EC業界のスペシャリストが創業したコマースメディア
ANA公式ギフトショップやブラックサンダーのバレンタイン特設サイト、ゴーゴーカレー公式通販など、さまざまなECサイトの構築・運営のサポートを手がけるコマースメディア株式会社。ECプラットフォームであるShopifyや、楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングといったモールなど多様なECサイト構築の実績を持ち、自社でもEC事業を展開している。ここ数年は新型コロナウイルス感染症の影響で多くの企業や消費者がオンラインに時間を費やすようになったこともあり、急成長している企業だ。
代表取締役の井澤孝宏氏は、中学生の頃EC購買体験に感動し、最初の就職先として選んだのは楽天だった。そこでECのコンサルタントとして日本全国の事業者のEC構築をサポートしていった。その後スタートアップ企業へEC事業立ち上げのために参画し、事業の成長を見届け、2016年にコマースメディアを創業する。
「独立したときにはECコンサルティング業務だけを行っていましたが、お客様の悩みを聞いていると、結局は手を動かせないということがわかり、サイト構築や運営を行いました。売上があがってくると、カスタマーサポートもお手伝いするようになりました。現在は、ECの全ての業務を支援しています」(井澤氏)。
井澤氏は最近、ECのみならず、実店舗なども含めた経営戦略の相談を受けることが多くなっているという。これまで同社のエンジニアは、フロントエンドの担当者がメインだったが、顧客の要望が高度化するに従って、バックエンドの開発要件も増えている。そこで2022年1月にジョインしたのが、サーバーサイドやバックエンド開発を担当する関登志夫氏だ。関氏は、井澤氏がスタートアップ企業でEC事業を立ち上げたときに一緒に仕事をしていたメンバーである。
「ゲームが好きで中学生のころからプログラムの開発をやりたいと思っていました。そのままエンジニアになり、前職では主にSESとして、お客様先に常駐して業務を行っていました。ゲームや出版、旅行、エンタメ業界などで、主にデータベースを用いたバックエンドのプログラム開発を行ってきました。井澤とは、ECサイトでのLINE Pay導入のための実装などで一緒に仕事しました」(関氏)。
コマースメディア初のバックエンドエンジニアとして入社した関氏のもとには、日々社内のメンバーから、顧客から受けた相談や調査の依頼が届き、実現可能であればシステムの設計をしている。関氏自身は井澤氏のようにEC業界に特化したキャリアを歩んできたわけではない。仕入れ、決済、物流、在庫管理、広告宣伝、アクセス解析など、ECで使われるシステムは多岐に亘り、さまざまな知識を吸収しなければならない状況ではあるが、バックエンドのエンジニアとしての経験を活用している。関氏は「ECの開発は、一般的なシステム開発と大きな違いはありません。ECの経験がないエンジニアの方も活躍できる領域です」と述べた。
エンジニアにとってエキサイティングなEC業界
インターネットの発展とともに成長してきたEC業界。エンジニアにとってどのようなチャレンジがあるだろうか。コマースメディアでは、Shopifyや各種モールでのECサイト制作支援、コンサルティング、運営支援に加え、自社のECサイト運営もしている。収益源のひとつに顧客のECサイトの売上をシェアするものもあるため、サイトやシステムを作って納品して終わりではなく、物流や広告・マーケティングも含め、ECビジネスの成功を体験できる醍醐味がある職場だ。
日本のEC業界は、1997年の楽天の登場以降に本格化したため20数年の歴史がある。その間、楽天などのモール以外でサイトを作る場合、オープンソースのECサイト管理システム「EC-CUBE」で構築されることが多かった。EC-CUBEの開発言語はPHPのため、PHP以外の言語を使いたい開発者にとっては、選択肢として挙がりにくい業界だった。この流れを変えたのがShopifyの登場で、その柔軟性や拡張性によって、よりモダンなシステム構築が可能となっている。
関氏も入社早々に社内向けのShopifyアプリを開発した。こうしたEC業界のエンジニアリングの楽しさについて関氏は「決済、在庫、物流は自社サイトのシステムでは完結できませんので、外部システムとの連携は必須です。連携には主にAPIを使うのですが、その仕様書の質が提供者によって異なりますので、工夫が必要です。自分なりに調べたり、問い合わせしたりして、うまく連携できたときは嬉しいですね。ほかにも、サーバーが落ちないようにする負荷分散やデータベース設計などのスキルも身につけられると思います」と語った。
エンジニアが抱く悩みのひとつに、自身の作ったシステムがビジネスにどのような影響を与えているかわかりにくいというものがある。しかし、ECは売買によって収益をあげるビジネスであるため、システムがどのように事業に貢献しているかわかりやすい。エンジニアにとっては技術的なスキルに加えて、ビジネスの感覚も養える分野だと言える。
「結果がしっかりと分かるのがECの醍醐味です。我々は一気通貫型でお客様をサポートしていますので、二人三脚で成長していく時間を持つことができます。物を仕入れて売るという基本的なビジネスをしているので、EC業界がなくなることはないでしょう。自分がやってきた経験が生き続けるのも一番の魅力です」(井澤氏)