JavaScriptとは何か?
プログラミング言語・JavaScriptの主な特徴と強み
JavaScriptは、Webブラウザ上で動作するプログラミング言語として広く知られています。JavaScriptの最も大きな特徴は、Webサイトに「動き」や「インタラクティブな要素」を加えられる点です。
ユーザーがボタンをクリックした際に画像が切り替わったり、入力フォームの内容をリアルタイムで検証したりといった、私たちがWeb上で体験する動的な挙動の多くがJavaScriptによって実現されています。こうした例からも、Web開発に不可欠な存在であることがわかるでしょう。
JavaScriptの強みは、その汎用性と実行環境の豊富さにあります。当初はWebブラウザ上で動くクライアントサイドの言語として誕生しましたが、現在ではサーバーサイド開発の主要な選択肢の一つであるNode.jsの登場により、バックエンド開発にも利用されています。
これにより、フロントエンドからバックエンドまで、Webアプリケーション全体をJavaScriptで統一して開発する「フルスタック開発」が可能となりました。React Native、NativeScript、Electronといったオープンソースフレームワークにより、モバイルアプリ開発、デスクトップアプリケーション開発、ゲーム開発、IoTなど活躍できる分野も広がり続けています。
また、JavaScriptは人間が書いたプログラムのコードを一行ずつ解釈・実行していくインタプリタ型言語であり、コードを実行可能な形式に変換するコンパイルと呼ばれる作業が不要です。書いたコードをすぐに実行して結果を確認できるため、プロトタイプの作成やアイデアの検証をスムーズに行い、開発のサイクルを高速に回せる点も大きな魅力だといえます。OSに依存しない実行環境であるため、クロスプラットフォーム性がある点も、普及を後押しする理由となっています。
JavaScriptの歴史・開発経緯
JavaScriptの歴史は、Webの黎明期までさかのぼります。1995年、アメリカのNetscape Communications社に在籍していたプログラマーのブレンダン・アイク氏によって、わずか10日間で開発されました。当時のWebページはHTMLとCSSによる静的な表示が主流でしたが、Webブラウザ上に動的なコンテンツやインタラクティブ要素を追加したいというニーズに応える形で誕生したのがJavaScriptです。
開発当初は「LiveScript(ライブスクリプト)」と呼ばれ、Netscape Navigatorという特定のブラウザでのみ動作する仕様でしたが、当時非常に人気があったJavaにあやかって最終的に「JavaScript」と名付けられました。ただし、この名称をつけたことにより、後年多くの混乱を生むことになります。
なお、JavaScript普及の歴史の裏には、Microsoft社も関係しています。同社は1996年、Internet ExplorerにJavaScriptと互換性のあるスクリプト言語「JScript(ジェイスクリプト)」を実装しました。しかし、完全に互換性があるわけではなく、「ブラウザによってコードが動作しない」といった事象が発生。これは開発者にとって大きな悩みの種となりました。
これがJavaScriptの標準化を進める大きなきっかけとなり、情報通信システム分野の標準化団体 Ecma Internationalによって標準仕様「ECMAScript(エクマスクリプト)」が策定されました。ECMAScriptの誕生当初は独特な仕様もあることから、JavaScript初学者はその特殊さに苦しめられるケースが多く存在しましたが、度重なるバージョンアップにより2015年に「ECMAScript 2015(ES2015)」という仕様が誕生。これ以降は大規模な開発でも保守性が高く、実用に耐えるモダンなコードが書けるようになり、JavaScriptの立ち位置は揺るぎないものになっていきました。
現在、ECMAScriptは毎年改訂されており、JavaScriptの活用ジャンルも前述のように多岐にわたっています。こうした歴史を理解すると、JavaScriptがWeb開発で市民権を得ている理由もおわかりいただけるのではないでしょうか。
JavaScriptで何ができるのか?
