複数のクロスプラットフォーム開発ツールがTizenに対応
TizenはモバイルOSとして後発なだけに、アプリの開発環境をどう整備するか、そしてアプリの品揃えをどう増やすかに工夫が必要となる。今回のセッションでは、この疑問に対するTizen Accosiation側の回答は「HTML5/JavaScriptを活用したクロスプラットフォーム開発ツールの主要製品がTizenをサポートする」というものだった。
Tizen Accosiationボードメンバーのインテル社クリストファー・クロトー氏(ソフトウェア & サービス事業部 マネージングディレクター)は、クラスプラットフォーム開発ツールの多くがTizenへの対応を表明していることを強調した。「毎日のように新しいパートナーがTizenに参画してくれている」(クロトー氏)。
クロトー氏のセッションのスライドでは、HTML5ベースのクラスプラットフォーム開発ツールのIntel XDK、Sencha、Appcelerator(Titanium Mobile開発元)、Enyoのロゴが「パートナー」として示されていた。これら各ツールがTizenをサポートする方向という。現時点でこれらのツールでiOS、Android向けにアプリを開発している開発会社は、将来には少ない手間でTizen版も開発できるようになることが期待できる。またゲーム・コンテンツ向けにも、Unity、HavokなどのツールがTizenに対応することを説明した。
Tizenのパートナーはコンテンツ向け開発ツールベンダーだけではない。セキュリティベンダーのマカフィーや、フォントのベンダーであるMonotypeがTizenパートナーとなっていることにもクロトー氏は触れた。セキュリティAPIをオープンに公開することや多国語フォントの提供など、Tizenのエコシステムが充実しつつあることを強調した。
さらに、アプリの品揃えを増やすため、コンテスト「Tizenアプリチャレンジ」を開催中であることを紹介した。ゲームカテゴリー3部門、非ゲームカテゴリー6部門、HTML5アプリ部門で、総額404万ドルの賞金を用意する。締め切りは当初予定より延長し、2013年12月8日までとする。
アプリを認定するTizen Complianceを開始
Tizenのマルチデバイス対応と歩調を合わせ、"Tizen Compliance"、つまり「Tizen認定」の取り組みを進めることも説明した。この目的のため、Tizen Compliance Specification(TCS)とTizen Compliance Test(TCT)のリリースを発表した。TCSはTizen認定アプリが守るべき要件を記述したもの、TCTはそのテストツールである。こうした措置により、マルチデバイス対応のTizenアプリの互換性などの懸念を減らしていく。
Tizen搭載製品の具体的な予定はノーコメント
一方、今回のセッションの登壇者はTizen搭載製品の出荷予定など最終製品に関してはコメントを避けた。ただし、以下の2点のわずかなヒントとなる情報を明かした。
1点目は、前述したようにサムスン電子がテレビにTizenを搭載する予定を発表していることだ。サムスン電子は、テレビ以外の家電製品のOSとしてTizenを採用していく可能性もある。
2点目は、NTTドコモらが開発中のTizen端末に関しての情報である。端末が登場する具体的な時期や端末の内容についてはノーコメントだったものの、今回のセッションでUI要素「Dynamic Box」をアピールしたことから、「それを上手に使った商品というふうにご理解いただきたい」(杉村氏)とコメントした。現時点ではこれがぎりぎりの説明ということのようだ。
Tizenは、ロースペックのスマートフォンにも対応したプロファイルを用意することから、日本国内向けとは別に、グローバル市場向けのロースペックTizen端末を準備している可能性もあるのかもしれない。
今回のセッションでは、Tizen Associationと、その中心メンバーであるNTTドコモ、サムスン電子、インテルのそれぞれの立場、現状がある程度明かされた。ソフトウエア開発者の立場から見れば、現状オープンソースで公開されているTizenにより「Dynamic Box」などの機能を評価可能なこと、それにクロスプラットフォーム開発ツールのTizen対応が進んでいることが、要注目の情報といえるだろう。