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Developers Summit 2023 セッションレポート(AD)

DX時代に求められるエンジニアとしてのスキルと、Google Cloud資格取得のコツとは?

【10-A-7】DX時代の企業に求められるITエンジニアの技能

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 政府はデジタル人材不足の解消を目指し、5年間で230万人の人材を育成しようとしている。また企業では顧客の要望に素早く対応するため、システム開発の内製化を進めている。社外からのIT人材確保だけでなく、社内人材の育成を促進しているのだ。Google Cloud専門のSIerであるクラウドエース株式会社では、システム開発以外に、顧客企業の内製化支援やGoogle Cloudトレーニング事業を展開している。同社の技術開発部 SREである北野 敦資氏は、未経験エンジニアが技能習得するために取り組むべきことや、Google Cloud資格取得のためのノウハウを共有した。

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DX時代のエンジニアに求められる3つの能力とは

 北野氏は、学生時代は物理系の研究者だったが、卒業後はNECに入社し、インフラ自動化の研究を経て社内プライベートクラウドの開発に携わった。そして2019年にクラウドエースに入社し、Google Cloudを活用した設計、構築、運用業務を担当している。IT未経験から独学で試行錯誤しながらインフラエンジニアの知見を得てきた。

 北野氏は、ITエンジニアの業務は「顧客(ユーザー)の業務上の課題をIT技術の活用で解決すること」と定義し、そのために必要な能力3つを挙げた。

  • 課題を発見する能力
  • 課題を解決する方法を導き出す能力
  • 導き出した方法を実現する能力

 顧客の要望は「なんだか、うまくいかない」と、課題が明確化されていないことも多い。その本質を見極め、ITで解決する方法を探り、提案する。提案は顧客が費用面も含め納得できる方法でなければならない。方法が決定すれば達成を目指し、想定外の苦難を乗り越える必要もある。

 北野氏は、この3つの能力を獲得するには、「パーソナルスキル」「ドメイン知識」「IT技術の知見」が必要だとし、それぞれ説明した。

パーソナルスキル

 2022年に経済産業省がDX人材に必要なスキルをまとめた「DX推進スキル標準」にも含まれているスキル。具体的には、リーダーシップが取れる、心理的安全性を意識できるといった「ヒューマンスキル」と、水平思考や論理的思考ができる「コンセプチュアルスキル」の2つ。水平・論理的思考は、一般にクリティカルシンキング・ロジカルシンキングとも呼ばれる。

ITエンジニアに求められるプロジェクト推進力と問題解決力
ITエンジニアに求められるプロジェクト推進力と問題解決力

ドメイン知識

 顧客企業そのものの知識と、顧客が在籍する業界全般の知識を指す。顧客業務の改善を目指しているため、業務フローや年間スケジュール、業界特有の商習慣などの知識は重要。

IT技術の知見

 ITや開発で利用する基礎的なツールの知見。データベースやネットワークといった特定のツールに閉じないIT技術に関する知見と、実際にシステムを構築するためのクラウドの知識や実装に利用するプログラミング言語や、ツールなどの知見だ。

学びのための最強ツールは「本」、スキルを獲得するために必要なこと

 知識や知見を独学する方法について北野氏は「独学は自分の中に木を作っていくイメージです。一般常識を木の芯として最初に身に付け、それから最新情報を枝葉のように広げていきます」と語った。ここでの一般常識とは、学ぶ対象領域の知識を指す。

 そして学びのための最強ツールは「本」だと北野氏は言う。本は、著者が数年かけて会得した知見や情報を、章立てして読者にわかりやすくまとめられている。読者は1冊あたり1、2か月で、その知見や情報を、数千円で得られる。北野氏は、「コスパ重視の最強ツールで、常に本を活用しています」と絶賛した。

 本選びについて北野氏は、その目的を明確にすることが大切だとし、北野氏は「ある領域を深く知るには複数冊読むことは非常に有効です」とアドバイスした。1冊では分からなかったことも、他の本でわかることがあるからだ。

 1冊の本を3回は繰り返し読む。1回目は、全体像を把握するため目次と各章の初めとまとめを読む。これがだいたい2、3時間。2回目は各章の中身に入っていく。コードが記載されていれば、実際に書いてみて動くかどうか検証する。3回目は再度頭から、2回目で戸惑った点、よく分からなかった点を補うように読む。

 続いて北野氏は必要な本の選択法を紹介した。ここでは名著の誉も高く、企業によっては課題図書でもある『達人プログラマー』(アンドリュー・ハント/デビッド・トーマス共著、村上雅章翻訳)を北野氏が選んだ背景を紹介した。まず本屋で選ぶ場合は、著者を確認、目次を確認、そして執筆に利用した参考文献を確認の3つがポイントになる。