フロントエンド・バックエンドどちらの開発にも対応できるJavaScript
前述のように、かつてはフロントエンドでしか使えなかったJavaScriptですが、Node.jsの誕生以降はバックエンド開発でも広く使われるようになっています。ここからは、具体的にフロントエンドとバックエンドでJavaScriptがどのような役割を果たしているのか見ていきましょう。
JavaScriptでできること
フロントエンドでのJavaScript活用例
ユーザーが直接触れるWebブラウザ側でのJavaScriptの役割は、非常に多岐にわたります。
Webサイトに 動きをつける |
ボタンをクリックした際に画像がスライド表示されたり、 メニューがフェードイン・フェードアウトしたりといった アニメーションや視覚効果を実装できます。 |
フォーム入力の 検証 |
ユーザーが入力したメールアドレスやパスワードが 正しい形式か、リアルタイムでチェックし、 エラーを通知することが可能です。 |
非同期通信 |
ページ全体の再読み込みなしに、サーバーから 必要なデータだけを取得し、ページの一部を 更新することができます。 SNSのタイムラインや地図アプリのズーム・スクロールなどが 典型的な例です。 |
Webゲームの 開発 |
ブラウザのCanvas要素を使って、2Dや3Dのゲームを開発できます。 |
関連記事
バックエンドでのJavaScript活用例
Node.jsが2009年に登場して以降、JavaScriptはサーバーサイドでも次のような力を発揮しています。
Webサーバーの構築 |
Webアプリケーションのバックエンドとして、 HTTPリクエストを処理し、データベースと 連携して動的なコンテンツを生成するサーバーを構築できます。 |
API開発 |
モバイルアプリや他のサービスと連携するための API(Application Programming Interface)を開発できます。 |
コマンドラインツールの開発 | OS上で動作するコマンドラインツールをJavaScriptで作成できます。 |
リアルタイム通信 |
チャットアプリやオンラインゲームのような、 リアルタイムでデータのやり取りが必要な サービスを開発できます。 |
関連記事
JavaScriptで構築された有名なサービスや機能
私たちが日常的に利用する多くのWebサービスで使われているJavaScript。その代表例をいくつかご紹介します。
日本国内の事例
クックパッド |
レシピ検索や投稿機能など、多くの部分でJavaScriptが 活用されています。 |
Yahoo! JAPAN |
ポータルサイトの様々なインタラクティブな要素や 動的な表示にJavaScriptが使われています。 |
はてなブログ |
記事のプレビュー機能やコメント機能など、 ユーザー体験を向上させるためにJavaScriptが活用されています。 |
JavaScriptに言及している事例記事を読む
世界の事例
Google Maps |
地図のスクロールやズーム、経路検索など、 JavaScriptと非同期通信技術が密接に 連携して動作しています。 |
YouTube |
動画の再生、コメント、関連動画の表示など、 ユーザーインターフェースの多くの部分が JavaScriptで作られています。 |
Netflix |
映画やドラマの閲覧、ユーザーの視聴履歴に基づく レコメンド機能などにJavaScriptが使われています。 |
X(旧Twitter) |
リアルタイムのタイムライン更新や、 いいね・リツイート機能など、JavaScriptが 重要な役割を担っています。 |
JavaScriptのエコシステムについて
JavaScriptの活用がここまで進むようになった背景には、ライブラリ、フレームワーク、ツール、コミュニティなどといった「エコシステム」の豊かさがあります。JavaScriptのエコシステムは非常に巨大で、開発の効率化に貢献する様々なツールが日々生まれています。
フレームワーク |
開発の土台となる骨組みを提供し、 大規模開発を効率化するReact、Vue.js、Angularなどが有名です。 |
ライブラリ |
特定の機能を簡単に実装するための部品集で、 データの可視化を行うD3.jsやアニメーションを 簡単に実装するGSAPなどがあります。 |
パッケージ管理ツール |
必要なライブラリやフレームワークを 簡単にインストール、管理するための npm(Node Package Manager)やYarnが 広く使われています。 |
