ケースクラス
最後に、ケースクラスについて解説します。
ケースクラスを一言で説明するならば「パターンマッチで利用できる、変更不可能なクラスを定義するための仕組み」と言えるでしょう。「変更不可能なデータ構造」とは、初期化した時点で与えたデータを後から変更できないようなデータ構造です。リスト7などで定義したBookmarkクラスは、コンストラクタ引数で与えたデータはすべてvalキーワードが付与されているので、後から変更することはできません。よって、Bookmarkクラスは変更不可能(immutable)なクラスと言えます。
class Bookmark ( val title:String, val url:URL, val date:Date )
scala> val bookmark = new Bookmark("今から始めるScala 前編",new URL("http://codezine.jp/article/detail/5193") ,new Date)
bookmark: Bookmark = Bookmark@6784780b
scala> bookmark.title = "今から始めるScala 後編"
<console>:18: error: reassignment to val
bookmark.title = "今から始めるScala 後編"
ケースクラスとしてクラスとを定義すると、このような変更不可能なクラスとして定義されるだけではなく、さまざまな特徴を得ることができます。Bookmarkクラスをケースクラスとして宣言してみます。
case class Bookmark ( title:String, url:URL, date:Date ) extends JpDateFormatter with URLSourceLoader
object Bookmark {
// ケースクラスにすることでこのファクトリメソッドは自動生成されるためコメントアウト
// Bookmarkクラスを生成する
//def apply( title:String, url:URL, date:Date ) =
// new Bookmark( title, url , new Date )
// 文字列のurlからBookmarkクラスを生成する
def apply( title:String, url:String, date:Date ):Bookmark =
Bookmark( title, new URL( url ), new Date )
// dateを省略し、文字列のurlからBookmarkクラスを生成する
def apply( title:String, url:String ):Bookmark =
Bookmark( title,new URL( url ),new Date )
}
caseキーワードを付与してクラスを宣言することで、そのクラスはケースクラスとなります。
前編でも書きましたが、ケースクラスとしてクラスを宣言することで、次のようなことが可能となります。
- newキーワードなしでBookmark("title",new URL("http://example.com", new Date)のようにオブジェクトを生成できる
- コンストラクタ引数が自動的に読み取り専用で公開される
- equals,hashCode,toStringが適切に実装される
- パターンマッチのコンストラクタパターンで使えるようになる
ケースクラスとすることで、Scalaのコンパイラは自動的にコンパニオンオブジェクトを生成し、ケースクラスのコンストラクタと同じシグニチャのapplyメソッドをコンパニオンに定義します。これにより、newキーワードなしでケースクラスのインスタンスを生成できます。今までBookmarkコンパニオンオブジェクトに定義していたことを自動的に生成してくれるというわけです。
他にも、コンストラクタ引数はvalが付与されているものとして扱われますので、読み取り専用で公開されますし、toStringが人間に読みやすいようになります。
scala> object m {
| case class Bookmark ( title:String, url:URL, date:Date ) extends JpDateFormatter with URLSourceLoader
|
| object Bookmark {
// ...省略
| }
| }
defined module m
scala> val bookmark1 = m.Bookmark("今から始めるScala 前編",new URL("http://codezine.jp/article/detail/5193") ,new Date)
bookmark1: m.Bookmark = Bookmark(今から始めるScala 前編,http://codezine.jp/article/detail/5193,Sat Jun 19 15:03:30 JST 2010)
scala> bookmark1.toString
res1: String = Bookmark(今から始めるScala 前編,http://codezine.jp/article/detail/5193,Sat Jun 19 15:03:30 JST 2010)
このように、ケースクラスとすることでimmutableなクラスを簡単に定義することができます。Scalaは「変更不可能(immutable)なデータ構造は予期せぬバグを防ぎ、プログラムを簡潔にする」という思想を持っています。
ケースクラスはパターンマッチにも利用できますし、積極的に活用するのがScala的なプログラミングと言えるでしょう。
まとめ
全3回で連載してきた「これから始めるScala」シリーズですが、今回で最終回となります。
今回は、Scalaのオブジェクト指向プログラミングのサポートについて概要を説明しましたが、他にもまだまだ説明していない機能があります。
例えば、暗黙の型変換を行うimplict conversionや型安全なダックタイピングをサポートするstructual subtypingなどです。興味がある方は、参考文献をご覧ください。
Scalaは、さまざまな言語から特徴を取り入れた、モダンでハイブリッドなプログラミング言語です。これまでのプログラミング言語から、新しいパラダイムのプログラミングを可能とするScalaに、ぜひ皆さんも取り組んでみてください。
参考資料
- The Scala Programing Language
- 『Programming in Scala』 Martin Odersky・Lex Spoon・Bill Venners 著、Artima Inc、2008年11月
- 『Scalaスケーラブルプログラミング』 Martin Odersky・Lex Spoon・Bill Venners 著、羽生田栄一 監修、長尾 高弘 訳、インプレスジャパン、2009年8月
- 『Scalaプログラミング入門』 David Pollak 著、大塚庸史 訳、羽生田栄一解説、日経BP社、2010年3月
- Welcome to Scala hack-a-thon #1’s documentation!
