オートペディアの内部構造 ~ 3つのレイヤー
「オートペディア」のプログラムは3つの層に分かれています。それぞれに名前を付けるとすれば、「インターフェース層」「データ加工層」「データ取得層」となります。
この内「データ加工層」と「データ取得層」はプログラミングの領域になります。この部分については本記事の最後にまとめて話をします。対して「インターフェース層」は企画の領域です。ユーザーにどういった「予測」をさせ、どういった「ずれ」を体験させるかといった設計を行うことが中心になります。
ジョーク系Webサービスで最も重要なのは「インターフェース層」の設計です。内部がどう動いているかという点は、ユーザーにとっては一切関係ありません。面白いサービスを作るためには「インターフェース層」での適切な企画が不可欠です。
では、「オートペディア」での「笑い」の設計について紹介します。
オートペディアの笑いの設計
マーケティング
「笑い」の設計で最も大切なことは、ユーザーがどういったことを望んでいるのか、そして知っているのか、またどういった考え方をするのかを知ることです。
よく「お笑い芸人や、ギャグマンガ家は、頭がよくなければつとまらない」と言われます。それは、相手がどういったことを知っているのかを事前に知り、どの範囲の「ずれ」なら認識できるかを見抜き、さらに予想外の文脈での「ずれ」を発見して提供する必要があるからです。つまり、知識が不足していたり、先読みができなかったり、人間観察ができない人は「笑い」を作れないということです。
そういった個人の資質による部分を機械的に解決するための方法がマーケティングです。特殊な才能を持っていなくても、きちんと事前調査をすることで、ユーザーが何を望んでいるか、そして何を考えているのかを知ることができます。これらの情報の有無によって出来上がる「笑い」の設計は全く変わってきます。事前調査は非常に大切です。
私は「オートぺディア」に先立って、「全自動4コマ」をリリースしていました。公開後はブログなどでの感想を積極的に閲覧して、ユーザーがどういった事を考えているのかを調査し続けました。その結果、私の当初の考えとは違ったところにユーザーの望みがあるようだと思い至りました。
「ユーザは、自分(の名前)に対して何かを返して欲しがっている」
つまり、ユーザーがジョーク系のWebサービスに求めているのは、自分に対して何かを語ってもらうことのようでした。これは先行者である「脳内メーカー」の影響が大きいと感じました。私は「色々な言葉を入力して遊ぶ」という使い方を想定していましたが、ユーザーは「自分の名前を入力して喜ぶ」という遊び方を望んでいたのです。身近な人や物の名前を入力すると思っていた私の当初の予測は間違っていたことが分かりました。
インターフェースの設計
さて、マーケティングの結果を踏まえると「自分の名前を入力することで、どんな結果が返ってくるのかを予測させ、その結果からずれた答えを返す」という設計を行うことになります。
しかし、それだけでは私が面白くありません。なぜなら、それは新しい遊びの提案ではないからです。入り口は「ユーザーの名前」にしておくにしても、そこからさらに踏み込んで遊ぶ要素を用意しておきたいものです。「よいサービス」とは、「よい意味での裏切り」を持っているサービスです。
そこで、最初のページには、「名前の入力欄」と「それ以外の入力欄」を設けることに決めました。ユーザーの望む遊び方の提供と、さらに踏み込んだ遊び方となる設計者側からの遊びの提案を用意することにしたのです。

さて次です。「笑い」には「予測」が必要です。実行ボタンを押す前に、結果を想像させる必要があります。そこで、どんな予測をさせればよいか考えました。今回は「ボトムアップ」系の企画です。そして、その用いる技術はある程度長い文章を返すという前提があります。
これらを考慮した結果、「長い文章が返されることが分かっている」「文章が入力語に対する説明になっている」という特徴をもつWikipediaの構造と知名度が有効だという結論に至りました。そして、Wikipediaによく似ていながら、内容がずれていれば「笑い」になるだろう、という目処が立ちました。