こうしたツールは、世界中の開発者によって日々開発・改善されています。JavaScriptが常にWeb開発をリードし、確固たる地位を築く裏には、自発的な開発者の存在が欠かせません。
JavaScriptを活用する上でのメリット・デメリット
エンジニアとしてのキャリア構築やJavaScriptを使った開発を進める上で、JavaScriptのプログラミング言語としての特性を理解することは非常に重要です。ここでは特に初学者に向け、そのメリットとデメリットを解説していきます。
開発におけるメリット・デメリット
メリット
高い汎用性 |
フロントエンドからバックエンド、 モバイルアプリ、デスクトップアプリ開発まで 幅広い分野に対応できるため、 一つの言語で多様な開発に挑戦できます。 |
大規模なコミュニティと 豊富な情報 |
世界中の開発者が利用しているため、 技術的な問題に直面した際に オンラインのフォーラムやドキュメントで 解決策を見つけやすいです。 |
軽量で 手軽に始められる |
コンパイルが不要なため、テキストエディタと Webブラウザさえあれば、すぐにコードを書いて 実行できます。 |
非同期処理の得意さ |
サーバーとの通信など、時間のかかる処理を待たずに 次の処理に進める非同期処理に優れており、 ユーザー体験の向上に貢献します。 |
デメリット
ブラウザ間の互換性問題 |
過去に比べて改善されたとはいえ、 依然としてブラウザごとのJavaScriptの挙動の違いに 注意が必要です。 |
言語仕様の柔軟性 |
非常に柔軟な言語である反面、規律なく書くと バグの温床になりやすく、大規模開発では コードの保守性が低下するリスクがあります。 この問題を解決するために、TypeScriptのような 静的型付け言語が広く使われるようになりました。 |
キャリア構築の上でのメリット・デメリット
メリット
高い需要と将来性 |
Webサービスやアプリケーションの需要が 拡大するにつれて、JavaScriptエンジニアの需要も 高まっています。 今後もWeb技術が進化する限り、その需要は続くでしょう。 |
フルスタックエンジニア への道 |
JavaScriptはフロントエンドとバックエンドの両方を 担当できるため、フルスタックエンジニアとして 幅広いスキルを身につけ、市場価値を高めることができます。 |
学習コストの低さ |
文法が比較的シンプルで、初心者向けの教材が 豊富にあるため、プログラミング未経験者でも 学習を始めやすいです。 |
参考記事
デメリット
技術トレンドの変化が速い |
JavaScriptのエコシステムは非常に活発で、 新しいフレームワークやライブラリが 次々と登場します。 常に最新の情報をキャッチアップし、 学び続ける姿勢が求められます。 |
競合が多い |
人気の言語であるため、多くの開発者が JavaScriptを学んでいます。 その中で差別化を図るには、UI/UX、 パフォーマンス最適化、セキュリティなど 特定の分野に強みをもつことが重要となります。 |
JavaScriptの学習、開発を始めるためのステップ
プログラミング未経験者でも気軽に学び始められるJavaScriptですが、具体的にどのようなステップを踏んで学びを深めると良いのでしょうか。ここからは、学習や情報収集の方法、キャリアアップに向けた道筋をご紹介します。
JavaScriptの基本概念を理解する
最初に取り組むべきは、次のようなJavaScriptの基本的な概念をしっかりと理解することです。
変数とデータ型 |
文字列(string)、数値(number)、 真偽値(boolean)など、データを格納するための 箱である変数と、データの種類を学びます。 |
配列とオブジェクト |
複数のデータをまとめて扱うためのデータ構造です。 特にJavaScriptではJSON形式のオブジェクトを 扱う機会が多く、その構造を理解することが重要です。 |
条件分岐とループ |
if/else文やfor文、while文を使って、 プログラムの流れを制御する方法を学びます。 |
関数 |
処理のまとまりを再利用可能にするための概念です。 引数や戻り値の仕組みを理解しましょう。 |
非同期処理 |
Promiseやasync/awaitといった概念を理解し、 サーバー通信などの非同期な処理を効率的に 記述する方法を学びます。 |
これらの基本的な概念は、JavaScriptだけでなく、他の多くのプログラミング言語にも共通する重要な要素です。この土台をしっかりと固めることが、その後のスムーズな学習につながります。
JavaScript開発環境を構築する方法
