大きく変わった「.NET Framework 4.6」と「.NET Core 5」
「.NETも登場から13年が経ち、最新の.NET 2015では大きく変わった」と井上氏。最大のポイントはオープンソース化されたことだという。そのほか、.NETもクロスプラットフォームに対応、MacやLinuxでも動く環境となった。.NET2015は2つのラインナップで構成される。一つが「.NET Framework 4.6」。これは.NET Framework 4.5.2の後継バージョンで、がVisual Studio 2015とともに登場した。そしてもう一つが、「.NET Core 5」である。
これはMacやLinux上でも動く新しいランタイムで、「ベータ版として提供が始まっている」と井上氏は紹介。ただ.NET Core 5はクラウドを意識しているため、かなり軽量化されているという。したがって.NET Framework側にあっても、Core 5側にないようなクラスメソッドがあるなど、.NET Core 5は.NET Frameworkのサブセット的位置づけとなる。「このあたりは注意をして使ってほしい」と井上氏。そしてこの2つのフレームワーク上でASP.NET 5が動くというわけだ。
.NET 2015の特徴としてオープンソース化されたことを先述したが、「すべてがオープンソースというわけではない」と井上氏は語る。オープンソース化されたのはクロスプラットフォーム対応の.NET Core 5のみ。こちらのソースコードがオープンソースとしてGitHub上で公開されているのである。「興味のある方は、ぜひGitHubにアクセスしてほしい。そしてバグを見つけた場合は、ぜひプルリクエストの送信を。日本の開発者の中にもプルリクエストを送り、製品の中にそのコードが反映されている方もいる。製品のライブラリの開発に貢献してほしい」と井上氏は参加者に呼びかけた。
また.NET OSSのコミュニティも増えており、.NET Foundationにアクセスすると、.NETのさまざまなプロジェクトの状況が一覧で見られるようになっている。「興味のある人はこちらも見てほしい」(井上氏)。
Visual Studio、.NETも新しくなったことで、Visual Studioのプロジェクトそのものも大きく変わったという。その代表例が、Yeomanと呼ばれるオープンソースのツールをVisual Studioのプロジェクトの中で使用できるようになったことだ。これにより、jQueryやBootstrapなどのJavaScriptをベースとしたライブラリは、YeomanのBowerというツールで管理されるようになる。またGruntやgulpという、Web開発では馴染みのあるNode.jsベースのビルドタスク自動化ツール(タスクランナー)も使えるようになった。
新しい.NET Coreのアプリケーションはサイドバイサイド実行できる上に、Xcopyで簡単に配置ができるようにもなった。それを証明するため、井上氏はWindowsマシンで開発したソースコードをMacBook(Ubuntu環境)にクローンし、WindowsとLinux双方でソースコードが同じように動いていることを証明したり、USBメモリにアプリケーションをランタイムごとコピーして、Windows 8.1の環境で実行させたりというデモを行った。
ターゲット環境へのXcopy配置をなぜ可能にしたのか。これは、アプリケーションが迅速に動く世界を目指しているからだという。さらに「Dockerへの対応も進めている」と井上氏は説明する。Dockerというアプリケーションコンテナーを活用することで、ASP.NETベースのアプリケーションを簡単にデプロイして運用していくこともできるようになるというわけだ。「このような機能拡張を図ることで、.NET Coreはクラウドに最適化されたフレームワークとして進化していっている」(井上氏)。
このような進化の背景にあるのが、現在のアプリケーション開発において迅速さや継続性が求められるという流れだ。いかに迅速にお客様が求めるサービスやアプリケーションを提供していくか。そのためには継続的にモニタリングし、そこから得たフィードバックやデータから継続的に学び、それをアプリケーション開発に生かして継続的なデリバリにつなげていくという、新しいラピッドアプリケーション開発に対応した開発スタイルを構築することが重要になる。つまりアプリケーション提供ライフサイクルを加速化する仕組みをどう作るか。それを解決する仕組みもマイクロソフトは用意している。それがVisual Studio DevOpsである。
Visual Studio DevOpsは、Visual Studio、Visual Studio Online、Microsoft Azureというソリューションを組み合わせて構築する。Visual Studio Onlineでリポジトリ、ビルド、テスト、デプロイを自動化し、アプリケーションをMicrosoft Azureにホスト。Azureで提供されているApplication Insightsという監視、分析機能を活用して、アプリの利用状況を収集し、サービス品質向上するためのヒントを探る。それを開発者にフィードバックし、アプリケーションやサービスの改善につなげていけるというわけだ。マイクロソフトでは開発視点によるDevOps実現のため、Visual Studio Familyの中でさまざまな関連機能を提供しているのだ。
最後に会場にこう呼びかけ、井上氏はセッションを締めた。「これからも私たちはすべての開発者、すべてのアプリケーション開発のために、Visual Studioを中心にさまざまなテクノロジーを提供していく」。
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