はじめに
RadPHPは、ファーストバージョンリリース時には、「Delphi for PHP」と呼ばれていたPHP開発環境です。DelphiやVisual Basicと同じようなドラッグ&ドロップ操作でPure PHPアプリケーションを開発できるユニークなツールでした。
そのツールが進化して、現在ではRadPHPと呼ばれ、モバイルを含むさまざまな開発に対応したPHP開発環境へと成長してきました。特にモバイル向けの需要の増加は、Web開発者にとっても悩ましいところです。PHPの世界では、jQuery MobileやPhoneGapといったソリューションがありますが、これらを使いこなすには、まだまだ敷居が高いのが現状でした。
RadPHPは、ビジュアル環境にこれらのフレームワークを取り込み、直感的で分かりやすい、効率的な開発スタイルを実現しています。
jQuery MobileとRadPHP
jQuery Mobileは2010年8月11日に始まったオープンソースプロジェクトで、jQueryをベースにモバイルデバイスのWebブラウザに特化したGUIを提供する優れたJavaScriptライブラリです。活発な開発が進められており、モバイルWeb開発の主流になりつつあります。
RadPHPには、最新版のjQuery Mobile 1.0が搭載されています(本記事執筆時点)。標準搭載された各種コンポーネントとフレームワーク、直感的な画面設計が可能なモバイル対応のビジュアル設計ツールによって、jQuery Mobileの存在を意識することなく、Ajaxにも対応したモバイルWebアプリを作成できます。
PhoneGapとRadPHP
PhoneGapは、旧Nitobi Software社(Adobe Systemsに買収されました)が開発していたオープンソースのライブラリです。PhoneGapは「Webアプリをネイティブアプリとしてラップしてくれるネイティブライブラリ」として注目をされており、主にiOS, Android, BlackBerry, Windows Phoneをターゲットにしています。
しかし、PhoneGap専用のHTML/CSS/JavaScriptのコンテンツを自前で作成する手間や、XcodeやEclipse向けのプロジェクトを作成する手間がかかるのが問題でした。
RadPHPでも、作成したWebアプリをネイティブアプリに変換するためにこのPhoneGapを採用していますが、便利なウィザードを提供することで、この問題に対応しています。RadPHPで作成したPHP/jQueryMobileベースのWebアプリは、ウィザードを利用するだけで、PhoneGapに必要なコンテンツおよびプロジェクトを自動で生成できます。
この記事で紹介する開発手順
この記事では、RadPHPの新バージョンである「RadPHP XE2」を用いて、iOSに対応したWebアプリと、さらにはiOS向けのネイティブアプリを開発します。
開発には、上述のjQueryMobileやPhoneGapを利用しますが、具体的なコードが出てくる箇所が極めて少ないことに驚かれるかもしれません。
セットアップ - 開発を始める前に
RadPHP XE2でiOS向けアプリを開発するには、いくつかのセットアップが必要です。まず、以下の準備を行います。
- Windows側にRadPHP XE2をインストール
- Windows側にGoogle Chromeをインストール
- Mac OS X側にXcodeをインストール
- Mac OS X側にPhoneGapをインストール
Windows RadPHP XE2のインストール
RadPHP XE2の動作環境は、以下のとおりです。
動作OS:
- Microsoft Windows 7
- Microsoft Windows Vista
- Microsoft Windows Server 2008(SP2)
- Microsoft Windows Server 2003(SP1)
-
Microsoft Windows XP Professional(SP3)
推奨環境:
- メモリ:1GB以上
- 300MB以上のディスクの空き容量
RadPHP XE2のモバイルコンポーネントがサポートするモバイルOSは以下のとおりです。
- iOS(iPhone, iPad) - 3.1.3以上
- Symbian S60 - 5.0以上
- BlackBerry - 6.0以上
- Android - 1.5以上
- Windows Phone - 7.0以上
- WebOS - 1.4.1 以上
また、iOSアプリを作成するためにIntelベースのMac OS X 10.6.6(Snow Leopard)以降と、Xcode 3.2以降を必要とします。
なお、2012年3月現在 RadPHP XE2は Update4がリリースされています。このUpdate4で以下のアップデートが追加されました。
- ZendFrameworkのサンプルを追加
- 各種Android端末, BlackBerryのモバイル端末の背景を追加
- JQuery Mobile 1.0 finalを統合
- PhoneGap 1.3.0を統合
RadPHPをインストールしたら、使用許諾登録を完了させます。
Google Chromeのインストール
作成したアプリの動作を確認するためのブラウザとしてGoogle Chromeをインストールします。Google Chromeを使えば、作成したWebアプリケーションのモバイル環境での外観を、シミュレータを使うことなく、ある程度確認できるので便利です。
Mac OS X側にXcodeをインストール
モバイル向けのWebアプリ開発であれば、上記のセットアップまでで十分ですが、iOS向けのネイティブアプリの開発も行うには Xcodeも用意しておかなければなりません。
Xcodeをダウンロードして使用するには、Apple Developerへの登録が必要です。
インストールするXcodeは、3.2以降のものを使います。
Max OSX側に PhoneGapをインストール
次に、PhoneGap 1.3.0を入手してインストールします。RadPHPで作成したWebアプリケーションをiOSのネイティブアプリに変換するには、あらかじめMac OS XにPhoneGapをインストールし、Xcodeに統合しておく必要があります。
PhoneGap 1.3.0のダウンロードURLはこちらです。
このページで、iOSを選択してインストーラをダウンロードし、インストールを実行します。
以上でセットアップは完了です。