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技術の「幅」を広げるのが重要——丸井グループが誇るエポスカードの巨大システムに挑むエンジニアの奮闘記

【14-E-3】技術の「幅」から広げるエンジニアリング — 創業ベンチャーCTOから大企業レガシー刷新へ

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 技術には「深さ」と「幅」があるといわれている。どちらを求めにいくかに正解はないが、ここでは技術の幅にフォーカスする。解説するのは、創業ベンチャーCTOから大企業のレガシー刷新まで経験し、現在は丸井グループのエポスカードの巨大システム開発を行っている株式会社マルイユナイトの巣籠悠輔氏。自身の奮闘記録とともにお伝えする。

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技術の「幅」と「深さ」、どっちが大事?

株式会社マルイユナイト(株式会社丸井グループ)巣籠 悠輔氏
株式会社マルイユナイト(株式会社丸井グループ)巣籠 悠輔氏

 まず巣籠氏が聴講者に問うたのは、技術の「幅」と「深さ」という問題だ。結論を先に言えば、どちらも大事であるという。最強エンジニアを目指すにあたり、必要なのは、この2つの掛け算であり、この掛け算の面積を増やしていくことが重要だと、巣籠氏は語る。

 
技術の「幅」と「深さ」のどちらも大事

 一般的にはサービスを作るときの立ち上げ期は「技術の幅」で、技術の拡大期は「技術の深さ」が大事と言われている。ただこの技術の幅には、「フルスタックエンジニアリング」と「ソフトウェアアーキテクティング」の2種類がある。

学生時代からGunosy、READYFOR、マネーフォワードなどで開発サポート

 巣籠氏は15年弱、ディープラーニングを専門に研究開発を行っており、ディープラーニング関連の書籍も出している。ちなみに一番左が翔泳社から出している書籍『ディープラーニングG検定(ジェネラリスト)公式テキスト』だ。

 
これまで巣籠氏が執筆に携わった書籍

 学生時代から企業化する前のGunosy、READYFOR、マネーフォワードなどで開発をしており、一人でもバズ狙いでサイトを作っていた。一番バズったのは、CSS SANS(すでにサイトはクローズ)。「CSSでフォントを作ったもので、国内海外で変態呼ばわりされていたのが、嬉しかった」と思い出を語る。

 他にも、創業ベンチャーのCTOとして会社を共同創業し、オンライン診療アプリ開発や医療AIを開発。さまざまな経験を経て、現在はマルイユナイトという丸井グループのテックカンパニーに所属している。参画した経緯としては、グッドパッチ代表の土屋氏が丸井グループの非常勤役員であったこともあり、その大規模なシステム開発やマネジメントに携わるうちに、マルイユナイトに参画することとなった。

大規模なシステムに求められる、フルスタックエンジニアリング・アーキテクティングのスキル

 それぞれの開発フェーズにおいて(異なることもある上に共通することもあるが)強く求められるスキルがある。「いろいろ作るフェーズでは、フルスタックエンジニアリングのスキル。大規模なシステムに関わっている際は、アーキテクティングのスキル」だと巣籠氏は話す。

 
経験をもとに、フルスタックとアーキテクティングを分類

 まず、サービス立ち上げ期はメンバーが一人であることもあるくらい、エンジニアメンバーが少ない場合が多い。そこで求められるのがフロントエンド、バックエンド、インフラに全部携わる「フルスタック」である。

 「この段階においては、すべての領域を完璧にこなすのは無理なので、もう技術の深さについては割り切っちゃうことが大事かなと思います」(巣籠氏)

 とにかく幅広くいろんなことができるようになっておいて、サービスができてきた段階で優れたエンジニアに来てもらい、サービスを直していくのが最適と巣籠氏はすすめる。今はCursorやRoo Code(旧 Roo-Cline)などの生成AIを活用したコード補完ツールなどもあるので、自分で書くコードを減らすことが可能だ。開発時に自分に「生成AIバフ」をかけられるので、文字通り幅を利かせやすい環境にあると言える。

 「実際にCursorやRoo Codeなどが登場したことによって、ソロプレイな1人で起業するプレイヤーは増えてきました。今後もこのトレンドは続くのかなと思っています」(巣籠氏)

 さらに、DeepSeek R1などすぐ使える生成AIを活用したエンジニアリングもより手軽にできるようになってきている。自分で「0→1」事業をやりたいならば、技術の幅と生成AIのバフをいかしてソロプレナーを目指すのもおすすめだと巣籠氏は言う。大規模システムに携わりたい巣籠氏は、自分で「0→1」からスタートする場合では成功してもそれなりに時間がかかるため、効率的に大規模なシステムに関わることができるルートとしてマルイユナイトを選んだ。

