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生成AI時代に活躍するエンジニアの必携スキルとは? ウルシステムズ漆原氏が語る、プロダクト開発の未来

生成AIが導くプロダクト開発の未来 Part1

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生成AIでエンジニアの働き方はどのように変化する?

 漆原氏は、生成AIの登場により、エンジニアの仕事には大きく2つの変化が訪れていると指摘した。1つ目は、ソフトウェア開発のライフサイクルにおいて、エンジニア自身がユーザーとしてAIをどう活用するかという点だ。

 「生成AIは、正しく使いこなせる人にとっては非常に便利です。特に定型的なタスク処理や自動化に効果的です。もちろん完璧ではないため、結果のチェックは必要ですが、生産性は確実に向上します。まだ始まったばかりなのに既に3割ほど生産性が上がっているケースもあります。このペースで技術が進化すればもっと便利になるのは間違いありません」

 2つ目が、開発するプロダクトや顧客の業務にAI機能をどう組み込むかという点。漆原氏はまだ日本では黎明期で、さまざまなツールがAI対応を始めている段階とし「生成AIの業務への本格的な適用はこれから多くのエンジニアが取り組むべき大事な仕事となるでしょう。現状はまだ単なる自動化や電子化の域を出ていません。チャットボットやFAQなどを超えた『コア業務』への導入は今からです。真のビジネス価値創出にむけて誰にでも大きなチャンスがあります」と話した。

 本格的にAIを業務に適用しようとすると、企業内に埋もれた非構造化データなどの情報の取り扱い方がポイントになる。単にデータを無作為に処理するだけでは十分な効果は得られないからだ。価値の高い独自情報を適切に加工し、活用するノウハウが求められるのだ。また、AIの安全性や信頼性の確保も重要であり、業務への深い知見も不可欠になる。いずれも高いハードルだが、漆原氏は生成AIの可能性を前向きに捉えており、本気で乗り越えた企業には大きなチャンスがあると考えている。

 生成AIの利用によって、エンジニア個人だけでなく開発組織も大きく変わろうとしている。一人ひとりが対応できる業務領域が拡大し進化しているのだ。例えば、開発・運用や、フロントエンド・バックエンドのように役割が分かれていた業務を、生成AI技術によって一体化できる可能性がある。開発者が運用もこなせる、あるいはバックエンドエンジニアがAIの支援によってフロントエンドのUIを作れるようになる等、専門分野の垣根が低くなりエンジニアの組織構造の変革につながる可能性が出てきているのだ。

 「結果として、AIを使いこなせる人ほど生産性が向上し、複数の領域を効率的にこなせるようになっています。生産性を高めながらますます品質が高い仕事ができるようになる。特に、ある程度習熟した開発者にとっては大きなメリットです。AIを伴走者とすることで開発の役割分担が変わります。アプリケーション開発やデータベース、インフラ、運用保守など機能別に分けていたチームがシャッフルされ、結果として成長意欲の高い良い技術チームを備えた企業がビジネス的に大躍進できると思います」

生成AI時代に求められる「本質」を見る力

 優れたエンジニアの生産性が高まる反面、自分の業務が生成AIに代替されていき、仕事を奪われるのではと懸念を抱く人も増えている。エンジニアとして、生成AIに代替されないようにするには、どのようなスキルを獲得するべきなのだろうか。

 漆原氏はそのひとつに「正しい設計能力」を挙げた。単に動作するコードを作るだけでなく、業務の本質を理解した上で「これで良い」と判断できる能力だ。データベースや業務分析、クラウドアーキテクチャなども同様で、適切な正しい設計が判断できることが肝心だ。また、生成AIが出力したアウトプットの品質を確認できるスキル「レビュー能力」も欠かせない。そのため、結果を適正に評価できる仕組みを構築することが大切になる。

 さらに、急速に進化する生成AI技術を「業務にどう適用すれば役立つかを自ら提案できる能力」も重要だという。指示待ちではなく、主体的にビジネス提案できる人材の価値が高まるのだ。

 「AIを適切に活用するには、現場の人々を深く理解し、業務の本質を見通すことが重要です。実はまだコンピュータ化されていない部分に重要な要素が隠れていることが多いです。例えば小売業では、店員の顧客とのやり取りや動作などまで観察する必要があるでしょう。人間を含めた業務全体を理解し、最も効果的なAIの適用方法を見出すことが、これからのエンジニアに求められる重要なスキルだと思います」

 適切な判断を下すためには経験も必要だ。若い世代のエンジニアは、AIがコードを自動生成する時代に適切な判断能力を身につけることができるのだろうか。この点について漆原氏は、むしろ生成AI時代だからこそ学習内容が大事だと言う。「検索できる個別の技術知識はAIに任せておけばよいでしょう。ただ、システム全体のアーキテクチャや設計パターン、業務分析やデータモデリングなどは簡単には検索できないナレッジです。なぜそうなっているのか、どうしてそうなのか。生成AI時代には学習方法が決定的に変わります。学習結果を自分でちゃんと試して確認することも大切です。技術もビジネスも、本質的な部分を学ぶようにしましょう」とコメントした。

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生成AI活用で日本の復権へ!エンジニアたちの挑戦が鍵

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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ミヨグラフィ(ミヨグラフィ)

フットワークが窒素よりも軽いフリーランスフォトグラファー。ポートレート、取材、イベントなど主に人物撮影をしています。英語・中国語対応可能。趣味は電子工作・3Dプリント・ポールダンス。 Webサイト

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