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「Adobe MAX 2010」総力レポート(AD)

【Adobe Max 2010】会場で日本人参加者だけにいち早く伝えられた「Adobe AIR」最新動向

Adobe MAX 2010 総力レポート:「Adobe AIR 2.5」セッション

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 10月25日(米国時間)、「Adobe MAX 2010」でRIA技術の最新版「Adobe AIR 2.5」が発表された。同イベントに参加していた日本人向けに、Adobe AIRの製品担当者がAIRの現状、今後のロードマップについて紹介する特別セッションが行われた。

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 10月25日(米国時間)、Adobe MAX 2010の会場においてRIA技術の最新版「Adobe AIR 2.5」が発表された。これを受けて、同イベントに参加していた日本人向けに、Adobe AIR(以下、AIR)の製品担当者がAIRの現状、今後のロードマップについて紹介する特別セッションが行われた。その模様をお伝えする。

Adobe AIR for Androidのプロダクトマネージャ Michael Chou氏。以前はiPhone向けのAIR(Packager for iPhone)も担当していた
Adobe AIR for Androidのプロダクトマネージャ Michael Chou氏。以前はiPhone向けのAIR(Packager for iPhone)も担当していた

FlashとAIRの現況

 様々なデバイスにリッチなアプリケーションおよびコンテンツを配信するアドビの技術「Flash Platform」には「Flash」と「AIR」の2つの似た技術があるが、同社ではブラウザ内で動くものを「Flash」、それ以外のデスクトップやテレビ、モバイルで動くものをすべて「AIR」と呼んでいる。

 Flashは現行のほぼ全てのデスクトップPCに導入されている技術で、デスクトップPCへのインストール率は98%、Flashのデベロッパー数は300万人に上る。

圧倒的な普及率のFlash。流通数トップ20のスマートフォンにおいても、年内に95%の普及率を達成する予定(図右上)
圧倒的な普及率のFlash。流通数トップ20のスマートフォンにおいても、年内に95%の普及率を達成する予定(図右上)

 AIRについては定着が進みつつある段階と述べつつも、既に3億のランタイムインストール、250万のSDKインストールと、着実に一般化が進んでいることを示した。

Adobe AIR Marketplaceで既に840のAIR製アプリがリリースされている
Adobe AIR Marketplaceで既に840のAIR製アプリがリリースされている

 AIRのビジネス利用は、ワーナーやニューヨークタイムズといった大手マスメディアから、数人規模の開発会社まで幅広い範囲で行われている。小規模の開発会社に受け入れられている理由については、AIRで開発したアプリは他の環境で動かすことが容易なため、開発の効率が良いことを挙げている。

AIRを利用している企業
AIRを利用している企業

 また、Flashプラットフォームは、オープンソースやベータプログラムなど、オープンな体制で開発が進められている。

 同日リリースされた「AIR 2.5」はオープンベータとして開発が進められ、1万1千人のデベロッパーに評価されてクオリティが磨かれた。これはアドビのオープンベータの歴史上、最大のユーザー規模に当たる。デベロッパーの高い関心が伺える。

 今回初めてランタイムがAndroidに対応したが、リリース直後にもかかわらず、既に300以上のAIRアプリがAndroid Marketで公開されている。無料アプリと有料アプリの比率も良好なようだ。

リリースされ続けるAndroid向けのAIRアプリ
リリースされ続けるAndroid向けのAIRアプリ
Android Marketで公開されているAIRアプリの、無料(青:56%)対有料(緑:44%)の比較
Android Marketで公開されているAIRアプリの、無料(青:56%)対有料(緑:44%)の比較

FlashとAIRの機能の違い

 アドビでは、Flash Platformに含まれるFlashとAIRをほぼ同等に扱っているので、多くの機能が共通する。例えば、スクリーンの向き、タッチ・ジェスチャ、加速度といったセンサーや、パフォーマンスに関する機能、動画コンテンツのDRM(デジタル著作権管理)などはともに提供されている。

FlashとAIRで共通する機能は多い
FlashとAIRで共通する機能は多い

 AIR 2からは、USBなどの一時ストレージの接続、デフォルトでファイルを開くアプリの指定、P2Pによる軽いサーバーコネクションの利用などの機能が追加されていた。

AIR 2から追加された機能の一部
AIR 2から追加された機能の一部

 さらに、今回発表されたAIR 2.5では、デバイスのカメラ、マイク、位置情報、加速度センサー、マルチタッチなどモバイル向けの新機能が追加された。

「Hosted WebView」はブラウザのインスタンスを作ってAIRアプリの内部に埋め込み活用する機能
「Hosted WebView」はブラウザのインスタンスを作ってAIRアプリの内部に埋め込み活用する機能

一貫性を重視するより、パーツの再利用を考えた開発を

 よくデベロッパーは一度開発したらどこでも動く(つまりWrite once, run anywhere)が理想であると言う。しかし、本当にそんなことができるのだろうか。アドビでは、あまり現実的な選択肢ではないと考える。

 むしろ、一貫性を犠牲にしてでもパーツごとに再利用を考えた作り方をし、状況に応じて組み合わせる方が、デバイスごとに最適化したアプリを提供できるという考えだ。例えば、デスクトップPCに加速度センサーの機能があったり、テレビに印刷する機能がついていたりしても意味がない。

Write once, run anywhereは非現実的!?
Write once, run anywhereは非現実的!?

