新人研修とリモートワークで必要となる社内コミュニティ
山本氏は、エンジニアリングマネージャーとして、製品開発と技術者教育という二本の柱で仕事をしている。上村氏は、エンジニア・エンジニアリングマネージャーを10年近く経験したあと、エンジニアにとっての「はたらくを楽しく」を実現するため、人事部に異動して、いわゆるジンジニアとして採用・人材育成を中心に活動している。
コミュニティ作りのきっかけとなったのは、2020年のエンジニア採用が順調に進んだためだという。新人エンジニアを育てたいと、急いで人を育てる仕組みと研修コンテンツをそろえる必要があったのだ。そこで、人事部でエンジニア採用と育成を手がける上村氏が、山本氏に協力を依頼した。
「当初やろうとしていたのは、一般的なものでした。体系的な研修であるとか、エンジニアの技術力を一定レベルまで引き上げるもの、チームが違っても社内で通用する共通言語を取得してもらえるものなど。また、会社のミッション・ビジョンである"はたらくを楽しく"を盛り込んだ内容を想定していました」(上村氏)
「このようなキーワードには共感したんですが、そんなにはうまくいかないだろうと感じました」(山本氏)
そこで、山本氏は、研修がうまくいかないポイントとして、次の3つの課題を取り上げた。
まず、教える側から学ぶ側への一方通行になりがちという問題があるという。例えば、研修運営チームがフィードバックを求めても、受講生が「変なことを言って怒られないかな」と心配になるというように、立場の違いが大きいためフィードバックが回りづらいのだ。人事としても、研修を実施する前にコンテンツを作りこみすぎてしまう一方、フィードバックをもらっても、直す工数を取っていない場合もあるという。
2つ目の課題は、その場しのぎになりがちという点だ。エンジニアの環境は進化が異常に速いため学び続けることが重要だが、研修ではどうしても受け身の学習になってしまい、学び続ける習慣を身に付けるところまでたどり着きにくいのだ。
3つ目は、リモートワーク環境で孤独になりがちという課題である。Works Human Intelligenceでは、2020年の2、3月ごろからリモートワークが主流になっていたが、やはり新人がいきなりリモートワークになってしまうと、周りは知らない人ばかり、何をしているかもよくわからず、その結果として孤独になってしまいかねない。
「逆に考えると、これらの課題を解消したらうまくいくんじゃないかなと思いました。教える側から学ぶ側に一方通行になってしまうんだったら、フラットな関係にできればいい。その場しのぎになってしまうんだったら、受け身になるのが原因だろうから、自主的に参加できるようにしたい。孤独になってしまうのは、コミュニケーションが少ないということなので、頻繁にコミュニケーションできるようにしよう。それぞれの解決策がそろっていれば、うまくいくだろうと。
そこで、解決策を実現する方法として、『コミュニティを作りましょう』と提案して、実際に、Developer Dojoという社内コミュニティを立ち上げました」(山本氏)