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「オープンソースは実力主義ではない」多様な方々が学び、働くためのDrupal/アクイアの取り組み

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2021/03/08 11:00

目次

採用や人事でダイバーシティを推進

――アクイアでは、ダイバーシティに関してどのような取り組みをしていますか?

福岡:アクイアでは、日本を含む8か国15拠点で、グローバルに1000名の社員がいますが、国籍、人種、年齢、性別を問わず採用をすると掲げていて、トップマネジメントのなかでもCMO(Chief Marketing Officer)と、人事・採用をマネジメントするCPO(Chief People Officer)の2名が女性です。

 毎年2月はBlack History Month(黒人歴史月間)として、アフリカ系偉人の活躍を記念する月なので、2月は毎週のように黒人に関する歴史的事実と、歴史上に名を残した黒人の活動を紹介するメールが全社員へ送られてきました。また、積極的に有色人種の採用を進めていて、私が所属するマーケティングチームでも、新規の採用は黒人の方の割合が増えてきたなと思います。

丸山:アクイアでは、社内向けに活動や新メンバーを紹介するためのニュースレターが定期的に届くのですが、研究部門や開発部門にも女性が多いなという印象でした。マーケティング部門は特に女性が多いですよね。

福岡:多いですね。先ほどCMOとCPOで女性が2名いると言いましたが、ヴァイスプレジデントだと男女比が半々くらいですね。会社としても、ジェンダーバランスには気をつけているなと感じますね。例えば、日本でイベントを企画する際にも、上司からスピーカーの人選はジェンダーバランスを意識したほうがいいというフィードバックを受けました。

――リーダーシップをとっている女性の方が多いと、女性が活躍することが自然になる感じがあるなと思って、すごくいい環境にいらっしゃるなと思いました。

福岡:今はジェンダーバイアスを感じずに自然に働けています。意識せずに働けているのはありがたいことだなと思います。

 社外に向けての取り組みとしては、Black Girls Codeという、アメリカで黒人の女子学生にプログラミングを教えるNPO団体への支援があります。アクイアは、グローバル年次イベントの「Acquia Engage」で、Black Girls Codeのファウンダーをスピーカーとして招待したり、Black Girls Codeに対する寄付を参加者に呼びかけたりしてきました。

「長時間労働できることが標準」という状況が変わるといい

――これまでのキャリアと、アクイアでの働き方とでどんな違いを感じますか?

福岡:言い方は難しいですが、マイノリティであることや男女差について、「いま自分はちょっと異質なものとして捉えられているな」とか「ギャップがあるな」と感じるのは、いつもマイノリティ側が気づく傾向にあるなと感じています。というのも、私は20代の頃は、一切ジェンダーギャップやバイアスを感じずに働いていました。同年代が多い職場環境だったこともあると思いますね。

 例えば、自分が20代のときに、先輩の女性社員の方で「子供が小学校4年生になったので会社を辞めます」という方が同じ部門で2名いたんですよ。そのとき私は何の疑問も持たずに「お子さんの受験かな」くらいに思っていたんですが、後から、学童保育に入れる年齢が小学校4年生までで、家で子供を1人にしておくわけにいかないから一旦職を離れると聞いて。その時は自分のことではないから「そうなんだな」という感想しか出なかったんですけども、やはりそこでキャリアを諦めた女性がいたという事実がある。

 私自身もリクルートでは営業職だったので、妊娠してお腹が大きいまま営業に行ったり、妊娠前と同じパフォーマンスが出せなくなるのはチームに迷惑がかかりそうだと思い、一旦キャリアをストップさせた経験があります。ただ思っていた以上に社会復帰は難しくて、20代のように残業ができない環境で、私の場合はシングルマザーだったので保育園のお迎えのために午後5時には会社を出なくてはならない。こうした制約を、どれだけの関係者に伝える必要があるのか。伝えるとしても、早く会社を離れることを権利として主張することができなかったんですね。誰よりも早く出社して、残務があれば家庭でも深夜まで作業をしていましたが、帰り際にメンバーから相談を受けたり声をかけられると断ることができず、駅に着く前に保育園に「お迎えに遅れます」と電話をかけて、毎日走って帰っていました。