テキストエディタとWebブラウザがあればすぐに開発を始められるのが、JavaScriptの大きな利点です。開発環境は非常にシンプルで、特別なツールをインストールする必要もありません。
ステップ1:テキストエディタの準備
Windowsの「メモ帳」でも開発は可能ですが、プログラミングに特化した高機能なテキストエディタを使うことを強く推奨します。次のようなエディタが人気です。
Microsoftが開発している無料のテキストエディタで、 非常に多くの拡張機能が利用できます。 JavaScript開発のデファクトスタンダードと 言って良いでしょう。 |
|
Sublime Text |
軽量で動作が速く、シンプルなインターフェースが 魅力です。 |
VS Codeの基本がわかる記事
ステップ2:Webブラウザの準備
Google Chrome、Firefox、Microsoft Edgeなど、どのWebブラウザでも構いません。これらのブラウザには、開発者向けツール(デベロッパーツール)が標準で搭載されており、JavaScriptの実行結果を確認したり、デバッグ(バグの特定と修正)を行ったりする際に非常に便利です。特にChromeのデベロッパーツールは高機能で、多くの開発者が活用しています。
ステップ3:Node.jsのインストール ※バックエンド開発を行う場合
サーバーサイドでJavaScriptを動かしたい場合は、Node.jsをインストールする必要があります。Node.jsの公式サイトからインストーラーをダウンロードして実行するだけで導入できます。Node.jsをインストールすると、npm(パッケージ管理ツール)も同時にインストールされるため、外部のライブラリやフレームワークを利用する準備も整います。
JavaScriptの基本的な文法・記述方法
JavaScriptの文法は、他のプログラミング言語と比較して比較的シンプルで、柔軟性が高いのが特徴です。基本的な文法をマスターすれば、あなたも開発者の仲間入りを果たせます。
コメント |
コードの動作を説明するためのコメントは、 //(一行コメント)または/* */(複数行コメント)で記述します。 |
セミコロン |
一つの文の終わりには、セミコロン(;)を記述するのが一般的です。JavaScriptでは省略可能な場合もありますが、 記述する癖をつけておくと良いでしょう。 |
変数宣言 |
変数はletまたはconstキーワードを使って宣言します。 varも使えますが、現在はletとconstが推奨されています。 |
テンプレートリテラル |
バッククォート(`)を使って文字列を記述することで、 変数や式を埋め込むことができます。 |
【よくある質問】JavaScriptはどのぐらいの期間で習得できるのか?
初学者にとって、JavaScriptの習得期間は気になるところでしょう。学習者の背景や目標によって大きく異なるのは間違いありませんが、ここでは一般的にどの程度の期間を要するのか例をお伝えします。
簡単なWebサイトの 動的表現 |
HTMLとCSSの知識がある方なら、 1週間〜1ヵ月程度で基本的なJavaScriptの文法を理解し、 簡単なアニメーションやフォームの検証機能の実装が 可能になるでしょう。 |
Webアプリケーション開発 |
ReactやVue.jsなどといったWebアプリケーションの フレームワークを使いこなせるようになるには、 基本的な文法をマスターした上で、 さらに数ヵ月から半年程度の学習期間が必要です。 |
フルスタック開発 |
フロントエンドとバックエンドの両方を JavaScriptで担当できるようになるには、 さらに学習範囲が広がるため、半年から1年以上の 期間を要する場合があります。 |
重要なのは、一度にすべてを完璧に学ぼうとしないことです。まずは基本的な文法を学び、簡単なWebサイトの動的表現から始め、徐々にできることを増やしていくのが、挫折しないための鍵となります。
JavaScriptをこれから学ぶ初心者におすすめの学習リソース
JavaScriptの学習をスムーズに進めるには、適切な情報源を選び、活用することも重要です。ここでは信頼性と実践的な知識を得られる度合いの高い学習リソースをご紹介します。
公式ドキュメントとリファレンスサイト
プログラミング言語を学ぶ上で、最も信頼できる情報源は公式ドキュメントです。JavaScriptの標準仕様を定めているECMAのドキュメントは難解ですが、より分かりやすく解説されているリファレンスサイトが多数存在します。
Web開発者にとってのバイブルとも言える存在です。JavaScriptだけでなく、HTMLやCSSに関する 詳細なリファレンスやチュートリアルが 網羅されています。 |
