アイルランド在住の開発者であるEmanuele Stoppa氏が率いる開発チームは、JavaScript向け多機能ツール「Biome」を8月29日(現地時間)、新たに公開した。BiomeはMITライセンスで公開しているオープンソース・ソフトウェア。
Biomeはコードのフォーマット統一や静的解析の機能を併せ持つツール。JavaScript/TypeScript、JSON、CSSに対応する。JavaScript/TypeScriptを使ったアプリケーション開発では、Babel(トランスパイラ)、ESLint(静的解析ツール)、webpack(モジュールバンドラ)、Prettier(フォーマット統一ツール)、Jest(結合テスト・ツール)など、それぞれ異なる機能を持つ別々のツールをかき集めて、適切に使い分ける必要があるが、必要なツールを集めて環境を作るだけでも開発者にとっては大きな負担となっている。
そこで、単一のツールで上記のような機能をすべて提供しようという考えからFacebook(現Meta Platforms)で2020年に開発が始まったのが「Rome」だ。その後RomeはFacebookの手を離れ、開発を主導していたSebastian McKenzie氏が米国カリフォルニア州に「Rome Tools」という企業を設立し、Romeの開発はこの新企業が主導するようになった。
Biomeの開発を主導するEmanuele Stoppa氏はRome Toolsに正社員として加入し、Romeの開発に従事した。しかしRome Toolsの経営は行き詰まり、全従業員を一時解雇(レイオフ)せざるを得ない状況に追い込まれた。Stoppa氏も職を失ったが、数カ月後にJavaScript/TypeScript向けフレームワーク「Astro」を開発している米Astro Technology Companyの職を得て、オープンソース・ソフトウェア開発に貢献する一開発者としてRomeの開発に携わっていた。
しかし、Rome開発の主導権はMcKenzie氏ただ一人が残ったRome Toolsが手放さなかった。そのためStoppa氏は、開発者間のコミュニケーション基盤となっているDiscordで適切な権限を与えられず、npmやVisual Studio CodeのMarketplaceなど、開発成果物を配布するサービスを自由に扱えないなど、開発続行を難しくさせる問題が残っていたとしている。
そこでStoppa氏はRomeの開発で中核となっていたメンバーと協議し、Romeからフォークした新しいツール「Biome」の開発を始めることを決めた。Biomeでは、Romeが目標としていたように、JavaScript/TypeScript開発で必要になる各種ツールを統合した単一のツールを提供することを目標とする。そして今後は、Web開発で使用する主要言語のすべてに対応することを目指すとしている。
主要開発メンバーの離脱により、Romeの開発は止まり、新バージョンが登場する見込みはなくなった。このためStoppa氏を始めとするBiomeの開発チームはRome利用者に向けて、Biomeへの乗り換えを推奨している。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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