 前半は、「サービス立ち上げ期は技術の幅が大事である」「そのためにはフルスタックエンジニアリングのスキルが必要である」「幅を利かせていくにはClineなどの生成バフを得てソロプレナーする方法もある」ことを述べて、まとめられた。

 
ここまでのまとめ

アーキテクティングとはどのような役割か

 企業にもよるが、システムのアーキテクチャを考えるアーキテクトという職種が存在する。巣籠氏はマルイユナイトの紹介を兼ねて、その役割を説明した。前述した通り、マルイユナイトは丸井グループが2024年9月に設立したテックカンパニーだ。

 丸井グループの収益は、その大半がエポスカード(クレジットカード)である。つまり、小売とFinTechの会社なのだ。1960年に日本初のクレジットカードを発行し、エポスカードは2006年に発行された。カード会員数750万人以上と大規模で長い歴史を持つ。

 
店舗のイメージが強いかもしれない「マルイ」。実は収益の大半はクレジットカード

レガシーシステムの技術負債を解消へ

 だが、長い歴史を持つシステムであることから、技術負債に悩まされている。現在はこのレガシーシステムを改修しながら、技術負債の解消に注力している状況だ。

 「個人的には、レガシー刷新も面白いと思っています。新しく作り直すのに求められることが、サービス立ち上げとはちょっと違うからです」(巣籠氏)

 レガシー刷新の代表的なアプローチには、従来からの代表的なストラングラーパターンなどがある。これは現在のレガシーシステムから切り出せる部分を徐々に新システムに移行していく手法だ。

 大きなシステムがあったときに、どこから切り出せるか、切り出した後の設計をどうするかなどをシステム全体のアーキテクチャを考えて決定する必要がある。これもアーキテクティングである。

 
アーキテクティング

 しかし、「ちょっと古い」J2EEベースのアプリケーションなどは、巨大すぎて一気にすべてを移行することはできない。そこで、段階的に新しいサービスに移行していくレガシー刷新が研究開発されている。

どう新しいサービスに移行していくのか?

 ここからは、マルイユナイトでトライした事例が紹介された。まず考えたことは、現在のアーキテクチャの問題を把握することだ。それまでのシステムは一応リポジトリでは複数に分かれているが、動いているのが一つのアプリケーションサーバーになっていた。そこで、マイクロサービス化かモジュラーモノリス化が必須だった。

 
アプローチ1:現在のアーキテクチャの問題を把握する

 続いてのアプローチは、レイヤー間の依存関係を把握し、分離のしやすさや影響の大きさを鑑みてどこのドメインから着手するかを判断したことだ。

 
アプローチ2:レイヤー間の依存関係を把握する

 次のアプローチでは、業種独自の制約を把握するという課題があった。クレジットカードの会員情報を扱う場合、そのシステムはPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)というセキュリティ基準に準拠をしなければいけないので、その対応が必要だった。

 
アプローチ3:業種独自の制約を把握する

 ちなみに、こうした大規模システムのコードは行数が大きくなるため、生成AIに与えようとしてもコンテキスト長が溢れてしまう課題もある。ただ、これに関しても技術の幅を活かして、生成AIフレンドリーにリアーキテクチャしていけば(要はコンテキスト長が触れない範囲で)うまくシステム分割できる。その範囲で生成AIバフを得ていけば開発効率も大きく上がるだろうと見込んで、現在進行形で取り組んでいる。

 最後に巣籠氏は、「生成AIというキーワードはここ2~3年で登場したものですし、Dockerコンテナも15年前はありませんでした。その時代において最適な対応・ツールがあるので、一度アーキテクチャをしたらそれでおしまいということはありません。継続的にアップデートしていかないといけません」と、改めて技術の幅を広げることの重要性を語り、セッションを締めた。

 
最後のまとめ

株式会社マルイユナイトでは、一緒に働くエンジニアの積極的な採用活動を行っています!

 マルイユナイトは2024年9月に始動した、丸井グループのテックカンパニーです。

 「好き」という感情とデジタルの力で、新しい顧客体験を共創しています。

 本記事でご興味を持たれた方、よろしければカジュアルにお話ししませんか。

 こちらからお気軽にエントリーください。

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提供:株式会社マルイユナイト

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/21070 2025/04/07 12:00

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