|
W3Schools |
初心者向けの簡単なコード例が豊富で、 実際にブラウザ上でコードを試しながら学習できます。 |
エンジニア向けWebメディアの記事やニュースレター
CodeZineのようなエンジニア向けのWebメディアは、最新の技術トレンドや開発手法、ベストプラクティスに関する記事を提供しています。また、こうしたメディアが発行しているニュースレターを購読することで、自動的に最新情報のキャッチアップも可能です。
JavaScript開発に携わる個人が発信するブログ・ポッドキャスト・YouTubeなど
エンジニアが自主的に発信する個人ブログや技術系ポッドキャスト、YouTubeチャンネルも非常に有用な学習リソースです。
技術者ブログ |
個人の開発経験や特定のライブラリの解説など、 より実践的なノウハウが共有されています。 |
ポッドキャスト |
通勤・通学中など、音声で気軽に最新の技術動向や キャリアに関する知見を得られます。 |
YouTube |
実際のコーディングの様子や開発環境の構築方法などを、 動画で視覚的に学べます。 |
GitHubのプロジェクト
エンジニア自身がコードの公開やプロジェクトのコード閲覧、コントリビュート(貢献)できるプラットフォーム「GitHub」も、理解度を向上させるには欠かせない存在です。
スターの多いプロジェクト を分析する |
人気のあるライブラリやフレームワークのコードを 読むことで、プロのコードの書き方や設計思想が学べます。 |
サンプルプロジェクトを 探す |
「JavaScript sample project」といったキーワードで 検索することで、自分で動かして試せる 様々なプロジェクトを見つけられます。 |
GitHubについての関連記事
初学者向けの書籍
オンラインに情報があふれる現代でも、プログラミング関連の書籍は体系的に知識を得る上で非常に有効な手段です。特にその言語の基礎や概念、ベストプラクティスなどを深く理解したい場合に適しています。ウェブサイトの断片的な情報だけでは得にくい、言語の全体像や本質的な考え方をしっかりと身につけられる点が大きなメリットで、学習の土台をしっかりと築くことができます。
CodeZineを運営している翔泳社でもプログラミングについて学べる書籍を多数出版していますので、ぜひチェックしてみてください。
参考書籍
『独習JavaScript 新版』
本書では、JavaScriptでプログラミングを行う際に必要となる、基本的な知識/概念/機能、文法/プログラムの書き方を、さまざまなサンプルプログラムを例示しながら、詳細かつ丁寧に解説します。
『いきなりプログラミング JavaScript』
この本では、プログラミングの地道な下準備をすべて「スキップ」。いきなり自分のアプリやゲームを作り始められる新感覚の入門書です。手っ取り早くアプリを作っているうちに、プログラミングの基本知識が自然と身につきます。
技術カンファレンスやフォーラム、ミートアップに参加する
オンライン・オフラインを問わず、技術カンファレンスやフォーラム、ミートアップに積極的に参加するのも、学習を加速させる重要な手段です。業界の最前線で活躍するエンジニアの講演から、最新の技術トレンドやロードマップを把握できます。現役エンジニアに実際に質問をしたり、実際に交流を図れたりするため、質問や相談、議論をしたい方には特におすすめです。CodeZineでも「Developers Summit(デブサミ)」「Developers Boost(デブスト)」といったイベントを年に複数回開催しています。
初心者から中級者にステップアップするにはどんな学習方法があるか
JavaScriptの基本的な文法をマスターし、簡単なWebサイトやアプリケーションを作れるようになったら次のステップを目指しましょう。AIによるコーディングも加速する今後、エンジニアとしてキャリアアップするのであれば、単にコード生成ができるだけでなく、より効率的で保守性の高いコードを書けるようになるのは必須要件です。それを踏まえた学習方法をいくつかご紹介します。
1. フレームワークやライブラリを学ぶ
Webアプリケーション開発において、フレームワークやライブラリは欠かせない存在です。React、Vue.js、Angularといった主要なフレームワークを一つ選び、その使い方と概念を深く理解しましょう。これらのフレームワークは、部品化して再利用する「コンポーネント指向」や「状態管理」といったモダンな開発の考え方を学ぶ上で非常に役立ちます。