 通常、書籍は頭か最後に著者紹介があるので、そこを見れば著者の情報がわかる。著者アンドリュー・ハント氏を見てみると、他にも開発向けの書籍を執筆しており開発本の著者としては認められていることがわかる。ハント氏の履歴を見ると大学で教鞭をとっていることがわかった。ここから本の内容がわかりやすいのではという予測が立つ。

 目次を見ると、達人の哲学、達人の考え方、プログラマーの考え方という小項目があり、ここを読めば開発の心構えを学べそうと想定でき読む価値ありと判断ができる。最後に参考文献を確認すると、アルゴリズムのバイブルとも言われる『The Art of Computer Programming』(ドナルド・クヌース著、有澤誠、和田英一等監修)などプログラミングの名著を参考にしていることがわかった。北野氏は、ここまで条件がそろえば「この本は買いだと判断できると思います」と述べた。

より良い本を探すためのコツとノウハウはある、ぜひ会得したい
より良い本を探すためのコツとノウハウはある、ぜひ会得したい

 パーソナルスキルについて北野氏はビジネス書の古典からそのフレームワークを学び、日常生活で活かすことで習得した。ドメイン知識は業界に関する入門書に加え、政府の発表や報告書、新聞の政治・経済面、ニュースサイトから最新動向を得ている。

学んだ事を実践する、Google Cloud資格取得するには?

 北野氏は、Google Cloudの学び方について次の3つがポイントであると述べた。

  • Google Cloud以外のITに関して学ぶ
  • Google Cloudをハンズオンで実際に作って動かしてみて学ぶ
  • 関連資格を取得し、それまでに得た知識を確認して、Google Cloudの学びに落とし込む

 Google Cloud以外のITという点について北野氏は、Google CloudもAWSもパブリッククラウドはITリソースを使いやすくパッケージ化したプロダクトであり、そのためにITの基本を知っておくべきだと述べた。知らないままだと、リリースされたプロダクトをどう使うかの判断がつかず、自分勝手な設計になるおそれがあるからだ。

 おすすめはIT業界の資格であるIPAの基本情報技術者試験や応用技術者試験だ。IPAの資格試験は、ITの全体像を知るにあたって非常に優れた教材である。LinuxならばLPIC(Linux Professional Institute Center)も非常に良い資格だとした。IT雑誌の4月号は新入社員が知っておくべき知識が特集されることもあり、これを読むと業務に必要な知識の多くを得ることができる。

 IT知識を身につけたあとは、Google Cloudの学びに向かう。Google CloudアーキテクチャーセンターというWebページで気になるプロダクトを動かしてみて、それらの原理を理解していく。システムのアーキテクチャー図があればそれを参考に構築してみる。プロダクトの各種パラメータは、エクセルシートなどにまとめれば詳細設計に使える。設計が終われば、実際にコンソールからシステムを構築してみる。構築したら、ページに記載されていた機能が、その通り動作するかなどを確認する。

 北野氏は、大切なことは、本や公式ドキュメントを読むだけではなく「実際に手を動かして、どう動くのか原理はどうなのかを理解する」ことであると加えた。

Google Cloudアーキテクチャーセンターでの学び
Google Cloudアーキテクチャーセンターでの学び

 北野氏の場合は、ここから同様のプロダクトをTerraformで構築、別の案件でも使えるようにモジュール化し、あわせて検証した内容を文章にまとめている。

 Google Cloudの資格勉強も体系的にスキルを身につけるには良い。資格は3種類、計11個ある。実験・検証で身につけた技能の領域から学習を進めていくといい。過去問を意識した模擬問題集がインターネットで購入可能なので、それを購入して試験に臨むこともできる。模擬問題集は、国内ではUdemyなどが著名だが、北野氏は海外の教材を推薦し、英語が苦手でも購入する価値があるとした。

 もし一人での学びに不安があれば、クラウドエースではトレーニングを用意している。Google Cloud認定トレーナーによるオンライン授業に加え、ハンズオンやサンドボックス的な環境で手を動かして試せる。

 北野氏もこうした学びを経て、現在のポジションに至った。最後に一番伝えたいこととして、「ITスキルよりも、人間力、パーソナルスキルといったスキルや、事業のドメイン知識をしっかり学んでいただきたい」と重ねてコメントした。業務を行う際に、要件定義や上流工程といった部分で誤った設計がなされると、後々苦労する。だからITスキル以上に業務の基本を抑える必要があるのだ。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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