電卓からジョークソフトへ ~ 予測とずれ
さて、ジョーク系のWebサービスの基本的な構造とはどういったものでしょうか? このようなサービスの多くは、最初のページに入力欄と実行ボタンがあります。実行ボタンを押すと次のページに遷移し、最初の入力欄に対応した結果が表示されるという仕組みになっていると思います。
これは「電卓」のインターフェースと全く同じです。電卓では、数字を入力してイコール・ボタンを押せば計算結果が表示されます。しかし「電卓」の結果を見ても誰も笑いません。一方、人気のジョーク系Webサービスではくすりと笑わされます。この差はいったい何なのでしょうか?
では、まずは、なぜ電卓で誰も笑わないのかを考えてみたいと思います。電卓で誰も笑わないのは、ユーザーにとって予想通りの結果が表示されるからです。ユーザーは「電卓」という道具を見て「計算結果を返してくれる」と予想します。実際に数字を入力してボタンを押すと計算結果が表示されます。これは予測した通りの結果です。過剰な期待もありません。ここに「笑い」の要素はありません。
次に、この電卓を基に“ジョーク電卓ソフト”とでも言うべきものを考えてみたいと思います。そのための仕掛けとして「予測が裏切られた時の笑い」を使うことにします。例えば「1+1」と入力したとします。イコール・ボタンを押すと「2……かな?」と出力されれば、「おいおい、自信がないのかよ!?」と突っ込みを入れながら笑うかもしれません。このように、予測を裏切ることで、笑いの要素を付け加えることができるわけです。
さて、ここで重要なポイントがあります。予測と違う結果を返すとは言っても、それが何でもよいというわけではないことです。以下、「予測と違う結果=ずれ」の種類について考えていこうと思います。
「ずれ」の種類
「ずれ」の種類として、3つの情報の種類を考えてみたいと思います。
ランダムな情報
まず、最も簡単で、ある程度の効果がある方法は、無秩序な情報を返すことです。いわゆる「ランダム」と呼ばれている方法です。国語辞典を適当に引き、最初に書いてある単語を返すような方法です。これでもある程度の「笑い」を誘うことができます。しかし「笑い」の質は低いといえるでしょう。
同じ文脈内の違う情報
次に紹介する方法は、「同じ認知カテゴリーの違う情報」を返す方法です。例えば果物屋で買い物しているところを思い浮かべてください。店主に「メロンを下さい」と言ったところ「あいよっ!」とバナナを渡されたとしたらどうでしょうか。きっと「ちょっと、バナナじゃないですよ」とツッコミを入れることでしょう。
「同じカテゴリー内の他の物と間違う」という方法はベタな方法ですが、笑いを誘いやすい手法でもあります。これと同系列の「ずれ」には、言い間違いや駄洒落、それと駄菓子屋のおばさんが「はい、100万円」などと誇張して言う方法も含まれます。
違う文脈の情報
さらに高度な方法があります。「違う文脈の情報」を返す方法です。例えば「明日は大事な取り引きだからきちんとした格好をしてこい」と言われた会社の部下が「分かりました」と答え、翌日に羽織袴で馬に乗って颯爽と現れたとしましょう。上司に「いつの時代の正装だ!」と怒られることでしょう。これは「文脈のずれ」を使った笑いです。
「違う文脈の笑い」は漫才などでよく使われます。ボケとツッコミの人で違う文脈の話をし、観客は分かってるのに、漫才をしている人たちは気付かない振りをして演じ続け、気付いた時点で観客全員が大笑いするといったものです。これは「ずれ」に気付いた時点で笑いが始まり、ボケとツッコミが気付いた時点でこらえていた笑いを解放するといった仕掛けになっています。
この「違う文脈の笑い」には、もっと高度な使い方があります。「なぜずれたのかを予測させる」といった使い方です。ユーザーが「なぜずれたのか」を想像できるようにしておけば、「ずれた理由が分かった!」とユーザーが思った瞬間、その「笑い」はそのユーザーに優越感を与えます。そして、そのユーザーはその「笑い」を「自分の笑い」だと認識するようになります。こうなればしめたもの。その人は他人に「自分の笑い」を紹介したくなります。
「ずれ」が引き起こす「笑い」を意識した企画作り
このように、「笑い」を起こすための「ずれ」にも色々と種類があると考えられます。筆者がジョーク系のWebサービスを作る際は、これらの種類の違う「笑い」を上手く利用することを心掛けています。ただ結果を表示するだけでは笑いは取れません。まず最初に予測をさせて、それに対して「ずれ」を狙って作ることで「笑い」は生み出されていくと筆者は考えています。
大切なことは完成形のイメージを明確に持っておくことだと思います。プログラムを書く前に、「正しい結果」「ずれた結果」というダミーのWebページを2つ作ってみると分かりやすいです。それで笑えなければどんなにプログラムを書いても無駄になります。それは面白いWebサービスにはなりません。プログラムを書く前に「笑い」の部分を考えておく必要があります。
それでは続いて、「オートペディア」の企画と開発について書いていきます。