2. 静的型付け言語のTypeScriptを学ぶ
JavaScriptの柔軟性は開発の初期段階では便利ですが、大規模なプロジェクトでは型がないことが原因でバグが発生する恐れがあります。これを避けるため、TypeScriptを学ぶことを強く推奨します。TypeScriptはJavaScriptに型を導入した言語で、コードの信頼性と保守性を大幅に向上させます。
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3. サーバーサイド開発に挑戦する
フロントエンド開発の勘どころを押さえた後は、Node.jsを使ってサーバーサイドの開発に挑戦してみましょう。フロントエンドとバックエンドを両方担当することで、Webアプリケーション全体の仕組みをより深く理解でき、フルスタックエンジニアとしてのスキルを身につけられます。Express.jsやNestJSといったフレームワークを使うと、効率的なサーバー構築が可能です。
4. ツールや概念を学ぶ
特別なツールがなくても開発を始められるJavaScriptですが、よりプロフェッショナルな開発を行うには、様々なツールや概念の理解が不可欠です。
バージョン管理 |
GitとGitHubを使ったバージョン管理をマスターしましょう。 チーム開発を行う上で必須のスキルです。 |
バンドラー |
複数のJavaScriptファイルを一つにまとめる WebpackやViteなどのツールを学びましょう。 |
テスト |
開発したコードが正しく動作するかを自動的に検証する テストの概念と、JestやVitestといった テストフレームワークの使い方を学びましょう。 |
5. 実際にアプリケーションを開発する
学習の進捗を最も効果的に体感するには、自分の手で実際にアプリケーションを開発してみるのがおすすめです。チュートリアルを終えたら、小さなToDoリストアプリでも良いので、自分でアイデアを出してゼロから完成形を目指して手を動かしましょう。このプロセスは、きっと多くの問題に直面しますが、一つひとつ解決する経験を積むことでスキルアップにつながります。
JavaScriptを使いこなせるとどんな仕事に就けるのか
JavaScriptを習得すると、IT業界で非常に幅広いキャリアパスを描けるようになります。ここでは、代表的な職種とそれぞれで求められるスキルセットを解説します。
フロントエンドエンジニア
Webブラウザ上で動作するユーザーインターフェース(UI)やユーザー体験(UX)を開発する専門家です。HTML、CSS、そしてJavaScriptの知識が必須となります。
主な役割 |
WebサイトやWebアプリケーションのUI実装、 非同期通信を用いた動的なコンテンツ表示、 アニメーションやインタラクションの作成など |
求められるスキル |
JavaScriptの知識はもちろん、React、Vue.js、 Angularといったフレームワークの習熟度が求められます。 UI/UXに関する知識も必要です |
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バックエンドエンジニア
サーバーサイドで動作するシステムの開発を担当する専門家です。データベースとの連携やAPI開発、サーバーの構築など、システムの「裏側」を支える役割を担います。
主な役割 |
Webサーバーの構築、データベースの設計と操作、 API開発、ビジネスロジックの実装など |
求められるスキル |
JavaScript(Node.js)の知識に加え、Express.jsや NestJSといったバックエンドフレームワークの習熟度、 データベース(MySQL、MongoDBなど)に関する知識、 そしてセキュリティやサーバー運用の知識も必要になります。 |
フルスタックエンジニア
フロントエンドとバックエンドの両方を担当できるエンジニアです。スタートアップ企業や小規模な組織では、一人でサービスの開発全体を担うこともあります。
主な役割 |
サービスの企画からフロントエンド・バックエンド両方の開発、 運用まで、幅広い業務を担当します。 |
求められるスキル |
JavaScript(Node.js)でフロントエンドとバックエンドの 両方を開発できるスキルに加え、データベースや サーバー運用に関する知識、プロジェクト全体の 設計能力などが求められます。 |
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JavaScriptが使えるとエンジニアのキャリアとしての将来性はどうなる?
