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iOSに対応したFileMakerは「第3のiOS開発環境」

iPhone、iPad、iPod touch上で稼働するiOS 4向け「FileMaker Go」

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iOS開発環境としてのFileMaker Go

 FileMakerは「誰でも簡単にデータベース構築を」というコンセプトにより、簡単であることばかりが注目されていますが、製品として注目すべきなのは、単体で販売されているアプリケーションだけで業務システムが構築できる点です。FileMaker Proはもちろん、FileMaker Serverの存在により、ネットワークでのデータベース共有やWebブラウザ経由でのデータベース利用が可能なことが、システム構築への道筋を付けています。つまり、FileMakerは製品群によって「開発環境」を形成しているのです。

 FileMaker Goにより、FileMaker向けのデータベースが利用できることだけでなく、iOS搭載デバイス向けの開発ができるという点が実は大きなポイントです。iOSで稼働するネイティブアプリケーションは、Mac上でiOS SDK(Xcode/Interface Builder/iPhoneシミュレータなど)を使って開発する以外に手だてはありません(Jailbreakは除外するとして)。Webアプリケーションとなると、iOS SDKのDashcodeはあるのですが、「Titanium」やVisual Studioで稼働する「ComponentOne Studio for iPhone」などもあり、さすがにオープンスタンダードをベースにしているだけにいろいろな開発手法が登場し始めています。

 一方で、Adobe Systemsは、FlashをベースにしたアプリケーションをiOS搭載デバイス向けに稼働できるようなツールを開発し、iOS搭載デバイス向けの有力な開発ツールとしてFlashをプッシュしようとしました。しかし、Appleはそれを規約で縛るという手法で封じ込め、さらにはスティーブジョブズ氏の書簡によって、ほとんどの人に「FlashはiOS搭載デバイス向きではない」と思わせたのです。結果的にAdobe Systemsは、FlashのターゲットをAndroidへシフトすると同時に、iOS搭載デバイスへの展開は中止せざるを得なくなってしまいました。

FileMakerソリューションにiOS搭載デバイスを取り込む

 いずれにしても、ネイティブ、Webアプリに続く第3の開発環境としては「Flash」と言えそうなところまできたものの、脱落させられました。そして、その後に登場したFileMaker Goはまさに「第3」の地位を今得ようとしています。FileMakerの1つの側面は「アプリケーション開発環境」なのです。PC/Macで開発して、FileMaker Goで動かすことができるという点から、新しいiOS搭載デバイス開発環境であるというポジションが見えてくるわけです。ただ、iOS搭載デバイスでの開発となると、現在は電子ブックやゲームと行った市場がにぎわっていますが、FileMaker Goのポジションはそうしたアプリケーションやコンテンツの代わりになるものではありません。むしろ、システム開発の世界に大きなインパクトを与えるものとなります。ゲームや書籍が脚光を浴びる一方で、従来から行われている企業内の特定業務をシステム化するといった場合においても、iOS搭載デバイスは大きなトレンドとなりつつあります。携帯性、コスト、そしてシステム開発可能な柔軟性から、システム開発への適用を多くの人が考えるのは説明の必要もないでしょう。

 これまで、FileMakerのソリューションにiOS搭載デバイスを組み込むとなると、FMTouchを使うか、あるいはWebベースでの対応ということになっていました。しかし、FileMaker Goは、PC/Macでやってきたのと同じように、FileMakerのデータベースファイルをiOS搭載デバイスに転送するだけで、システム利用ができるのです。結果的に多くの部分を、FileMakerの流儀で構築をしてしまうことができるわけです。また、PC/Macで使っていたソリューションをそのまま、あるいは少しの手直しでiOS搭載デバイスへの展開が可能な点も注目できるところでしょう。

iPad版のFileMaker Go。左はデバイスにあるファイル、右側はサーバに接続したファイルが履歴として残る
iPad版のFileMaker Go。左はデバイスにあるファイル、右側はサーバに接続したファイルが履歴として残る
サーバにあるデータベースも選択して開くことができる
サーバにあるデータベースも選択して開くことができる
一部のスクリプトステップは稼働しないので、警告が出る
一部のスクリプトステップは稼働しないので、警告が出る

ランタイム版としてのFileMaker Go

 もちろん、FileMaker開発者はFileMaker Goに大きな期待を寄せると同時に、既に細かな違いや開発のポイントのチェックを始めているところです。CodeZineでもFileMakerの情報が定期的に掲載されており、その中で、ディテールについては紹介されると思われます。

 FileMaker Proは開発もシステム利用もできるものの、一部のユーザーや開発者は、多くの利用者が開発の機能を使っていないだけに、「ランタイム版」の発売を望んではいました。FileMaker Pro Advanceにより「ランタイムソリューション」の生成はできますが、これはネットワーク上のFileMaker Serverに接続の機能がないため、利用できる場面が限定されていました。しかし、FileMaker Goは、その意味ではFileMakerシリーズで初めての「利用だけのユーザー向きのランタイム版」と言えます。さっそく、FileMaker GoのWindows/Mac版が欲しいという声も出てはいますが、業務端末でも参照系が中心なら、iPad+FileMaker Goで十分にシステム適用ができるのではないかとも言えます。

 FileMaker Goは、FileMaker関係者だけでなく、iOS搭載デバイスに注目している人たちにとっても、新たな開発手段が提供されたという点では大きな意味のある製品です。これから作られるさまざまなソリューションで、FileMaker GoやiOS搭載デバイスがどんな使われ方をするのか、楽しみなところでもあります。

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この記事の著者

新居 雅行(ニイ マサユキ)

 テクニカルライター、デベロッパー、コンサルタントとして、Mac OS X、iPhone、FileMakerを中心に活動している。近著には「新 リレーションで極めるFileMaker」(共著/ラトルズ)、 「FileMaker Server大全」(ラトルズ)、「Mac OS Xシステム管理」(ラトルズ)、「iPhoneアプリケーションプログラミング」(技術評論社)がある。FileMaker 9 Certified Developer、Apple Certified System Administorator 10.6、Apple Certified Trainier 10.6、Microsoft Certified Trainer、Microsoft Certified Technology Specialist、Microsoft Certified Application Specialist。

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