アプリがクルマに搭載される時代!Hondaの新たな価値提供
ではHondaではどんな協創をしているのか。Hondaの協創の歴史について紹介したのは、高橋氏と同じくナビやコネクテッド機能の開発に携わる川口健志氏である。川口氏も2024年にHondaに中途入社。前職でも、IVIのソフトやカーナビ、音響設計などに携わっていたという。
「Hondaはこれまで多種多様な企業とコラボレーションしてきました」と川口氏は言う。その一例として最初に紹介されたのが、金融業界とタッグを組んで車載機器を決済端末にした事例。2017年1月には、米国最大のテクノロジー見本市「CES(Consumer Electronics Show)」で、In-Vehicle Payment(車載決済)のデモを実施したという。
またドワンゴとは、車速や走行距離などの情報に応じて、初音ミクがドライバーに語りかけるスマートフォンアプリ「osoba」を開発。最近の話題として紹介してくれたのが、伝説のポケモン「コライドン」を、Hondaの技術力でリアルなモビリティとして再現した事例。「これはビジネスではなく、夢を原動力に、人や社会に喜びを提供するという理念を体現した活動です」(川口氏)
IVI領域での企業コラボレーションは、2010年代前半から車載IVIのOSとしてAndroidの検討を開始したことから本格化した。2016年にはスマートフォンの機能を車で使うため、Apple CarPlayやAndroid Autoを搭載。2019年にはシリコンバレーのAIアシスタントベンチャーと協業して「Hondaパーソナルアシスタント」を商品化している。さらに2021年には、Amazonと協業し、Amazon Alexa Built-inを、直近ではGoogleとのコラボにより、Google Automotive Services(GAS)を搭載している。「このようにIVI領域でも最新技術を取り入れ、日々、進化させています」(川口氏)
今後、どのような企業コラボレーションが行われていくのか。「今は100年に一度の大変革期。技術動向、顧客ニーズがめまぐるしく変化しているので、先を読むことはできません」と川口氏。こういう時代に大事になってくるのは、スピーディーに市場に投入し、フィードバックをもらうこと。「これを実現するには、規模や業態にこだわることなく、自由な発想のスピード感あるコラボレーションが必要だとHondaは考えているのです」(川口氏)
その具体的な取り組み例の1つが「Honda Android Automotive OS Emulator」の公開である。これにより企業だけではなく、個人でも、誰もが車載環境上で動作するアプリを自由に開発、テストできるように整備したという。
もう一つの取り組みが、IVIにGoogle Playを搭載したこと。これによりHonda車のIVIは、Google Playを通じてサードパーティ製アプリケーションを車内に直接、導入できるようになる。つまり車両購入後もアプリの配信という形で新しい価値を提供し続けることができるわけだ。
「Hondaのプラットフォーム上で、ともにイノベーションを起こす仲間を広く募集する。そして新しいクルマの価値を一緒に作っていきたいというのがHondaの想いです」(川口氏)

