基幹データベースとの接続で広がるFileMakerのメリット
3つ目のトラックは、株式会社キー・プランニング木下雄一朗氏「基幹系データベースとの連携による FileMaker の新しい活用方法」として、FileMaker 9より搭載されたESS(External SQL Data Source)の機能の解説だ。この機能をまず「RDB(リレーショナルデータベース)などの外部のデータソースを“FileMaker上のデータのように”扱う機能」と説明し、機能を使用するための手順をデモとともに示した。そして、FileMakerの中で、MySQLのデータベースをレイアウトや一覧表示、そして集計等ができることが示された。FileMakerには柔軟性、即時性、使い勝手の良さといったメリットがある一方、RDBではミッションクリティカル、スケーラブル、汎用性といった利点がある。木下氏はESSによりこの両社のメリットをどちらも使えることになる点が強調した。そして、集計処理などがデモされた。
このセッションの内容はFileMaker社からのものも含めてあまり多くの情報がないのが現状であり、実際にソリューション構築をした経験からのさまざまなノウハウが紹介された点ではタイムリーなセッションである。ODBCのDNSは「システムDNS」でなければならないことや、Mac版は Actual Technologyのドライバを使わないといけないといった基本的な情報に加え、実際のアクセスでのキーフィールドの扱いも詳細に紹介された。 FileMaker側でRDBのテーブルを扱う時、キーフィールドの指定が必要になる。検索等を行うと、該当するレコードのキーフィールドの値をまず取り出し、そしてデータを全部取り込むことが説明された。つまり、集計や並べ替え自体はFileMaker側で行っており、ここで大量のデータのやり取りがあると時間がかかることが実際にデモとして示された。集計はRDB側にビューを定義することで高速にできるもののの、RDB側の管理権限が必要でありSQL の知識が必要であることも解説された。また、索引をRDB側にしっかり作っておくことや、多対多のリレーションが機能しないこと、使えない関数があること、更新のタイムラグやロックの動作が違うことなども注意点として示された。こうした注意点に気をつけていれば、FileMakerとRDBの両方のメリットを享受できるESSを利用したシステムに大きな可能性があることを印象づけたセッションであった。
日本にはなかった「メインイベント」の皮切りになったか?
オープニングセッションでFileMakerの方向性が示され、ソリューショントラックやテクニカルトラックのセッションで、現場に近い具体的な情報が提供されることになり、FileMakerのユーザを取り巻く状況が1日にパッケージされたイベントになったと言えるだろう。「クロージングセッション」として最後に懇親会が開催され、ドミニーク・グピール社長を始めFileMaker社のスタッフとユーザや開発者たちが交流を深めることができた。米国では毎年「FileMaker Developer Conference」が開催されている一方で日本ではマイルストーンとなるイベントが今まではなかった。これを機会に、FileMakerの浸透とユーザや開発者の交流促進も含めて、定例化することが期待される。