 保育園に行かないといけないから他のメンバーがまだ仕事をしている最中にどうしても仕事を抜けなきゃいけない。私が帰った後にミーティングがあったとしても、私はそこには出られないわけですよね。それをずっと負い目として感じていました。子供が熱を出すことは、独身時代の想像以上に頻度が多く、有給もすぐに使い切ってしまうので、私は社会復帰をした時点で「子供の熱で休まない」と決めて、自分の親や第三者に頼むようにしたんですね。子供の体調不良に合わせて休みをとっていたら、職を失ってしまうと考えていました。

 しかし、「子供の熱で休まない」決断が今後母親となっていく女性たちにとって良かったのかと考えると悩ましく、自分の希望を時には主張すべきだったなと今は思います。長時間労働が標準で、それができない人がマイノリティだということが少しずつ変わっていけばいいなという思いもありますし、誰しもが親や第三者に頼れる立場にいるわけではないので、「私は働きつつ子育てをしています」と主張するのは申し訳ないことではないと思うようになりました。これは、子育てだけに限らず、介護や、個人的な理由によって働く時間や場所が制限されてしまっている方にも当てはまると思います。

 というのも、今の上司とミーティングする際、時差があるので、私は夜10時、上司はワシントンD.C.の朝の8時から開始するのですが、新型コロナウイルスの関係で学校が開いたり閉まったりするので、「今日は私の息子を学校に送ってかなきゃいけないからこの時間にしてくれない?」と、ミーティングの時間が毎週のように変わるんですね。でも、それは申し訳ないことではなくて、自分の事情を説明して、分かってくれるであろうという信頼関係のもとにオファーしているんだなと捉えたんです。なので、もっと自分の状況を発信して、理解を得ることに積極的であってもいいのかなと思いました。

――丸山さんは何かギャップを感じることはありますか?

丸山:そうですね……。頭では理解していても、結婚・出産などは未経験な部分もあって、ギャップを実感しないことは多いですね。

福岡:20代で、男女差別的なシーンに出会わなかったことはすごくハッピーなことですよね。

丸山:そうですね、これまで非常に恵まれた環境に身を置いてきたなと思います。新卒で入った会社も組織体制として男女格差はなかったです。女性の役職者も多く、妊娠で辞める方は居ませんでしたね。

多様なバックグラウンドにある方を尊重していきたい

――これから、企業として、コミュニティとして、ダイバーシティを大切にしたいという方に対して、一言メッセージをお願いします。

福岡:人知れず職を辞めていった女性たちがたくさんいると思うので、社会復帰のしやすい環境が整うといいなと思います。

 30~40代は実力もついてくるので、それに見合ったロールを与えてほしいという、若い頃とは違った野心も出てくると思うのですが、意に合わない対応をされたときに、それはジェンダーギャップではないかと初めて思ったりしますね。特に管理職にならないかというオファーを受けたときに、昔は断る女性が多かったと思うんですよ。

 でも、自分の家事や育児は二の次にして仕事を優先してきたのに、アシスタント的な役割を求められたり、二番手にされてしまうところで、初めてジェンダーバイアスが世間にあることを知り、傷ついてしまうシーンがあるんじゃないかなと思います。これは男女差別という構図ではなくて、相手のことはわからないから起きること。自分がどういうキャリアパスをイメージしているかも、今の仕事に対してどう感じているかも、家事や育児と仕事を両立させるためにどういう生活のやりくりをしているかも発信してないわけなので。話さないことには分からないので、もしかしたら女性がもう少し発信していくことが大切なのかなと思います。

 次の世代に、もっと明るい未来を届けたい、今よりも、子育てをしながらでも自然に女性がキャリアを続けていけるように、あと一歩踏み出していきたいですね。

丸山:体験しないとわからないことはたくさんありますよね。女性だから、独身だから、お子さんがいるから分かることもある。いろんなバックグラウンドの人がいても、1人の人間であることには変わりないですよね。いろんな人がいるからこそ、今目の前にいる相手の人の気持ちを考えるのが大切だと思います。

――CodeZineとしても、多様性の問題に対して少しずつアクションをしていきたいと思います。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!



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著者プロフィール

  • 近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

    株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の...

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