JavaScriptはWeb技術発展の中核を担うプログラム言語であり、その将来性も非常に高いものだといえるでしょう。JavaScriptを理解し使いこなせると、次のような領域にも関われる可能性があります。
AI・機械学習に 関連する案件 |
Pythonが主流のAI分野でも、ブラウザ上で 機械学習モデルを実行するTensorFlow.jsなどの ライブラリの登場により、JavaScript活用の場は広がっています。 |
高パフォーマンスが 求められる 大規模開発案件 |
WebAssemblyの登場により、画像処理や暗号化の処理、 AI・機械学習モデルの実行といった 従来のJavaScriptでは困難だった重い処理が可能となっています。 WebAssemblyの仕組みを理解すれば、 こうした開発案件にも携われる可能性が生まれてきます。 |
サーバーレス アーキテクチャを 採用している案件 |
Node.jsは、サーバーの管理を不要にする サーバーレスアーキテクチャの主要な実行環境の 一つとして使われています。 動画配信サービスのバックエンドや IoTデバイスからのデータ処理など、 この仕組みを採用する案件にも関われる可能性が広がります。 |
JavaScriptを使う日本の著名エンジニアの例
日本のJavaScriptコミュニティには、世界的に活躍する著名なエンジニアが多数存在します。
川口和也氏(@kazupon) | Vue.jsのコアチームメンバーとして、国際化(i18n)ライブラリの開発に貢献 |
古川陽介氏(@yosuke_furukawa) | Node.jsのコアコントリビューター、日本ユーザーグループ代表として、コミュニティでも活躍 |
@azu_re氏 |
JSer.infoというJavaScriptの最新情報を発信するサイトを運営。 日本のJavaScriptコミュニティの発展に大きく貢献 |
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JavaScriptと他のプログラミング言語の違い、学習難易度は?
これからプログラミング言語を学習する方にとって、JavaScriptを選ぶのが最適なのか判断する上で、他のプログラミング言語との違いや学習難易度は気になるところでしょう。ここからは、特に混同されやすいJavaや近年人気のあるPython、Ruby、PHPとの違いを比較し、それぞれの特徴を解説します。
JavaScriptとJavaの違い
名称 |
名前に「Java」が含まれるため混同されがちですが、 両者は全く異なる言語です。 JavaScriptはNetscape社が開発し、 JavaはSun Microsystems社(現Oracle社)が開発しました。 |
実行環境 |
JavaScriptは主にWebブラウザ上で動作する一方、 JavaはJVM(Java Virtual Machine)という 仮想マシン上で動作します。 これにより、Javaは「Write once, Run anywhere (一度書けばどこでも動く)」という特性を持ちます。 |
得意な分野・用途 |
JavaScriptはWebのフロントエンドからバックエンドまで 幅広い用途に利用されますが、JavaはAndroidアプリ開発や 金融機関の基幹システムといった、大規模で堅牢性が 求められるシステム開発で主に利用されます。 |
学習難易度 |
JavaScriptは動的型付け言語であり、変数の型を 明示的に宣言する必要がありません。 一方、Javaは静的型付け言語であり、 変数の型を厳密に定義する必要があるため、 初学者にとっては学習のハードルが高いと感じるかもしれません。 |
JavaScriptとPythonの違い
文法 |
Pythonはインデント(字下げ)によって ブロックを表現する厳格な文法を持ち、 非常に読みやすいコードが書けることで知られています。 JavaScriptは波括弧({})でブロックを表現します。 |
得意な 分野・用途 |
JavaScriptはWeb開発、特にフロントエンド開発で 圧倒的なシェアを誇ります。 PythonはAI・機械学習、データ分析、自動化スクリプトなど、 Web開発以外の分野でも広く使われています。 |
学習難易度 |
どちらも初心者向けの言語として人気がありますが、 文法のシンプルさからPythonの方が初学者にとって 学びやすいといった声もあります。 |
JavaScriptとRubyの違い
文法 |
Rubyはプログラマーが楽しく書けることを重視した、 非常に柔軟で直感的な文法を持ちます。 JavaScriptはWebブラウザという制約の中で進化してきたため、 Rubyとは異なる文法体系を持っています。 |
フレームワーク |
RubyはWebフレームワークの「Ruby on Rails」と セットで使われることが多く、短期間でWebサービスを 開発できるのが強みです。 JavaScriptのフレームワーク(Reactなど)は、 よりコンポーネント指向で、UIの構築に特化しています。 |
