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【デブサミ2021】セッションレポート

組織の二項対立から脱却しDXを推進する「アジャイル・ブリゲード」とは――レッドジャーニー市谷氏が解説【デブサミ2021】

【19-E-9】プロダクトマネジメントを組織に宿す取り組み「アジャイル・ブリゲード」の実践

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組織を二項動態へ促す「アジャイル・ブリゲード」とは

 そして、DXを推進する組織でアジャイルに運営していくための、二項対立から二項動態へと促す組織の遊撃手が「アジャイル・ブリゲード」になります。全体と詳細を段階と断面で同期。経営と現場をメタスクラムで接続。既存事業と新規事業を越境で橋渡し。

 そしてこのアジャイル・ブリゲードは、事務局ではなく第二の当事者として関わることが求められます。忙しい中で、「当事者」ではない人間の意見は聞いてもらえない。「ともに越える」姿勢が求められます。もっとも不確実性の高い場所に存在することになるため、あいまいさ耐性が求められます。

アジャイル・ブリゲードの構成

 アジャイル・ブリゲードは、以下に示すように、内部と外部の専門人材が入り混じった形で構成されます。

  • 内部と外部の専門人材で混成チームを立ち上げる
  • 必要だが不足している専門性は外部から取り込む
  • 実際の舵取りは内部人材がコミット

 このチームは専門性をもっているからこそさまざまな現場から必要とされることになります。さまざまな現場で情報を入手し意思や意図を知ることができる。そしてそれを伝播させることが、組織が分断を乗り越える原動力となります。

「集結」と「分散」を同時に実現する

 一方で、専門性を有効活用するにあたっては大きな課題があります。それは、「専門性は希少性が高い」ということです。現場それぞれに専門性を持ったメンバーを配置できるほど戦力が十分にある、ということはそれほど多くありません。

 だからこそ「ブリゲード(旅団)」のような形で集結させ、機動力をもって今一番必要とされている現場から現場へと渡り歩き、機動性をもって全体最適化していくという戦略が有効なのだ、という点はとても腹落ちしました。

どのようにしてブリゲードを形成するか

 手持ちの手段から何ができるか考え、できる限りの成果をデザインしてゆく「エフェクチュエーション」という概念があります。組織を変革するには、いまそこにいる人間が動いていくしかないわけですから、エフェクチュアルに作っていくアプローチが有効となります。

 自分が置かれている状況・環境において、コミットする意志を持つ関係者とパートナーシップを形成すること。誰が味方で誰が敵かではなく、所与の関係をより上手に発展的に活用する、アライアンスの考え方を持つことが重要です。

そんな脆弱な体制で組織への働きかけはできるのか

 「できることからやっていく」、そのようなやり方で、果たして組織への働きかけはできるのでしょうか。変革を進めるにあたって重要なのは、信頼関係の構築。市谷さんは、この信頼関係、トラストを電撃的に構築する「ブリッツ・トラスト」こそが重要であると強調します。

 変革が求められているのは遠い未来でなく、「いまここ」の話です。そうなると、信頼を5年かけてつくる、といった余裕はありません。なので、電撃的に信頼を作る。そして、そのためには結果を出すこと、成果を出すことにこだわり抜く、全集中することが何よりも大切です。

 「いったんブレーキを壊す」と市谷さんが表現するように、まさに電撃的と呼べるような素早い行動、そして成果が求められます。その信頼の先に、越境はあります。組織を越えること、これまでに囚われないこと。ともに取り組むことで新たな「WHY」「HOW」が伝播していきます。

DX2周目の実例

 ここからは、市谷さんが実際に伴走している「DX2周目」の実例が紹介されました。各社が手探りでDXを進めている中、こういった実例はとても貴重な情報です。

野村ホールディングス「未来共創カンパニー」の取り組み

 まさに出島である「未来共創カンパニー」。未来共創カンパニーでは、新しい顧客体験を創出するべく急ピッチで探索活動を進めています。OneStockやFINTOS!といった新たなプロダクト作りに力点が置かれており、実践フェーズです。未来共創カンパニー、既存事業部、そしてパートナー企業が越境し、組織横断的な仮説検証とアジャイル開発の展開を行っています。

CO-OPの取り組み

 CO-OPでは「DX-CO・OPプロジェクト」が立ち上がっています。このプロジェクトでは、探索ケイパビリティの獲得と醸成だけではなく、ネットワーク組織の協働化を進めていくことがもめられています。そこには日本生協と地域生協の協働が基本というユニークさがあり、単に方針とプロダクトを打ち出せばよいわけではありません。

 異なるテーマを横断的にマネジメントするということは難しく、ちょっとしたことで事態は混沌へと向かいます。そうならないためにも全体と詳細の同期が必要とされ、まさに断面のマネジメントが必要なわけです。

これからが勝負のトラック

 いずれの事例においても、これまでにないスピードでの変革が求められています。大企業、地域企業、国におけるDX2週目はショートトラックであるといえるでしょう。

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Transformの課題は尽きない

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この記事の著者

小田中 育生(オダナカ イクオ)

 開発(Develop)を愛する人たちの集まり、DevLOVEによく出没する人。 所属する企業においては、研究開発のディレクションとエンジニアがいきいきと働けるDX(Developer eXperience)を重視した風土づくりという両輪を回し続けている。 近年はアジャイル開発に助けられているが、一番助けてくれているのはいつも一緒にいるチームメンバーたちだったりする。 Twitter:@dora_e_m note:https://note.com/dora_e_m 著書『いちばんやさしいアジャイル開発の教本』(インプレス)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/14355 2021/07/28 11:00

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