では、O2Oはどうでしょう? まだ、IoTほど一般には普及していない言葉や概念ですが、Online to Offlineの略称です。ネット上(Online)からリアルな世界(Offline)を結びつけるサービスやシステムを指しています。サービスとしては位置情報と連動して、スマホにクーポンを発券させるシステムなどが考えられます。iPhoneなどではBluetoothを活用したiBeaconなどを思い浮かべられた人も居るかと思います。
これらのプラットフォームとして、最近ではネットワーク環境が整備されたLinuxを搭載した小型コンピュータの利用も増えています。試作や小ロットのレベルでは、元々は教育用で開発されたラズベリーパイ(ラズパイ)や、インテルのガリレオなどを利用するケースが増えてきました。
Makers的なモノ作り
ラズパイやガリレオを前提に開発する場合は、それらがベースとなるので試作レベル+α(プラスアルファ)の域を出ませんが、従前に比べてはるかに安価で高性能になり、開発時間を短くできます。それはフリー(ライセンスやロイヤリティ/入手コスト)で提供されるコンパイラやCADなどの開発ツールと、それと連携する世界規模のSCM(Supply Chain Management)が整備されたためです。また、スマホやタブレットで利用されている安価で高性能なSoCやセンサなどのモバイルデバイス関連部品の入手性の向上も寄与しています。ラズパイの開発経緯や価格を見ればうなずけると思います。
今回ご紹介するUSB接続型汎用赤外線リモコンアダプタ「irMagician」も、同様の手法で開発されています。通販で入手できる電子部品、半導体ベンダーからフリーで提供されるコンパイラ、安価な基板CADと連携した中国の基板製造業者を活用しています。上記のように、ある程度の数量であれば、個人でも比較的容易に基板を起こして、部品を調達して製品に近いものを組み上げることができるようになりました。
irMagicianの特徴と今までの赤外線リモコンの問題点
さて、なぜ今更「USB接続型汎用赤外線リモコンアダプタ」なのでしょうか? 「車輪の再発明」を地で行っているような気がします。確かにUSBに接続するタイプの赤外線リモコンアダプタは数種類存在しますし、最近ではirKitのようにWiFiで接続するタイプの赤外線リモコンもリリースされています。USB型は、接続するホストのOSに左右されます。また、WiFi接続型は据置で使うことが前提で機動性に欠けます(前提条件がそれぞれのユーザにミートすれば非常に使いやすいと思います)。
上記で述べた、ラズパイやガリレオを購入された方はそれなりに多いと思いますが、IoTやO2Oのプラットフォームとしての可能性を持ちながら、その環境で使われている人は少ないと考えます。死蔵されているのが現状ではないでしょうか? この状態をUSB接続のリモコンで再利用できたらとも思います。さらにメーカ(Makers思想と分けるために、従来の量産製造業者を「メーカ」とします)独自の仕様や開示されない情報があり、製造中止に伴う永続性に欠け、今まで築いてきた資産が無駄になる可能性があります。その他にも「高価」「学習できるリモコンが限られる」などがあります。
まとめると、
- USBホストのOSに左右される
- 製造中止になると、資産が無駄になる
- 機動性が低い
- できることの割には高価
- 学習できるリモコンが限られる
対案として、「USB接続のホストOSに左右されない」「開発リソース(回路図、ソースコード)の公開による永続性の担保」「小型・軽量化」「キットと完成品によるコストの削減」「学習機能の強化による対応リモコンの増加」があります。
USB接続のホストOSに左右されない
USB接続で何かデバイスをホストに接続する場合は必ず「ドライバはどうするのか?」の問題が発生します。今回は、それぞれのホストが最初から持っているドライバを前提に動作を構築しました。irMagician自体を仮想的なシリアルデバイスとして利用します。つまり、ホストから見るとirMagicianはシリアルポートに接続されたデバイスとして認識されます。
これにより、よく使われるシリアルターミナルソフトから、コマンドを送ることにより制御します。USBの制御クラスはCDC-ACMを使います。CDC-ACMは基本的なドライバなので、Windows/Mac OS X(*1)/Linuxに対応します。Linuxの上に構築されているAndroidでは一部のデバイスに対応しています。
Mac OS Xは、kextのファイルの差し替えが必要になります。
開発リソース(回路図、ソースコードなど)の公開による永続性の担保
この手のデバイスの問題点として、製造中止になるとどうにもならないことが挙げられます。プロプライエタリな商品の宿命と言えるでしょう。回路図があればハードウェアを再現できますし、ファームウェアのソースコードがあれば、チップさえ製造中止になっていなければ、製品として再構築することが可能になります。