「ROIは出ない」それでも現場のモダナイゼーションを断行する理由
セッションの後半、日本アイ・ビー・エムの金元隆志氏、本山英典氏、日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリングの田口智大氏を交えたパネルディスカッションでは、開発環境のモダナイゼーションを進めるモチベーションについて議論が交わされた。鈴木氏は「人材確保が最優先である」と即答している。メインフレームエンジニアの市場は年々縮小しており、古いツールのままでは若手エンジニアに興味を持たれないという危機感があるからだ。
投資対効果(ROI)について問われると、鈴木氏は「短期的には数字として表れにくい」と認めた上で、将来にわたってシステムを維持・発展させるためには不可欠な投資であると語った。現場の反応としては、従来のやり方に慣れたシニアエンジニアからは戸惑いの声もある一方、若手エンジニアにとってはVS CodeやGitといったツールへの親和性が高く、導入の意義は大きいという。
最後に鈴木氏は「ビッグバン的にシステムを一気に変更するハードルは高いが、できるところから変えていくことが重要」と振り返り、セッションを終了した。本事例は、大規模なレガシーシステムを持つ組織が技術的負債といかに向き合い、次世代の開発環境へと移行するかを示す一つのモデルケースとして、多くの示唆を含んでいる。
