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齟齬なく意思疎通するためのシンプル図解とは?エンジニアも知っておきたい新コミュニケーション術

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2021/07/28 07:00

 同じ職種や同じ部門のメンバーには通じる言葉も、一歩外に出れば専門用語やハイコンテクストな言葉となり、うまく意思疎通ができないことがしばしば。そんなときに図解を使って表現するシンプル図解、またの名をストラクチャードコミュニケーションが役立ちます。『エンジニアのための新教養 □○△で描いて、その場でわかるシンプル図解』(翔泳社)から、その基本的な考え方を紹介します。

本記事は『エンジニアのための新教養 □○△で描いて、その場でわかるシンプル図解 何でも伝え、何でもまとめるストラクチャードコミュニケーション』の「Chapter1 シンプル図解を始めよう!」から一部を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

伝えたい内容をお互いに理解することから始めよう

コミュニケーションの鍵は「相互理解」

 コミュニケーションスキルは、いつの時代もどの世代にとっても、身に付けておきたいビジネススキルの1つです。変化の激しいIT業界にいる皆さんにとっては、素早く正確にお互いの共通理解にたどり着くことが、ますます重要になっていくことでしょう。

 ストラクチャードコミュニケーションは、「速く確実な相互理解」を目的に開発されたコミュニケーション技法です。□○△を組み合わせ、シンプルに図解するので、誰でも身に付けることができます(図1.1.1)。

図1.1.1 ストラクチャードコミュニケーションは□○△を組み合わせたシンプル図解
図1.1.1 ストラクチャードコミュニケーションは□○△を組み合わせたシンプル図解

 この「速く確実な相互理解」を行えるかどうかが、ビジネスの成否を分けることがあります。例えば、「お客さまから要望を聞いてアプリを開発したが、要望の理解に誤解があり、開発にかかった作業と費用が無駄になった」「社内のシステム開発部門へ依頼したが、業務内容の理解に誤解があったため、納期が遅延してしまった」といった「相互理解ができていないこと」が原因で、時間的・金銭的な損失が発生したり、信用や信頼を失ってしまったりすることがあります。これは、ビジネスにとって大きな損害です。

シンプル図解の目的

 ストラクチャードコミュニケーション、つまり、本書で紹介する「シンプル図解」の目的である「速く確実な相互理解」について、詳しく見ていきましょう(図1.1.2)。

図1.1.2 ストラクチャードコミュニケーションの目的
図1.1.2 ストラクチャードコミュニケーションの目的

速く」とは、「15分の説明を5分でできる」「3回かかっていたヒアリングを1回でできる」「60分の会議を20分でできる」といった、時間短縮のことを意味します。

確実な」とは、「誤解による手戻り作業がない」「思い違いによるヌケ・モレがない」「勘違いによるダブリがない」といった、作業を効率的に行うことを意味します。

相互理解」とは、話し手と聞き手がお互いに「考えや想いをわかっている」「共通点や相違点を確認し合っている」といった、互いの認識が同じであることを確認し合うことを意味します。

シンプル図解がもたらす効果

職種別、場面別に期待できる図解の効果とは

 では、「速く確実な相互理解」を実現するコミュニケーション技術を使うと、どのような効果があるのでしょう?

 シンプル図解はさまざまなビジネスシーンで活用できます(図1.2.1)。

図1.2.1 さまざまなビジネスシーンにおけるシンプル図解の手順と効果
図1.2.1 さまざまなビジネスシーンにおけるシンプル図解の手順と効果

 限られた時間の中で情報を収集し、集めた情報をわかりやすく図解し、相互理解を図ることでビジネスを加速し、ビジネスの質の向上も期待できます

営業部門の場合

 限られた時間の中でお客さまからできるだけ有効な情報を聞き出し、それらをその場でわかりやすく図解して確認を取ることにより、提案のスピードと質の向上が期待できます(図1.2.2)。

図1.2.2 シンプル図解で提案のスピードと質が向上
図1.2.2 シンプル図解で提案のスピードと質が向上

 IT業界では、日々新しいテクノロジーが生まれています。ITに詳しい人でない限り、そうしたテクノロジーが自分のビジネスに役立つものかどうかを判断することは難しいものです。

 ところがお困りごとを抱えているお客さまの中には、目の前の課題を解決したいがために、よくわからないまま新しいテクノロジーやはやりのキーワードに飛びついてしまうことがあります。

 しかし、お客さまの真の課題や望む姿をきちんと把握せずに製品やサービスを提案したところで、有効な提案にはなりません。

 そこでシンプル図解を使い、お客さまの真の課題や望む姿を確認することで、有効な提案を速く行えるようになります。

技術部門の場合

 要求分析をする際にも、シンプル図解が役に立ちます。

 例えば、限られた時間の中でエンドユーザーからできるだけ具体的な要望を洗い出し、それらをわかりやすく図解して仕様をまとめられれば、製品開発のスピードと質の向上が期待できます(図1.2.3)。

