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事例インタビュー

150ものWebサービスを支える大規模インフラチームがSREを採用! サービスごとに異なる課題に立ち向かい、未来を見据えた技術者集団へ

SREに重要となる、サービスに対する「オーナーシップ」

 組織体制やコミュニケーション手法を変えて、自動化を推進。SREの施策は着々と進んでいるかに見える。実際、多くの成果を生み出してきたが、河村氏も高岡氏も「まだまだSREと呼ぶには足りない部分も多い」と語る。

 「例えば、サービスが落ちると『サーバ増強』が申請され、そこに対応するのが私たちの仕事でした。今は『どこまで増やすのか』『なぜ必要なのか』という説明を受け、次の一手を考えつつ対応しています。しかし、それではまだ十分とはいえません。『将来どのようにサービスを拡大するのか』『増やして障害が生じたときにはどうするのか』と、もっと踏み込んだ議論をしなければいけません」(高岡氏)

 ほかにもCDN(Content Delivery Network)など、インフラとアプリケーションの境界にある仕組みは、インフラ側からアドバイスができる場合がある。現在はまだ「問題が見えただけでもマシ」(高岡氏)の段階で、今後はさらにコミュニケーションギャップを埋める方法を模索しているところだ。

 「技術の力で既存のインフラを守るだけでなく、サービスを開発する事業会社とともに協業して新たな価値を創造していく。その意味でSREは技術ではなくて、手法です。いや、マインドといっても差し支えないでしょう。いくら可視化ツールを使い、事業会社と話す機会を設けても、受け身のままでは何も変わりません」(河村氏)

「SREで最も重要なのはマインドセットです」(河村氏)
「SREで最も重要なのはマインドセットです」(河村氏)

 とはいえ、インフラエンジニアには旧来のトップダウンの体制や、御用聞きに慣れている人も少なくない。ベンチャースピリッツにあふれるリクルートでも、決して例外とはいえないようだ。

 SREを組織に根付かせるためには、担当のサービスを「自分ごと」として捉える感性を育むことが不可欠となる。それを目指し、さまざまな取り組みや工夫も行われている。

 「例えば私が所属するリクルートライフスタイル担当グループでは四半期に1回、発表会を実施し、担当するWebサービスについて紹介する機会を設けています。パフォーマンスやセキュリティといったインフラ側からの視点だけでなく、サービスとしての課題や将来像なども含めて話すことで、サービスに興味を持ち、オーナーシップを育めたらと考えています」(高岡氏)

 また、マネジャー同士がオープンに会話し、技術を楽しみながら活かすことに対してポジティブな雰囲気を作り出すことも重要だ。Slackで雑談したり技術動向の記事を貼ったりすることを推奨するなど、部内で「新しいことに敏感であることは良いこと」という空気を作り出すことを意図して行っている。

 「そもそも1年前に入社した私がその恩恵を実感しています。入社直後に私が小さく始めたSREの取り組みを、河村さんたちが気づいてくれて他事業にも展開してくれたんです。それが功を奏して私も社内のアワードをいただくなど、大きな成功体験を得ることができました」(高岡氏)

 入社直後は誰もが改善意欲に満ちているが、提案が通らずに疲弊することも少なくない。最初の小さな提案をポジティブに受け止め、肯定されることで率先的な仕事環境ができていくのだろう。

 「インフラエンジニアに特有の『ミスをしない文化』から脱却し、依頼される側から提案する側に変わっていきたいですね。そのためには管理側としても、ノーミスよりリカバリを重視し、同じことより新しいことをやることを評価するマインドセットへと変えていく必要があるでしょう。さらに社内的にも、アプリケーション開発といった華々しいものだけではなく、インフラの価値についても評価してもらえるようアピールしていきたいです」(河村氏)

見える化と改善で、サービス価値をインフラから高める

 今後、SRE部が手がけるべき課題について、河村氏は「リアルタイムな状況把握」をあげた。リクルートのWebサービスへのアクセスは、とある事業だけでも年間数千億に上る。歴史のあるサービスも多く、昔ながらのツールを使って運用しているところも少なくない。それらを可視化し、問題を把握するのは至難の業だ。

 「まずは状態を見える化し、共通の課題認識を持てる状態にできればと考えています。例えば、あるサイトではフロントエンドのWebサーバでリソースを大量消費し、ダウン寸前の状態にあったことが私たちのツールでわかりました。従来なら『動いているんだから大丈夫』となるところでしたが、根本的な原因まで見せられることでサービス開発担当との合意も取れ、早期解決につなげることができました」 (河村氏)

 ほかにもリダイレクトが2回入っていたり、透明の画像ファイルでクエリが返っていたり、そうした細かなことが積もり積もってサービスに影響を与えていることがあるという。問題点を発見することは難しいが、リクルートには基本的に数字で出して情報整理するという文化があり、それに即したさまざまなツールや仕組みを作っていきたいと高岡氏は語る。

 「Excelで行っている構成管理をツールに置き換えたり、中央集権型の従来のアーキテクチャを現在の分散型に変えたり、リクルートのデジタルサービスは歴史が長い分、改善すべきところはまだまだあるので地道に取り組んでいきたいと考えています」(高岡氏)

 リクルートのSREはまだスタートしたばかり。老舗ともいえる大企業のSREによる改善効果は、スタートアップよりも大きな価値を生み出すかもしれない。今後の進展に期待したい。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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