7月20日、NTTコムウェアは、同社が提供する開発環境クラウドサービスである「Smart Cloud DevaaS 2.0」をリリースし、同時に昨年より開設していた「DevOpsサービスセンタ」を対外的にも本格稼働させると発表した。
NTTコムウェアでは、全社的なDevOps展開を推進するため2016年12月に「DevOpsサービスセンタ」を発足させ、クラウドから提供される開発環境(コーディング環境と単体・結合テスト環境)をDevaaSとして用意していた。これにより同社内およびNTTグループ各社の開発環境を共通化し、最終的な試験サーバーでのテスト、本番サーバーへの展開、運用・保守の効率化を図っていた。
その中で見えてきたDevOpsの課題は、共通プラットフォームの不在、OSSが多いDevOps系ツールに対するスキル不足、DevOps推進のノウハウ、管理方法に対する組織や人的な課題の3つに集約されるという(NTTコムウェア ネットワーククラウド事業本部 DevOpsサービスセンタ長 川口篤史氏)。
共通プラットフォームの不在とは、パブリックなクラウドサービスで基本的なOSやサーバー環境を入手しても、必要なツール類はOSSなどで自分でそろえる必要があり、それらは一般にプロジェクトごとにバラバラだったりする。環境やツールが多様なのは、さまざまな開発要件、システムに合わせられるということでもあるが、進化の早いOSSツールのキャッチアップは簡単ではない。また、DevOpsの専門家や利用センスのあるエンジニアも十分にそろっているわけではない。効果的な導入やシステムをどのようにするか、組織構造と合わせた取り組みが必要だが、人材・教育支援を含めリソースの不足もしがちだ。
つまりDevOpsの推進にはクラウド型の基盤とその活用を支援するマネージドサービスが必要だとして、NTTコムウェアはDevaaSを立ち上げた。今回これをさらに推し進めるため、DevaaS 2.0を発表し、ツール支援や人材育成を含んだDevOpsの導入支援というセンタ機能を拡大展開する(川口氏)。
従来のDevaaSと2.0との違いは、クラウドで統合的に提供される環境を、総合性能試験環境や商用運用の環境まで広げたこと。これまではプログラム開発に寄ったIaaSに近いPaaSといえる状態だったが、実際の業務を運用できる環境までシームレスに展開される。そのための開発者ポータルも整備され開発から運用開始までのサイクルが短縮されると言う。Docker、Maven、Jenkins、GitLab、AnsibleといったCI/CDツールなど、OSSツールのサポートも拡大、強化される。
DevOpsの導入支援、コンサルについては、これまでのNTTグループ内の活動がメインだったものを外部企業にも広げる。具体的には内製指向の強い大手企業の情報システム子会社、SIerなどだと言う。売上目標は2020年には年間10億円程度を目指すとしている。
NTTコムウェアがDevaaSを発表したときは、まずはグループ企業のシステム開発をDevOps化する取り組みからスタートしている。すでに5000以上の仮想サーバーが稼働しているというDevaaSだが、これをいわば外販することになるのだが、Amazon AWSやMicrosoft Azureなどに対するアドバンテージはなんだろうか。
開発環境から本番環境までシームレスに共通プラットフォームが用意しやすいことや、コンサル的な導入支援や教育サービスなども受けられるというメリットの説明はあったが、正直なところこれだけではグループ企業以外が積極的に利用するポイントになるかは難しいところだ。ベンチャー企業や技術先行のスタートアップなどは、身軽なパブリッククラウドサービスのほうが使いやすいだろう。そもそも、大掛かりな導入コンサルが必要なDevOpsやアジャイル開発というのも矛盾しているようにも思える。
DevaaS 2.0とDevOpsサービスセンタが目指すDevOpsとは、同社が具体的なターゲットとして説明する「金融・製造など大手企業の情報システム子会社」が表すように、一定規模の企業が、業務システムをオンプレミスからプライベートクラウドに移行し、その開発環境をクラウド化し自動化やスピードアップを支援するサービスであり、システムであると捉えるべきだろう。
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
中尾 真二(ナカオ シンジ)
フリーランスのライター、エディター。アスキーの書籍編集から始まり、翻訳や執筆、取材などを紙、ウェブを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは当時は言わなかったが)はUUCPの頃から使っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です