフトウェアがあって、プロダクトがある。力を結集させよう」
市谷さんの力強く、また胸を熱くさせるメッセージで、本セッションは幕を閉じました。
Ask the Speaker
――登壇していかがでしたか?
「つかれた!」
――最初のトラストを電撃的(ブリッツ)につくる、とても共感しました。一方でブリッツ作戦はもろもろ目をつぶることになるので、進める人たちの納得感醸成が難しいと感じています。ここはどのようにやりきるのがよいでしょうか。
「最初に入っていく状況にあわせながら結果を出すという、難しい話になる。基本的には今までのやり方でやっている中で、違うやり方で大きな成果をあげる。大変だけど、でもこれはやるしかない」
――参加者に一番伝えたいことは?
「プロダクトをつくるということはデブサミに参加する人にとっては当たり前のことで、それでいてもっとうまくやりたいと思っていること。プロダクトづくりに大いに悩みながら真摯に取り組んでいること自体がよいこと。安心してプロダクトづくりに臨みましょう」
――セッションで工夫したことは?
「実例を入れたこと。言ってるだけちゃうか、と思われないように(笑)」
――最後に一言メッセージをお願いします。
「顎を痛めるほど悩みぬいたセッション。みなさん健康には気を付けて。またどこかでお会いしましょう!」