ビジュアルプログラミングで複雑さを抽象化「Postman Flows」
これまで述べてきたような従来の開発ワークフローの課題に対して、草薙氏は「もっとシンプルにしたい」と話す。Postmanが目指しているのは「AIによるコード開発支援を超えて、完全に統合された一体感のある(イマーシブな)体験」だ。これを実現するために、ビジュアルプログラミング(ローコード)とAIで、新規参入する開発者の障壁を取り除いていく。例えばAIプロンプト、API利用に加えて、データ変換の複雑さを抽象化したり、直感的なビジュアルフローでロジックを表現または実行したり、さらにデバッグ、反復、コラボレーションをスムーズかつ明確にしていくというアプローチで臨む。
そのための仕組みがPostman Flowsだ。Postmanの画面左端にある「Flows」メニューを選ぶことで利用できる。ビジュアルなキャンバスにロジックのブロックを配置することでアプリケーションのワークフローを表現していくので、ホワイトボードにアイデアを描くようにアプリケーションを構築できる。画面でデザインするだけではなく、その場で実行して結果を見ることもできる。
Postman Flowsのビジュアルプログラミングは背後の複雑さを抽象化し、アーキテクチャ、アプリケーション、ソリューションを総合的に組み合わせることができているのも大きな特徴だ。
最もシンプルな例が下図のフローだ。「Postmanは何ができますか?」という問いをClaudeに聞いて、その回答を表示するという流れになる。画面左端(ピンク)に入力するパラメーターがあり、中央(緑)の「Send Request」はAPI呼び出しのブロックである。これは、実際にはClaude(AI)にプロンプトを送信するAPIコールになっている。その応答は緑のブロックの右端から出て、一部を取り出した上でテキストとして表示している。
複雑な部分をカプセル化するために使うのがモジュールだ。フローをモジュラー型にすることで再利用を促進し、保守負担を軽減できて、関係者が理解を深めやすくなるというメリットがある。例えばインシデント対応でサポートチケットを処理するフローがあるとする(下図)。左端(緑)は顧客の問い合わせを取得し、中央(青)は問い合わせの分析処理フローをカプセル化したブロック「Analyze Customer Inquiry」で、右端(ピンク)は青の出力をSlackに送るというシンプルな流れにしている。
Postman Flowsは、「スナップショット」という軽量のバージョン管理システムを備えている。現状で動いているフローを壊さないように、変更をしたら別のバージョンとして保存しておくことができる。またスナップショットがキャプチャするのはコードだけではなく、パラメーターや入力値の組み合わせとなる「シナリオ」もキャプチャできる。シナリオは、テストやデバッグだけではなく、デモにも使える。アプリケーションのドキュメントを見てもらうよりも、百聞は一見にしかずで、シナリオを使ったフローの動きを見せたほうが分かりやすいかもしれない。
処理フローの設計だけではない。Postman Flowsはアプリケーションの実行や運用も統合したソリューションとなっている。フローをPostmanクラウド上にデプロイして、Postmanアプリでパフォーマンスを監視することも可能だ。フローがローカルでうまく動くことを確認できたら、「Deploy」ボタンを押すとクラウドにデプロイされ、そのフローにURLが割り当てられる。
このように、Postman Flowsは従来の開発ワークフローの複雑さを払拭したローコードビジュアルプログラミングプラットフォームとなっている。草薙氏は「開発者体験をもっとシンプルにすることが未来の鍵だと考えています」と話す。サンプルとして、Slackのスレッドに埋もれたバグ報告や問題を整理してJiraのチケットに落とし込む「Slack-to-Jira チケット作成エージェント」、インシデント対応の調整と文書化を支援する「インシデント管理エージェント」が紹介された。Postman Flowsを使いこなすヒントになりそうだ。
最後に草薙氏は「ぜひPostmanをダウンロードしてPostman Flowsテンプレートもお試しください。お試しは無料です。便利だなと思っていただけたら幸いです。無料のワークショップやAPI Nightといったイベントも開催しています」と呼びかけて講演を締めた。
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