 具体的には「プロフィール」という概念を導入することで、デバイスごとの機能や性能が多少変わっても、似通ったものを大まかに分けたグループごとに、一貫性を守るようにする。

デスクトップ、モバイル、テレビといった大枠内で一貫性を保とうとする「プロフィール」の概念
デスクトップ、モバイル、テレビといった大枠内で一貫性を保とうとする「プロフィール」の概念

検討中の機能「ビデオ」「ゲーム」「エンタープライズアプリケーション」

 アドビでは新機能を追加する際、必ずどのようなビジネスを作り出すための機能かを追求する。実装がいつになるか分からないと前置きした上で、検討中の追加機能が紹介された。現在、最もサポートしたい分野は「ビデオ」「ゲーム」「エンタープライズアプリケーション」の3つだという。

「ビデオ」「ゲーム」「エンタープライズアプリケーション」をサポートするための機能拡張を検討している
「ビデオ」「ゲーム」「エンタープライズアプリケーション」をサポートするための機能拡張を検討している

 また、プロフィールごとの対象デバイスの拡充も検討しているという。特にモバイルではiOS、Android以外にも様々なデバイスが存在するので、今後はPalm OSやMeeGoなどにも対応していきたいとした。

AIRがサポートするプラットフォームも増やしていく予定
AIRがサポートするプラットフォームも増やしていく予定

 次バージョンで検討している機能として具体的には、デバイスのサブカメラ、テレビの人物感知センサーのような未対応のセンサーのサポート、ネイティブ拡張を挙げた。ネイティブ拡張はすでにデスクトップ版では実装されているが、Android向けのAIRに対しても実装し、AIRアプリの選択肢を広げていきたいとしている。また、AIR 2.5のWebKitは前回のバージョンから変わっていないため、HTML5を100%カバーする形で更新していきたいとも述べている。

次回以降のバージョンアップで追加が検討されているAIRの機能
次回以降のバージョンアップで追加が検討されているAIRの機能

継続的なパフォーマンス改善

 AIRは現在いろいろな用途で使われているが、デベロッパーに聞いたところ、「ゲーム」「電子出版」として需要が高い。特にゲームは先進的な機能、ハイパフォーマンスが求められる分野だ。

デベロッパーに聞いたAIRの適用ジャンル
デベロッパーに聞いたAIRの適用ジャンル

 パフォーマンス改善にもリソースを費やしており、一番手をかけているのはGPU機能の部分。PCではGPUが当たり前になってきているので、GPUをフルに活用して、CPU負荷の軽減や表現力の向上を目指す。

継続的なパフォーマンスの改善
継続的なパフォーマンスの改善

 中でも現在一番注力している機能が「ステージビデオ」だ。動画の再生は通常、ビデオのデコード、画像変換・表示処理(色変換、拡大縮小など)の2ステップで行われている。現在、前者はハードウェアに処理を投げることも可能だが、後者はFlashの中でのみ処理が行われている。ステージビデオは、その後者の行程をハードウェアで処理させる機能だ。

現在、動画再生の後工程はソフトウェアがCPUリソースを消費して行う必要がある。
現在、動画再生の後工程はソフトウェアがCPUリソースを消費して行う必要がある。

 最終的にはCPUリソースを消費せずにHD品質の動画を表示することができ、表示品質やバッテリー持続時間などの向上が期待できる。

ステージビデオ機能を活用することで、CPUリソースを消費することなく、HD品質の動画を楽しめるようになる
ステージビデオ機能を活用することで、CPUリソースを消費することなく、HD品質の動画を楽しめるようになる

フルスタックの開発環境「Flash Platform」

 アドビはFlash Platformをユーザーに触れる表示側の機能だけでなく、開発ツールやフレームワークなどを含めたフルスタックの開発環境として提供しているので、今後も生産性の高い開発ワークフローの進化が期待できる。下図がFlash Platformの全体像だ。

ランタイムだけではなく、それを乗せるフレームワーク、サーバーやサービス(旧Omnitureの分析ツールを含む)まで全般的にカバーするFlash Platform
ランタイムだけではなく、それを乗せるフレームワーク、サーバーやサービス(旧Omnitureの分析ツールを含む)まで全般的にカバーするFlash Platform

通常のアプリのようにモバイル開発が可能に

 モバイル向け開発では実機上でアプリケーションを動かしながら、デバッグやプロファイルを行える仕組みを提供したいと考えている。

PCとモバイル端末をつないで、通常のアプリ開発のようにモバイル開発を行えるようにする
PCとモバイル端末をつないで、通常のアプリ開発のようにモバイル開発を行えるようにする

「Flex 4.5」もモバイルへ対応

 オーサリング面で、今後強化を検討しているのは、マルチスクリーンで展開するための、よりよいワークフローの提供。同日発表されたFlex 4.5のベータ版ではモバイル対応が行われた。なお、Flex 4.5のモバイル対応は別途モバイル版のフレームワークがでるというわけではなく、モバイルにも対応できるようFlex自体のカバー範囲が広がった、という点に注目したい。

Adobe MAX 2010のセッション情報を閲覧するAndroid端末向けアプリ「MAX Companion」もいち早くFlex 4.5で実装された
Adobe MAX 2010のセッション情報を閲覧するAndroid端末向けアプリ「MAX Companion」もいち早くFlex 4.5で実装された

追加情報は「ADOBE FLASH Showcase for TV」で

 Chou氏は、さらなる情報として、Flash showcaseApp brain listing of AIR apps、25日から公開されたADOBE FLASH Showcase for TVなどを参照することを勧め、Adobe AIRに関する講演を終えた。

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