こうして「予測」「予測から想定される結果」「予測からずれた結果」の内、前者2つが決まりました。最後は、「予測からずれた結果」を作り込んでいけば企画は完成です。
予測からずれた結果の企画
「オートペディア」は、ネットから検索してきた情報とランダムな情報が混在しているように見えます。ものすごく適当に混ぜ合わせているように見えますが、見た人の多くは笑いを誘われます。それは、表示させる情報の位置と内容を細かく企画段階で設計しているからです。
「オートペディア」の出力結果は長文です。この長い文章を全て無秩序に作っていたら、笑うどころか単なる意味不明の内容になってしまいます。
情報の表示順でひと工夫
そこで、表示位置が上の方から順番に、以下のように情報を表示させるようにしました。
- 「プログラム内のデータ」を基に、「職業」などを表示
- 「ネットの検索結果」を基に、「分野」や「生涯」を表示
- 「プログラム内のデータ」を基に、「年譜」を表示
- 「ネットの検索結果」を基に、各分野での詳細情報を表示
- 「ネットの検索結果」を基に、関連語のリンクを表示
実は、この順番が非常に重要なのです。なぜならば、「プログラム内のデータ」を使う方法と「ネットの検索結果」を使う方法では、その出力結果の性質が違うからです。
「プログラム内のデータ」を使う方法では、出力結果を一定の範囲で決められます。これは作り手の予想外の結果が出ないことを意味しています。予想の斜め上を行くことはできないけれども、確実に笑わせる情報を仕込むことができることを意味します。
対して「ネットの検索結果」を使う方法では、ユーザーが入力した言葉によって、どんな結果が返ってくるのか分かりません。これは時にものすごいドンピシャの検索結果を得られることもありますが、全く意味不明の結果になることもあります。ホームランになる可能性も高いけれど空振りになる可能性も高い。つまり、ハイリスク・ハイリターンの方法になるわけです。
- 情報が一定
- 確実に笑わせられる
- 意外性が少ない
- 情報が多様
- いつも笑わせられるとは限らない
- 意外性のある結果が時に返る
出力内容のバランス
そこで「オートペディア」では、まずジャブとして「プログラム内のデータ」を使って「職業」などの基本情報を表示して確実に笑いを取りにいきます。ここは「つかみ」の場所になります。次に「ネットの検索結果」を使って強打を狙います。しかし、これはリスクの高い方法なので失敗する可能性もあります。そこで、失敗した時の保険としてある程度のボリュームのある「年譜」を「プログラム内のデータ」から選んで返すようにしています。
この「プログラム内のデータ」は当然ながら確実に笑わせることを前提とした精鋭揃いのデータたちです。全てのデータを、「どれぐらい面白くなるか」といった評価基準でふるいに掛け、「これなら笑える」と思えた項目だけを厳選してデータに収録しています。例えば「年譜」に関しては、1900年以降の全ての事件の年表を見て、その事件を元に「笑い」の企画を仕込んだデータを1つずつ作成しています。これらの「プログラム内のデータ」には、かなりの手間が掛かっています。
一方、検索した結果はある程度失敗しますが、この失敗も積極的に活用しています。そしてこの不完全性が「ずれ」として「笑い」に転化されるようにしています。
このように「オートペディア」では、リスクをおさえて確実に「笑い」を取りに行く戦術と、ハイリスク・ハイリターンの「笑い」を取りに行く戦術を織り交ぜて結果ページの設計を行っています。
文章だけではなく画像も重要
また、文章だけではユーザーに対する情報負荷が高くなってしまうので、目を休める意味で関連した画像も表示するようにしています。もちろんこの画像でも「笑い」を取りにいっています。
画像を取得する際、日本語で検索して得たキーワードを元にそのまま画像を検索してしまうと、そのままズバリの画像が出てきてしまいます。そこで、いったん英語に翻訳して画像を検索するようにしています。
こうすることによって日本人の考える結果と微妙にずれた画像が検索される可能性が高くなります。このように「オートペディア」では、画像も笑いの要素として活用しています。
