Snowflakeのターゲット市場とユースケース
さて、こうした革新的な長所を持つSnowflakeがよく適合する市場やユースケースは、どのようなものだろうか。
まず、実験的な分析を繰り返し行いたい先進的ユーザや、これまで大きな初期投資が難しくビッグデータ分析に手を出せなかった中小企業が大きな恩恵を受けることは間違いない。一方、すでにTeradataやExadataといったデータベースを利用してデータ分析を活用しているエンタープライズ企業はどうであろうか。直観的に考えると、ライセンスモデルとPay-as-you-goの間には、データ量や利用期間によって、TCOに関する「損益分岐点」が存在するように思われる。
Snowflakeのメインターゲットは、あくまで中小企業や繰り返しの実験を好む一部の先進的な企業であって、エンタープライズ市場はこれまで通りビッグベンダという形で、市場を住み分けるのではないだろうか。この疑問を率直にHerskovitz氏にぶつけてみたところ、次のような回答であった。
「Snowflakeが中小企業に貢献することは間違いありません。また、米国ではAI/MLとBIを統合することでシナジーを生み出す試みも始まっており、こうしたデータサイエンスの最先端をいく企業の基盤としても、Snowflakeは最適です。一方、すでにビッグデータ分析を駆使している大企業にとっても、Snowflakeはコスト的に優位性があると考えます。まず、Snowflakeのコンピューティングリソースは1秒単位で課金を計測しており、スケールアウト/スケールインもワークロードに応じて自動的に行われます。これによって、リソース効率が最適化されます。次に、単一のデータのコピーを実質的に無制限のユーザが利用できるようになることで、大企業のデータ分析を加速させるエンジンを提供できます」
Herskovitz氏の言うことは、著者の経験に照らし合わせても一定の説得力がある。大きな初期投資をしてBI/DWH専用のデータベースを導入してみたはいいが、思ったほど使われず遊休リソースが生まれてしまう「残念な情報系」を、見たことがないと言えば嘘になる。「サイジングが甘いだけだろう」と言われるかもしれないが、BI/DWHのサイジングはOLTPに比べて難しいことが多い。一つひとつのクエリが複雑で重いためパフォーマンスのブレ幅が大きく精度の高い予測が難しい。既存業務がないため参考にできるリソース使用量の実績情報がないことも多い。運用を開始してからユーザ数やデータ量が増加することもよくある。後知恵になるが、本来であれば、必要に応じてリソースを増減できるクラウドの柔軟性が最も活きる領域だったのではないか、とすら思える。Snowflakeはそのペインポイントを適確に見抜き、クラウドを十全に活用して実装してみせたのだ。
その証拠に、現在他のデータベースベンダも、Snowflakeを追うかのようにPay-as-you-goモデルへの転換を急いでいる。長くこの領域のリーディングカンパニーであったTeradataは、2019年1~9月期の決算で赤字転落し、2019年1月に就任したばかりのCEOも退任となった(注5)。TeradataもまたPay-as-you-goモデルへの転換を急いでおり、巻き返しを図っている。RDBの雄であるOracleも、従量制をうたうExadata Cloud Serviceを発表した。AWSはRedShiftのスケーラビリティを高めるためのソリューションAQUAを発表し(注6)、Snowflakeと同じく課金単位を秒単位にした。もはやビッグデータであろうとスモールスタートとスケーラビリティの両立ができないサービスは、米国では受け入れられない時代になりつつある。
注5
日経XTECH - CEOを1年で電撃解任、赤字転落した米テラデータが抱える課題とは
注6
AWS - Advanced Query Accelerator (AQUA) for Amazon Redshift is now Available for Preview
今後のロードマップと日本展開
最後にSnowflakeの今後のロードマップと日本市場における展開について述べたい。
Snowflakeはエンタープライズクラスの大規模CDWHもターゲットとしていることは上述のとおりだ。それを裏付けるように、非機能面の強化にも積極的である。直近では以下のような改善を予定しているという。
- カラムレベルのアクセス制限と動的なデータマスキング
- マテリアライズドビューのパフォーマンス改善とクエリ・リライト
- 地理データのネイティブサポート
- 現在サービスが利用可能なAWS、Azureに加えてGCPの正式サポート(すでにGCPもGAとなっている)
- マルチリージョン、マルチクラウドでのディザスタリカバリ・レプリケーションとデータ共有
Snowflakeは現在グローバルで3500社の顧客が利用しており、急成長を続けているが、日本市場の開拓にも積極的である。2019年9月に日本法人を開設し、Herskovitz氏と東條氏もサービス立ち上げのため、東京を拠点に活動している。2020年2月から、AWS東京リージョンでも利用が可能になった。また、ハンズオンラボにおけるトレーニングセッションも開始しているほか、東條氏によれば、今後はセールス、マーケティング、技術サポート人材のローカルハイアリングも行う予定だという。
日系IT企業もSnowflakeに注目しており、クラスメソッド、NTTデータなどがパートナーシップを締結している。
- クラスメソッド「クラウドデータウェアハウスのリーディング企業Snowflake社の国内初ソリューションパートナーとして認定」
- NTTデータ「クラウド・データプラットフォームのSnowflake社とソリューションパートナー契約を締結」
最後に、Herskovitz氏から読者へのメッセージをお届けして結びとしたい。
Snowflakeは皆さんの組織がデータからインサイトを得ることを可能にします。ぜひ我々のWebサイトを訪れて、アカウント登録してSnowflakeを試してみてください。$400分の無償利用が可能で、登録にはクレジットカードも必要ありません。
ぜひ、クラウドネイティブ時代の新たなデータベースを体験してみていただきたいと思います。
