ファイルシステムstd::filesystem[C++17]
ディレクトリやファイルの情報は、OSのシステムコールを使ってライブラリを自作するなどしていましたが、C++ 17でstd::filesystemが導入されて、ファイルシステム操作の機能が標準で使えるようになったんですね。あのとき苦労していたのがウソみたいです。
std::filesystemでは、ファイルやディレクトリ(フォルダ)を「エンティティ」という概念で扱います。以下は、カレントディレクトリを取得する例です。
#include <filesystem> …略… cout << filesystem::current_path().string() << endl; // 実行結果:/Users/nao/Documents/…/library
std::filesystemを使うには、ヘッダファイル<filesystem>をインクルードします。current_path関数は、カレントディレクトリを取得して返しますが、返すのはpathクラスのインスタンスです。pathクラスは、文字通りファイルシステムのパスを抽象化したものなので、文字列表記を取得するためにstring関数を呼び出しています。ちなみに、current_path関数の戻り値をそのままストリームに出力すると、ダブルクォートで囲まれた形式となります。
次は、意外と面倒な、カレントディレクトリの中身を取得する例です。
for(const filesystem::directory_entry &i:filesystem::directory_iterator(".")) { cout << i.path().filename().string() << ": " << i.file_size() << endl; } // 実行結果:filesystem.cpp: 322 …
ここでは2つのクラスが使われています。directory_entryは、ディレクトリ内の要素を表すエンティティのクラスで、directory_iteratorはディレクトリ内を走査するイテレータのクラスです。つまり、この2つを組み合わせると、ディレクトリの中を走査し、ファイルやディレクトリを取得できるというわけです。directory_entryのインスタンスからは、path関数でパスの情報を取得、filename関数でファイル名部分を取得、string関数で文字列化、という手順を踏んで出力しています。さらに、file_size関数でファイルのサイズを取得しています。
この他、ファイルのコピー(copy)、ディレクトリの作成(create_directory)、パーミッションの設定(permissions)、ファイルやディレクトリの削除(remove)といった、基本的な操作のための関数を多数備えています。これさえあれば、ファイル操作に苦労することはなさそうですね。
まとめ
今回は、コンテナ、正規表現、ファイルシステムなど、利用頻度の高そうな基本ライブラリを紹介しました。便利な標準ライブラリはほかにもたくさんあるので、欲しい機能があるかどうか調べてみてはいかがでしょうか。
これで、Modern C++の機能を知る連載は終わりです。昔のC++からは全くと言ってよいほど変わったC++の姿を、一部ではありますがお伝えできたのではないかと思います。現在も進化を続けているC++を、今後も追いかけていきたいものです。