図1.2.3 シンプル図解でシステム開発のスピードと質が向上
図1.2.3 シンプル図解でシステム開発のスピードと質が向上

 シンプル図解を使うと、受託システムの開発における要件定義でも、その後の開発や運用がスムーズに行えます。

 ほとんどのエンドユーザーは、システム開発に慣れているわけではありません。そのため、全体的な作業と一つひとつの具体的な作業を同じように説明される方がいるかもしれません。そうした説明を文章にすると、全体的な話と詳細な話とが入り混じって、わかりにくいものになりがちです。説明したことが記録されてはいるものの、エンドユーザーはもやっとした、ちょっとした不満を抱えることになります。

 そんなことにならないよう、シンプル図解を使ってシステムの全体像と詳細事項をわかりやすく示してみてください。

企画部門の場合

 シンプル図解を商品企画会議で用いるのも有効です。

 限られた時間の中で参加者からできるだけ多様な意見を引き出し、それらをわかりやすく図解して結論を導けば、商品企画のスピードと質の向上が期待できます(図1.2.4)。

図1.2.4 シンプル図解でシステムやサービスの早期リリースが可能に
図1.2.4 シンプル図解でシステムやサービスの早期リリースが可能に

 多くの利用者が使うシステムやサービスを企画する際は、いろいろな立場の人からさまざまな意見が出されます。それらの意見を全て取り入れようとすると、システムやサービスの開発に時間と費用がかかるだけでなく、結果として誰にも使われないものになりかねません。

 シンプル図解を使い、多くの意見の中からシステムやサービスの中核をなす価値ある機能を見つけ出すことで、システムやサービスの早期リリースが実現します。

コミュニケーションが苦手な人でも安心

苦手意識がビジネストラブルの原因に?

 業界、職種を問わず、コミュニケーションに苦手意識を持つ人は多くいます。筆者による分析では、コミュニケーションが苦手だという主な理由は次のようなものです。こうした苦手意識が仕事上のトラブルの原因になったり、失敗につながってしまったりすることもあるようです。

  • 自分の考えをうまくまとめられない。
  • 自分の言いたいことが伝わっていないと感じることがある。
  • 話しているうちに内容がずれていく。
  • ときどき、「要点は何?」と聞かれる。
  • 話していても相手からの反応が薄い。
  • 大勢の前で話すと緊張する。
  • 相手の話を要約するのが苦手である。
  • 相手の真意がわからないことがある。

コミュニケーションスキルを身に付けて、問題を解決!

 本書で紹介するシンプル図解は、「誤解が生じる」「信頼関係を損ねる」といったトラブルを防ぎ、「手戻りが発生する」「仕事が遅れる」といった効率の悪さを解決するのにも役立ちます。

 特にIT業界に身を置く読者の皆さんは、日頃のシステム開発業務の中で次のような経験をしたことが、きっとあることでしょう。

  • 作業内容の伝え方が不十分だったために、作業のやり直しが発生した。
  • 作業範囲を確認したが、双方の思い違いで作業の漏れやダブりが発生した。

 しかし、本書で紹介するスキルを日々の業務の中に取り入れれば、コミュニケーション能力に自信がない方であっても、さまざまなビジネスシーンで次のような効果を期待できます。

  • 報告や連絡:短時間で確実に言いたいことを伝えられる。
  • 商談やヒアリング:相手の話を確実に理解できる。
  • 会議や打ち合わせ:会話の内容を的確にまとめる。
  • コンサルティングや相談:相手と会話をしながらアイデアを創り出す。
図1.3.1 シンプル図解でコミュニケーションの問題を解決
図1.3.1 シンプル図解でコミュニケーションの問題を解決

シンプル図解の特徴

特徴1:図に描く

 シンプル図解の特徴の1つ目は「図に描く」ことです。

「図に描く」とは、図に描きながら伝えたり、図に描きながら聞いたり、図に描きながら一緒に考えたりと、図に描きながらコミュニケーションすることです。文章や言葉だけでは伝わりにくいことを、図を描くことで短時間で伝えることができます。

シンプル図解をちょっと試してみよう!

