米国と日本の30年の違い──現状を5年で変えるために必要な環境とは
AKKODiSコンサルティングでは、同社が擁する約1万人のエンジニアのスキル&キャリアアップを通じて、顧客企業への価値提供を高めている。自身もエンジニアとして20年以上のキャリアを有するCTOの前田氏は、そんな同社の組織づくりに携わってきた。
まず、前田氏は1992年と2022年の世界時価総額ランキングを提示し、30年間にわたって日本経済の中心産業が製造や通信など変わっていないことを指摘。一方、グローバル、とりわけ米国では30年で「ITで社会を変えようという企業」が飛躍的に成長していることをあげ、「日本における“失われた30年”で、経済の停滞や人口減少なども相まって、社会的課題が山積みながらも解決できないままで来てしまった」と嘆く。そこでAKKODiSコンサルティングでは、「テクノロジーと人財の力で、日本を課題解決先進国に」を新たなビジョンに掲げ、ITを含めた1万人のエンジニアの力をもってさまざまな産業・社会の課題に対して愚直に取り組んでいくことを決意をしたという。
前田氏は、同社の提供価値について、「単なるコンサルティングではなく、目指す姿と現在のギャップを特定し、それを埋める解決策として戦術や具体的な事業計画を策定し、実行するまでを担う」と語る。具体的には、理想像と現状との差を可視化する「①コンサルティング」を提供し、そのギャップを埋めるために「②システム・ソリューション開発」、「③社員のリスキリング」、「④テクノロジー人財の派遣」などを提供していく。前田氏は「失われた30年を5年で取り戻す!」と熱く語った。
こうした顧客伴走型のサービスを実現するには、同社の人財育成が重要な鍵を握るのは言うまでもない。特にDX人財については、デジタルリテラシーはもちろんのこと、「なぜ働くのか」「どんなキャリアにしていくのか」などの「内発的動機」「何を解決するのか」「どう解決するのか」を考え、行動する「課題解決力」を高める必要がある。そうしたDX人財スキルを基本要件に準拠しつつ独自にカスタマイズして、人財育成への投資を加速させていくという。
そして、そうしたDX人財が集まり、協力しあってこそイノベーションが実現するという考えのもと、AKKODiSコンサルティングでは、2023年4月に本社オフィスを全面改装。オープンなスペースで社員が自由にコミュニケーションを取りながら、クリエイティブなアイデアを生み出し連携し合うことで、既に新たなプロジェクトが生まれつつあるという。
エンジニアの自由な研究・開発を実現する「AKKODiS innovation Lab」
人財育成への投資を加速させる中、全面改装された本社オフィスで、2023年8月から本格的な稼働を開始したのが、オープンな研究・開発を目的とした「AKKODiS innovation Lab」だ。
前田氏は、「大きな会社ほど、セキュリティやガバナンスなどの関係でなかなか新しい技術を導入することが難しい。そこで、エンジニアが最先端技術に触れながら検証・研究を行い、モックやプロトタイプなどを開発・実装できる場をつくりたかった。ここでの経験を得ながら、AKKODiSのエキスパートとしてスキルを高めてもらいたい」と語り、「その中から顧客企業に有効な提供価値を見い出していく」と強調した。
「AKKODiS innovation Lab」では、Labの運営に関わる技術戦略室の「執務室」、チャットGPTや地方創生事業など実施中のプロジェクトなどに関する「展示エリア」、来場者へのドリンクサービスや社内イベントでバーとしても利用される「ラボカフェ」、中央フロアには別名“ワイガヤ”と呼ばれる「共創空間」ではステージやスクリーンなども設けられ、その奥には「コワーキングスペース」なども備えている。
なお、AKKODiSでは、前述したような「①コンサルティング」「②システム・ソリューション開発」「③社員のリスキリング」「④テクノロジー人財の派遣」の4事業をそれぞれ拡大しており、社員が活躍できるフィールドが広く、さまざまなキャリアパスが描けるという。現在は採用活動などに携わる國司氏も、「もとはエンジニアから営業と経て、現在のキャリアを築いてきた。学び、活躍して、さらに学ぶというサイクルの中で、自分らしいキャリアパスが持てる環境」と語った。
さらに同社は「天王洲トレーニングセンター」やリモートで操作できる環境も提供し、エンジニアはじめ社員の試行錯誤や挑戦をサポート。そこで生まれた価値を顧客へと還元していくという。
「AKKODiS innovation Lab」は実際にどのように使われている?
続いて、「AKKODiS innovation Lab」を運営する技術戦略室のメンバーによる座談会が実施された。技術戦略室は前田氏が室長となり、運営・シンクタンク・R&Dの3グループによって編成されている。
まず、Labの運営および社内連携を担当する山崎翔平氏が、「開放感があり、期待が高まる空間となっている」と述べ、「見学された顧客からも高評価をうけており、手応えを感じている」と期待を語った。
続いて、Think-tankグループなどを担当する谷本琢磨氏は「基本的に技術や市場環境に関するレポートを発行し、顧客と社員にとって『未来を照らすインサイト、人財育成の架け橋』となることを目指す」と語った。なお、レポートについては初版が8月上旬にリリースされ、以降は季ごとの発行を予定している。
そして、R&D担当として、テクノロジーソリューション開発や課題情報収集システムの開発・運用を手掛ける岡本哲雄氏は、「失った30年を5年で取り戻すには、相当のスピード感で臨まなければならない。そのためには『まずはやってみること』が重要」と語る。既に6月のプレオープンより、「つくる・さわる」から展示・共創というサイクルを開始しており、「それが一つの場所でできることの価値を実感している」と語った。
谷本氏は、「イノベーションの担い手は、かつては平賀源内のような一部の天才だったのが、それが今は多様な人達がオープンに関わるように変化している。その場として可能性を感じている」と改めて期待を寄せた。
今後はさまざまな企業や自治体、大学などと連携し、イベントなどの開催も予定されている。「失われた30年を取り戻す」をスローガンに、6月には「イノベーション立国日本プログラム」の第一回目を開催。今後も、子ども向けのプログラミング教室や、さまざまなテーマのハッカソンなどを実施の予定だという。
「利便性の高い田町にあるので、ぜひ来てほしい。実際にサービスを触ってもらえるラインナップも増やしていく」(岡本氏)、「AKKODiS Researchとして、海外の最新リサーチに関するイベントも実施していきたい」(谷本氏)、「わかりにくい技術をわかりやすく紹介する展示に力を入れていきたい」(山崎氏)など、それぞれ今後の取り組みについて語った。
最後に前田氏が、「こうしたAKKODiSをプラットフォームとし、一緒に日本を課題解決先進国にしていく仲間を募集している。ぜひ、興味のある方は問い合わせてほしい」と力強く語り、まとめの言葉とした。