リグレッションテスト自動化までの道のり
また、当初からの課題であった「リグレッションテストができていない」問題に対しては、リグレッションテストの自動化を行った。浅黄氏が調査したところ、リグレッションテストのケースが400件ほどあったが、それらを「誰が何の目的で作ったのか」「いつ実行すればよいのか」がわからなくなっていたという。
そこで、浅黄氏らが主導して一からテストを設計した。目的を明確にして、テストの意味を皆が理解している状態にしたのだ。その後、浅黄氏らヒューマンクレストが自動テストを作成し、毎日1回自動でテストがまわるフローが実現。リファクタリングも容易になった。
Agile TPIの取り組みと、リグレッションテストの自動化の実践を経て、グリニッジ株式会社では大きな変化が表れている。

「図の赤い部分がAgile TPIのチェックリストがNOだったもの、グレーが判定不可、緑がYESだったものです。2024年11月までにかなりグリーンが増えてきました」
ただし、個人とチームにおけるプロセス改善やテストスキルは向上しているが、それを組織に横展開できていない状態だ。浅黄氏は、「チームごとにプラクティスがある状態なので、組織に波及させていくことに注力している」と話し、これからも改善に取り組んでいくとしている。
最後に、浅黄氏はAgile TPIを実施するにあたってのポイントを伝授した。
チェックポイントで現状を評価したら、メンバーに共有することで、問題点に気がつくことができる。そして、優先すべきチェックポイントから、小さなステップで改善することを推奨する。「大きな変革は痛みを伴うことが大きい」と浅黄氏。3か月ごとに1~2ポイントの改善を目指すのがよいという。
また、チェックポイントをNOからYESにするための対策を実行しても、なかなかYESにならない場合もある。一つのチェックポイントに対して、立案、計画、実施、評価を繰り返していくことで地道に改善していくことが重要だ。
「品質向上のためにはプロセス改善が必須だと考えています。そのために、Agile TPIのようなフレームワークに従って実践を導入していくとよいでしょう。また、そこにはピープル、人のスキルの向上も欠かせません。プロセスと人の両方をよくするアプローチをすれば、必然的にプロダクトの品質も上がっていきます」