 例えば、次の文章を読んでイメージする図を描いてみましょう。

  • 左から順に、正方形、円、正三角形が、並んでいます。
  • 正方形の中には、円が2つ重なっています。
  • 円の中には、正方形が2つ重なっています。
  • 正三角形の真上には円があり、その中には正方形があります。

 どのようなイメージを思い浮かべましたか? 実際には、図1.4.1のような図を説明していました。

図1.4.1 正方形、円、正三角形の図
図1.4.1 正方形、円、正三角形の図

 この図をより正確に伝えるためには、より多くの情報が必要となります。その分、時間もかかります。しかし図を見せれば、それだけですぐに伝わります。文章や言葉に加えて図も用いることで、速く確実な相互理解ができます。

特徴2:その場で描く

 もう1つの特徴が、「その場で描く」です。「その場で描く」とは、相手とコミュニケーションをしているそのときに、その場で描くということです。コミュニケーションの内容に合わせて、その場で図に描きます

 例えば、相手からの質問に対してその場で図を描いて回答します。相手から聞いたことを、その場で図に描いて確認します。相手との会話の内容を、その場で図に描いてまとめます。その場で図に描くことで、コミュニケーションの最中に相手との理解の相違を解消します。こうした作業により確認作業を次回に持ち越すことがなくなり、速く確実な相互理解を実現できるのです。

 その場で図を描くには、手で描くのが速くて簡単です。シンプル図解では、手で描くツールとしてホワイトボードを勧めています。ホワイトボードは描いたものをすぐに消せるので、間違いを気にせずに描くことができます。

図1.4.2 その場で描けるシンプル図解
図1.4.2 その場で描けるシンプル図解

シンプル図解の要素

「論理的な思考」と「直感的な表現」で速く確実な相互理解

 シンプル図解では、要素として「論理的な思考」と「直感的な表現」を組み合わせて使用します。論理的な思考とは「情報を構造化すること」、直感的な表現とは「図解で視覚化すること」です

 論理的な思考による情報の構造化とは、情報と情報がどのような関係にあるのかを考え、組み立てることです。「思考」なので、これは頭の中で行います。頭の中にある考えを言語だけで表現するのは意外と難しいものです。そこで、わかりやすく示すために直感的な表現で図解をし、視覚化することで、速く確実な相互理解を実現します。

図1.5.1 シンプル図解では論理的な思考と直感的な表現が融合している
図1.5.1 シンプル図解では論理的な思考と直感的な表現が融合している

「伝える」スキルと「聞く」スキルの両方に対応

 コミュニケーションには、「伝える」「聞く」という双方向の要素があります。

 コミュニケーションスキルの多くは「伝える」スキルです。例えば、発表技術(プレゼンテーションスキル)、文書技術(ドキュメンテーションスキル)、主張技術(アサーションスキル)、交渉技術(ネゴシエーションスキル)、報連相についてのものなどが「伝える」スキルとしてあげられます。

「聞く」スキルとしては、傾聴技術(アクティブリスニングスキル)、質問技術といったものがあります。

 一方、本書で紹介するシンプル図解・ストラクチャードコミュニケーションは、伝えるスキルと聞くスキルの両方を兼ね備えたものです

図1.5.2 シンプル図解では伝えるスキルと聞くスキルの両方が含まれる
図1.5.2 シンプル図解では伝えるスキルと聞くスキルの両方が含まれる

速さと確実さを両立

 今でも、速い仕事は品質に問題があるように思われ、確実な仕事は時間がかかるように思われることがあるかもしれません。しかし、優れた仕組みは「短時間で高品質なもの」です。

 アジャイル開発は、不確実性に対応するために短い周期でソフトウエアをリリースし、それを繰り返しながらシステム全体を作り上げていく技法です。アジャイル開発も、速さと確実さの両方に対応するために生まれた技法といえます。

 シンプル図解も、速さと確実さを兼ね備えています。かつ、シンプル図解は相互理解を目的としたコミュニケーション技法です

図1.5.3 シンプル図解では速さと確実さが両立する
図1.5.3 シンプル図解では速さと確実さが両立する
エンジニアのための新教養 □○△で描いて、その場でわかるシンプル図解 何でも伝え、何でもまとめるストラクチャードコミュニケーション

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エンジニアのための新教養 □○△で描いて、その場でわかるシンプル図解
何でも伝え、何でもまとめるストラクチャードコミュニケーション

著者:加島一男
発売日:2021年7月19日(月)
定価:2,200円(本体2,000円+税10%)

本書で紹介する「シンプル図解」は、上司と部下の相互連絡、社内他部門との調整や協議、顧客との説明やヒアリング等、多くのシーンで活用できます。



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著者プロフィール

  • 加島 一男(カシマカズオ)

    実験家実装家。学生時代にコンピュータプログラミングを学ぶ。コンピュータが、プログラムの指示どおりに動く純粋さに惹かれ、プログラマーを志望しシステム開発企業に入社。しかしその意に反し、指示どおりに動かない人間を対象にプログラミング等を教える、教育部門に配属。失意の中、先輩に恵まれ、心機一転。指示どおり...

  • 渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

     翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

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