日本企業でも続々と活用が進むAIとアナリティクス
ここで、SAS Institute Japan代表取締役社長 兼 SAS Institute Inc. 日本・韓国 地域統括バイスプレジデントの堀田徹哉氏が登壇。堀田氏は、シャーベンバーガー氏の講演で触れられた「オートメーション」および「オーグメンテーション」の領域にフォーカスし、主にこの領域における日本でのアナリティクスとAIの最新事例を紹介した。
製造業における生産プロセス自動化の代表例として挙げられたのはブリヂストンの「EXAMATION」だ。EXAMATIONでは、タイヤ生産において、同社が蓄積した材料加工の知見に関するデータや、生産工程で得られる膨大な情報を解析。さらに、同社の技能員が培ってきた技術とノウハウを加えた独自のアルゴリズムを用いて、生産システムを自動的に制御するAIシステムであると言う。
「生産効率の向上、人の作業に由来する品質のばらつきを抑制すると同時に、熟練工の技能継承としての意義も備えた取り組み。こうした形でのAI活用は、製造業全般に広く適用できるチャレンジとして期待が高まっている」(堀田氏)
金融業界も、アナリティクスやAIをベースとした営業、販売、マーケティングの効率化、自動化といった取り組みに積極的だ。九州を地盤とするふくおかフィナンシャルグループでは、オムニチャネルでの顧客のアクションに応じた接客、プロモーションをリアルタイムに実現する仕組みとして「SAS Real-Time Decision Manager」による基盤を活用し、来店率の向上につなげている。また、大和証券では、顧客データに基づく購買行動の確率推定モデルを構築し、営業担当者に展開。顧客がより強く興味を持つ投資商品を高精度で推定することで、約定率を約2.7倍に向上したと言う。
また、金融業界ではマネーロンダリングやテロ組織、反社会的勢力などへの資金流入を防ぐことなどを目的として国際的に強化されている規制への対応をAIの活用で行おうとする取り組みも盛んだ。こうした「規制対応」へのテクノロジー活用は「RegTech」とも呼ばれ、関心が高まっている。堀田氏は、取引履歴から不正の疑いがある取引を調査、判定する業務の効率化にAIを活用する三井住友銀行の事例、反社会的勢力による口座開設を防ぐために、名前や住所などからリアルタイムで名寄せしてマッチングし審査を行っているりそな銀行の事例などを紹介した。
医療分野では、東北大学医学部が取り組んでいる「超音波検査」の診断精度向上に向けたAI活用の研究が紹介された。特に乳がん検診として行われている超音波診断の結果画像から、病気の有無を判定(読影)する際の精度を、AIのサポートによって高めていこうという取り組みだ。東北大学では、そのためのアプローチとしてCNN(Convolutional Neural Network)と呼ばれるディープラーニング手法を採用。プラットフォームには「SAS Viya」が導入されていると言う。
「アナリティクス・ライフサイクル」全般をサポートするSAS Viya
ここで、SAS Institute Japanの小林泉氏により「SAS Viya」のデモが行われた。デモの内容は、「キリン」あるいは「イルカ」が撮影された複数の画像に対し、ディープラーニングによる学習を行って、被写体となっている動物の判別を行うモデルを作成するというもの。
小林氏は、前処理を行った数百枚の画像データに対し、Pythonによるコーディングで学習のアルゴリズムを作成。反復学習を行った上で、生成されたモデルの判別精度を確認するといった一連の作業を「SAS Viya」上で行った。特に精度確認のプロセスにおいて、SAS Viyaでは、誤った判別が行われた画像に対し、その判別の根拠となった情報をヒートマップ化して表示するといった機能も提供されている。この機能によって提供される情報をもとにしたチューニングも可能になっていると言う。
旧来からのSAS言語だけでなく、PythonやRといった言語のスキルを活用できる点はSAS Viyaの「オープン性」を表す特長の一つだが、OSSの機械学習フレームワークと比較した優位性としては「アナリティクス・ライフサイクル」全体の管理が可能な点が強調された。
「例えば、SAS Event Stream Processingのようなリアルタイムアナリティクスエンジンを合わせて使うことで、データの異常発見、画像判断などのリアルタイム処理をすぐに実行環境に組み込める。分析基盤で作ったモデルを、迅速に実行基盤に展開し、運用できるのは統合プラットフォームの大きな利点の一つだ」(小林氏)
SASのリアルタイムアナリティクスエンジンを使って実装された、画像からリアルタイムで感情の判断を行うデモの様子。
同社のシンガポールオフィスのインターンが作ったという
また、異なるスキルを持った多数のアナリティクス人材が混在するコラボレーション環境においても、SAS Viyaはプロジェクトの一元管理を可能にすると言う。RやPython、SAS言語などによって書かれたロジックを統合インターフェース上から管理できるほか、どのチームが、どこで、どのようなプロジェクトを進めており、どんな成果を上げているのかを一覧し、管理することも可能だ。こうしたAI研究における「ナレッジシェアリング」を効率的に行える点もSAS Viyaのメリットだとした。
堀田氏は最後に「今後は、企業のAI活用において、さまざまな背景を持ったアナリティクス人材のコラボレーションの動きが活発化していくだろう。そうした際にも、SAS Viyaのオープンで、フレキシブルで、オペレーショナルな特性がメリットなるはずだ」と述べて基調講演を締めくくった。
