SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

DeveloperZine(デベロッパージン)- エンジニアの意思決定を支える技術情報メディア ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

IDDD本から理解するドメイン駆動設計

実践DDD本 第5章「エンティティ」 ~一意な識別子で同一性を識別~

IDDD本から理解するドメイン駆動設計 第5回


[7]エンティティのバリデーションを検討

 次に、エンティティのバリデーションについて詳しく見ていきましょう。エンティティでは「属性単位」「オブジェクト全体」「複数オブジェクト時」という3つの粒度に分けてバリデーションを管理します。ここでは、わかりやすさのため従業員(Employee)というクラスを例に紹介します。

属性のバリデーション

 エンティティの属性に値をセットする場合、「空ではないか」「5文字以上か」「30文字以下か」といった妥当性のチェックを行います。不正な値が登録されないために「自己カプセル化」の手法を使い、メソッドやコンストラクタからセッターを呼び出します。これにより、不正な値であればアサーションから違反を示すエラーを発生させることができます。

 アサーション(assertion:表明)とは、プログラムの状態に関する前提を検証する仕組みの1つです。アサーションは「assert 年齢 >= 0」のような真偽値を判定する式を含みます。その条件が真とならない場合、想定外である旨を通知します。プログラム中にアサーションを記述することで、効果的/積極的にバグを見つけることができ、プログラムの仕様を明確にして保守を容易にするメリットがあります。

 下図は属性単位のバリデーションのイメージとなります。属性のチェックにおいては、バリデーション専任のクラスを作る場合もありますが、ここではドメインオブジェクトにバリデーションを記述しています。

エンティティのバリデーション(属性単位)
エンティティのバリデーション(属性単位)

 ここでは契約による設計を意識して、事前条件としてアサーションを記述することで、オブジェクトの状態を適切に維持しています。「契約による設計(Design By Contract:DbC)」とは、バートランド・メイヤー氏によるプログラムの安全性を高める手法で、事前条件/事後条件/不変条件という3つの契約種類から構成されます。

  1. 事前条件(precondition):呼び出し側がメソッド開始時に保証すべき条件
  2. 事後条件(postcondition):呼び出された側がメソッド終了時に保証すべき条件
  3. 不変条件(invariant):データが常に(開始時も終了時も)満たすべき条件

 これらの満たすべき条件を仕様としてコード中に埋め込むことにより、安全な設計を行うことができます。

オブジェクト全体のバリデーション

 オブジェクト全体のチェックでは、実装クラスに対応した「バリデータ」クラスを作成し、適切なタイミングで呼び出すようにします。

エンティティのバリデーション(オブジェクト全体)
エンティティのバリデーション(オブジェクト全体)

 IDDDでは、ウォード・カニンガム氏が提唱したCHECKSパターンランゲージの「遅延バリデーション(可能な限り先送り)」が、オブジェクト全体のバリデーションと相性が良いとしています。複雑なオブジェクト全体のチェックを都度行うのではなく、先送りすることでチェックをシンプルにできるためです。

複数オブジェクトの組み合わせ時のバリデーション

 複数オブジェクトの状態が妥当かチェックするケースでは、必要な数だけバリデータを用意します。

 チェックタイミングを管理したい場合は、ドメインサービス(7章)で制御する方法が紹介されています。チェック可能なタイミングになったら、オブジェクト側からバリデーション可能な旨のイベントをサービス(クライアント)側へ通知して、チェックを実行します。

サービス側でのバリデーションタイミング制御
サービス側でのバリデーションタイミング制御

エンティティの変更管理

 なお、エンティティの変更を追跡することは必須ではありません。もしビジネス要件的に変更の追跡が必要であれば、ドメインイベント(8章)やイベントソーシング(4章)を使えばいいでしょう。

最後に

 以上、本稿ではDDDのエンティティについて紹介しました。今回はドメインの要件を理解してエンティティを発見し、成長させていく方法を学びました。また、それらをコーディングする方法について紹介しました。次回はDDDの「値オブジェクト」を紹介します。

参考資料

この記事は参考になりましたか?

連載通知を行うには会員登録(無料)が必要です。
既に会員の方はを行ってください。
IDDD本から理解するドメイン駆動設計連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

WINGSプロジェクト 青木 淳夫(アオキ アツオ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。 2026年時点での登録メンバは約50名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるLaravel実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/10038 2018/11/13 12:50

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー