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FileMaker Pro 実践チュートリアル

FileMaker Pro という選択

第1回 FileMakerの概要


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大規模なシステム開発にも耐えうるスペック

 この先、FileMakerの話を続ける前に、最新のFileMaker Pro 9のスペックを簡単に紹介をしておきましょう。

FileMaker Pro 9のスペック
項目 性能
1ファイルに作成可能なテーブル数 100万テーブル
1テーブルに定義可能なフィールド数 2億6500万フィールド
1テーブルに作成可能なレコード数 6京4000兆レコード
公開可能なファイル数 125ファイル
(FileMaker Pro/FileMaker Serverともに)
共有ファイルにアクセス可能なクライアント数 9クライアント(FileMaker Proで公開)
250クライアント(FileMaker Serverで公開)
1ファイル当たりの最大データベースサイズ 8テラバイト

 過去のバージョンでは、コンピュータシステム自体の制限などもあり、FileMakerは大規模なシステム開発には向いていませんでしたが、ネットワーク関連技術やOSが提供するファイルシステムの性能向上、それからFileMaker社の努力もあったのでしょう。現在では、このように大規模システムの開発にも耐えうるスペックになっています。

標準実装されているデータベースの共有機能

 FileMakerには、データベースを複数のクライアントで共有して使用する、以下の方法が用意されています。

FileMakerどうしでのデータベース共有

 これは一般的な方法で、FileMaker(ホスト)が公開しているデータベースに対し、他のFileMaker(クライアント)からネットワーク経由でアクセスする方法です。この方法でデータベースを共有した場合、クライアントで更新したデータは、リアルタイムでホストコンピュータのデータベースファイルに保存され、即座に他のクライアントからもそのデータにアクセスできるようになります。

 なお、先述の表にあるように、FileMaker Pro 9でデータベースを共有した場合は、最大9クライアントまで同時にデータベースを共有できます。10クライアント以上でデータベースを共有したい場合には、FileMaker Serverを導入してFileMaker Serverでデータベースを共有することにより、同時利用クライアント数を250クライアントまで広げることが可能です。

FileMakerデータベースをWebブラウザで使用

 Webブラウザを使用して、FileMakerのデータベースを利用することも可能です。FileMakerには、データベースをWebブラウザで使用するための機能として、「インスタントWeb公開」と「カスタムWeb公開」という方法があります。

 インスタントWeb公開では、FileMaker Proで定義したレイアウト(画面)を、ほぼそのままの状態でWebブラウザ上で表現することが可能です。「インスタントWeb」という名称が示すとおり、FileMaker Proの設定をいくつかクリックするだけで、簡単にデータベースをWebに公開することが可能です。このインスタントWeb公開もFileMaker Proを使用した場合は、同時アクセスできるのが5クライアント(5セッション)までです。それ以上の規模を求める場合には、FileMaker Server Advancedというソフトウェアが別途必要になりますが、それを導入するにしても、FileMaker Proのデータベースを簡単にWebブラウザからコントロールできるようにするメリットは大きいでしょう。

FileMaker Proのブラウズモードの画面
FileMaker Proのブラウズモードの画面
インスタントWebの画面
インスタントWebの画面

 一方、カスタムWeb公開では、開発者が独自に作成したWebページ経由でFileMakerデータベースをコントロールすることが可能です。最新バージョンの9.0では、 PHPやXSLT経由でFileMaker Proデータベースをコントロールできたり、Java ServletからJDBCを使用してFileMakerをSQLでコントロールするようなことも可能です。

 なお、FileMakerデータベースをPHPでコントロールする場合、FileMaker Serverに付属のPHP Site Assistantを使用することで、データベースにアクセスするために必要なPHPファイルの雛形を作成できるので、開発者はPHP Site Assistantで作成した雛形をカスタマイズすることで、開発の効率を上げることができます。

 XSLTに関しても同様のツールが用意されているので、適宜必要なアシスタントを使い分けてください。

FileMaker Proの運用規模

 上記のようなスペックから判断すると、「どんなデータベースでも作れそう」と思うかもしれません。しかし、FileMakerの多くがスタンドアロンやワークグループで利用されており、クライアントの規模で言っても1から多くて200クライアント程度でしょう。筆者自身も、FileMaker Serverのスペックにある、125ファイルや250クライアントの制限を超えるようなシステムの開発はそれほど多く経験していません。

 FileMaker Server導入時の最大同時利用可能なクライアント数が250クライアントであることから、FileMaker ServerとFileMaker Proを使用するクライアントサーバ型の運用方法を考えた場合、250以上のクライアントが想定されるシステムでは、FileMakerは使いづらいかもしれません。

 しかし同時に、250クライアントという数字は必ずしも小さくはありません。従業員が250人以上いる企業の基幹システムをFileMakerで構築する場合には、少々無理があると思いますが、企業内における特定業務のIT化を計画した場合には、250クライアントは十分現実的な数字でしょうし、全社員数が250人以下の企業であれば、基幹システムの開発も可能なレベルにあると言えます。

 では、クライアントの数が250を超す場合、FileMakerは使えないかと言えばそうではありません。FileMaker ServerによるカスタムWebパブリッシングでWebベースのシステムを構築した場合には、250以上のクライアントでも対応可能なため、要件がWebベースのシステム構築で満たせる場合には、カスタムWebパブリッシングを採用すれば良いでしょう。

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この記事の著者

高岡 幸生(タカオカ ユキオ)

株式会社ジェネコム 代表取締役。ソフトウェアハウス数社にて経験を積み、1995年 ジェネコム設立。10数年にわたりシステム開発や、エンドユーザコンピューティング・コンサルタントとしてビジネスを展開。クライアント企業のIT部門の代わりの役割を担い、多くのクライアントと二人三脚で企業内IT環境の導入およ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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