学びのための最強ツールは「本」、スキルを獲得するために必要なこと
知識や知見を独学する方法について北野氏は「独学は自分の中に木を作っていくイメージです。一般常識を木の芯として最初に身に付け、それから最新情報を枝葉のように広げていきます」と語った。ここでの一般常識とは、学ぶ対象領域の知識を指す。
そして学びのための最強ツールは「本」だと北野氏は言う。本は、著者が数年かけて会得した知見や情報を、章立てして読者にわかりやすくまとめられている。読者は1冊あたり1、2か月で、その知見や情報を、数千円で得られる。北野氏は、「コスパ重視の最強ツールで、常に本を活用しています」と絶賛した。
本選びについて北野氏は、その目的を明確にすることが大切だとし、北野氏は「ある領域を深く知るには複数冊読むことは非常に有効です」とアドバイスした。1冊では分からなかったことも、他の本でわかることがあるからだ。
1冊の本を3回は繰り返し読む。1回目は、全体像を把握するため目次と各章の初めとまとめを読む。これがだいたい2、3時間。2回目は各章の中身に入っていく。コードが記載されていれば、実際に書いてみて動くかどうか検証する。3回目は再度頭から、2回目で戸惑った点、よく分からなかった点を補うように読む。
続いて北野氏は必要な本の選択法を紹介した。ここでは名著の誉も高く、企業によっては課題図書でもある『達人プログラマー』(アンドリュー・ハント/デビッド・トーマス共著、村上雅章翻訳)を北野氏が選んだ背景を紹介した。まず本屋で選ぶ場合は、著者を確認、目次を確認、そして執筆に利用した参考文献を確認の3つがポイントになる。
通常、書籍は頭か最後に著者紹介があるので、そこを見れば著者の情報がわかる。著者アンドリュー・ハント氏を見てみると、他にも開発向けの書籍を執筆しており開発本の著者としては認められていることがわかる。ハント氏の履歴を見ると大学で教鞭をとっていることがわかった。ここから本の内容がわかりやすいのではという予測が立つ。
目次を見ると、達人の哲学、達人の考え方、プログラマーの考え方という小項目があり、ここを読めば開発の心構えを学べそうと想定でき読む価値ありと判断ができる。最後に参考文献を確認すると、アルゴリズムのバイブルとも言われる『The Art of Computer Programming』(ドナルド・クヌース著、有澤誠、和田英一等監修)などプログラミングの名著を参考にしていることがわかった。北野氏は、ここまで条件がそろえば「この本は買いだと判断できると思います」と述べた。
パーソナルスキルについて北野氏はビジネス書の古典からそのフレームワークを学び、日常生活で活かすことで習得した。ドメイン知識は業界に関する入門書に加え、政府の発表や報告書、新聞の政治・経済面、ニュースサイトから最新動向を得ている。