得意な 分野・用途 |
RubyはWebアプリケーション開発、 特にスタートアップ企業でのWebサービス開発で人気があります。 JavaScriptはWebのフロントエンドからサーバーサイドまで、 より幅広いWeb関連の分野で使われます。 |
学習難易度 |
Rubyは楽しくプログラミングの基礎を固めたい方に 向いている言語ですが、Web開発の現場で広く使われる 実践的なスキルを身につけたい場合はJavaScriptが適しています。 |
JavaScriptとPHPの違い
文法 |
PHPの文法はC言語やJavaの影響を強く受けており、 変数名の先頭には$を付け、文の終わりには セミコロン(;)を記述するのが一般的です。 JavaScriptも文の終わりにセミコロンを使いますが、 変数宣言にはvar、let、constなどを用います。 |
実行環境 |
PHPは主にWebサーバー上で動作する サーバーサイドスクリプト言語です。 コードはHTMLに埋め込まれることが多く、 サーバー側で処理されてから、結果として生成された HTMLがブラウザに送られます。 一方、JavaScriptの主な実行環境はブラウザです。 |
得意な 分野・用途 |
PHPもJavaScriptもWeb開発で広く使われる言語です。 PHPはWebサイトのバックエンド開発に特化した言語であり、 WordPressのようなCMSの基盤として広く利用されています。 JavaScriptはフロントエンドからバックエンドまで 両方をカバーできます。 |
学習難易度 |
どちらも学習しやすい言語として知られており、 比較的短期間でWebサイトの動的な部分を開発できます。 用途や目的によって使い分ける、もしくは 両方を習得することでキャリアアップを目指すことが可能です。 |
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最新アップデートは?JavaScriptのバージョン・ブラウザ対応情報
前述のように、JavaScriptはECMAScriptという仕様のもと、毎年新しい仕様が策定され、進化を続けています。ECMAScriptはバージョン番号で管理されており、最新版は毎年6月にリリースされています。
主要なECMAScriptのバージョン
ECMAScript 2015(ES6) |
let/const、アロー関数、クラス構文など、 多くの新機能が追加され、現在のモダンな JavaScriptの基礎を築きました。 |
ECMAScript 2020(ES11) |
Optional Chaining (?.)やNullish Coalescing (??)など、 より簡潔なコードを書くための機能が追加されました。 |
ECMAScript 2022 (ES13) |
at()メソッドやトップレベルawaitなど、 実用的な機能が追加されています。 |
ブラウザ対応情報
新しいECMAScriptの機能が策定されても、すべてのWebブラウザがすぐにその機能に対応するわけではありません。開発者は、新しい機能を使いたい場合、その機能が主要なブラウザ(Chrome、Firefox、Safari、Edgeなど)でサポートされているかを確認する必要があります。
この確認には、「Can I use...」というWebサービスが非常に便利です。このサービスでは、特定のWeb技術やJavaScriptの機能が、どのブラウザのどのバージョンでサポートされているかを一目で確認できます。
また、新しい機能がまだサポートされていないブラウザ向けに、Babelのようなトランスパイラ(Transpiler)を使うのが一般的です。トランスパイラは、最新のJavaScriptコードを、古いブラウザでも動作する旧バージョンのコードに自動的に変換してくれます。これにより、開発者は常に最新のJavaScriptで開発を行いながら、ユーザーの環境に依存しない安定したサービスを提供できます。
JavaScriptの基礎や応用、最新情報を得るならCodeZineで
JavaScriptは進化し続ける言語の一つで、プログラミングの世界でも活気があるコミュニティが世界中に多く存在しています。また、Web開発を中心にその活用の幅や可能性は無限大です。
CodeZineでは、JavaScriptの基礎から応用、そして最新のフレームワークや開発手法に関する記事を日々発信しています。JavaScriptをこれから学びたい方から、さらにスキルを磨きたい中級者、そして最新情報をキャッチアップしたいプロのエンジニアまで、あなたの学習やキャリアをサポートする記事がきっと見つかります。
ぜひ、CodeZineの記事や書籍を参考に、JavaScriptの奥深い世界を探求してみてください。あなたの「なりたい」キャリアを、JavaScriptという強力なツールで実現していきましょう。