サービスに対する顧客のエンゲージメントを決定づけるふたつの要素
サービスデザインにおいては、顧客やステークホルダーとの持続的な関係構築と相互のインタラクションによる価値の共創が重要です。そのため前述したように、顧客のエンゲージメントも高めていく必要があります。ここでは、顧客のエンゲージメントに影響するふたつの要素について説明していきたいと思います。
1.ブランド
「ブランド」は、顧客からみたサービスに対するイメージそのものです。企業にとって大切なのは、サービスの提供価値、存在意義を伝えたい顧客に正しく伝えること。
サービスデザインの考えかたに照らしあわせてみると、ブランドとは、企業側の一方的な主張によって作られるものではなく、顧客やステークホルダーとのコミュニケーションを通じて作られるものです。
そのため、ブランドロゴやキャッチコピーのようなクリエイティブだけでなく、顧客とのタッチポイントすべてがブランドに影響を及ぼすと考えるべきです。たとえば、クールなデザインで定評のあるスポーツブランドでも、その店舗で応対したスタッフの態度が良くなければ、もちろんブランド体験も良いものにはなりませんよね。
そういったネガティブな情報はSNSなどを通じて拡散されるケースもありますし、企業のスタッフ1人ひとりがブランドの伝道者であるという意識を持たなければなりません。顧客と持続的な関係を維持するにあたり、ブランドの一貫性というものが非常に重要です。
ブランドは、長期的な顧客のエンゲージメントに大きく寄与します。ブランドなくして、愛されるサービスは成立しないのです。
2.運用・運営
顧客の利用サイクルに合わせて、コンテンツが常にフレッシュであるか、システムが適宜アップデートされているか、問い合わせに対する返答が迅速かつ的確かなど、提供者側の組織的なパフォーマンスが問われるのが「運用・運営」の要素です。
以前であれば、商品を売るために何をするか、というのがマーケティング戦略の中心でしたが、今は商品を売ることよりも、顧客との関係をどう構築していくか、が重要視されています。もちろん品質が良いことが前提にはなりますが、信頼されるサービス運営がなされていれば、顧客はサービスを簡単に見捨てることはないでしょう。
まとめ
UXを高めるために重要な要素を5つ挙げましたが、その関係性を図に表すとこのようになります。
上側の三角形(コンテンツ・機能、ユーザビリティ、パフォーマンス)は、サービスの核となるプロダクト/システムの品質と完成度を表します。これらを軽んじるサービスが生き残ることは難しいでしょう。作って終わりではなく、常に改善や見直しをする必要があります。
これに、ふたつの要素(ブランド、運営・運用)を加えることで、2段の三角形が出来あがります。これらの要素は、ユーザーとの持続的な関係性を構築するために不可欠なものです。
つまりこの三角形は、「サービスにおける顧客体験に影響を及ぼす要素を整理した図」であり、「サービスの完成度を高め、クリエイティブや日々の運営を通じてその価値を顧客と共有し続けることで、ユーザーのエンゲージメントが深まっていくこと」を表しています。
いかがでしたでしょうか。サービスを運営するにあたって、顧客やユーザーが増えない、継続利用してもらえないといった悩みは多いと思いますが、経験上、UXに課題があるケースがとても多いです。
今回ご紹介した5つの要素を各タッチポイントやインタフェースにおいて意識するだけでも、顧客の反応は大きく変わってくるはずです。やみくもにタスクを追いかけるのではなく、1に品質、2にエンゲージメントという順番で、本日ご紹介した5要素を意識して改善し続けることを強くオススメします。
それでは、また次回お会いしましょう。次は最終回「私たちはみな、サービスデザイナーだ」をお送りします。