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目指すのは「全社員プチデザイナー化」 デザイン推進室発足の背景とその取り組みとは

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カギは複数職種の連携 事業構想の上流からデザインプロセスを

 ラクスルでは、新規プロダクト発足時点でデザイナーとプロダクトマネージャーがアサインされ、UI/UXの初期構築がスタートします。これは、デザイン経営実現のために「事業構想を作るもっとも上流からデザインプロセスを入れること」が重要であるという考えにもとづいています。

 ユーザーへのインタビュー、ユーザビリティテストを経てプロトタイピングが進み、プロダクトローンチ後も改善を重ねる。デザインとは、事業のあらゆる顧客接点を設計することであり、担当領域は非常に幅広いものです。そのすべてをデザイナーが担うのではなく、BTC(ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ)の3職種のメンバーが深く連携しデザイン思考も取り入れビジネスを回していくことが、ラクスルの事業成長を支えています。

 ときには、BTCのメンバー全員が集まる「デザインスタジオ」というワークショップを行うこともあります。ユーザーの課題すべてを洗い出し、必要な機能のアイディアをプレゼンしあう。そうして集まった三者三様の視点から、良い点や必須機能の絞り込みを進めていくのです。ラクスル事業のノベルティサービスはそうしたプロセスを経て形づくられました。

 たとえば、「ラクスル」の印刷物の自動データチェック機能も、ユーザーインタビューを重ねたことで顧客ニーズの確信につながりました。

 それまでは、印刷データがアップロードされたあと、ラクスル側がデータ内容に問題がないかをチェックしており、最大15時間の待ち時間が生じていました。その確認のやりとりを終えてからようやく印刷がスタートするため、印刷物が手元に届くまでに時間がかかってしまいます。印刷物を営業ツールとして活用しているお客さまの場合、すぐにでもそれを展開し営業機会を最大化したいのに、いつ届くのかわからない――。それでは、使い勝手の良いサービスとは言えません。

 そこで、自動データチェック機能作成のためのプロジェクトを立案しました。プロトタイプを作成し、ユーザビリティテストの設計を進め、現場観察とテストを実施。問題なく使える部分はエンジニアが開発を進め、再びテストによって改良を重ねる。こうして、データのアップロード後すぐにチェックし、印刷の工程へと進められる機能が生まれました。顧客を中心に置いてサービス設計を考えるといったデザイン経営のありかたが具現化された好例です。

ロジカルもフィーリングも 多様な視点こそが強い組織につながる

 デザイン推進室が意識的に行っているのは、「アイディアを絵で表現すること」です。

 事業拡大に向けて、数字やデータをベースにしたビジネス戦略のディスカッションはもちろん大切ですが、フィーリングで良し悪しの意見を交わす機会もなくしてはいけないと思っています。

 「こんな風にプロダクトを作っていきたい」と絵で見えるものを作り、感覚的なフィードバックや共感をもらう。好意的な感触や違和感を言語化していくプロセスに、ユーザーに愛されるプロダクトづくりのヒントがあるはずです。

 価値観の多様化が広がる今、ビジネス思考、システム思考、デザイン思考を幅広く持っている人材、ひとつの職種に閉じない多才な人材が求められる時代になっています。

 誰もが「デザインもちょっとできる」ようになることで、ビジュアライズされた絵を見てプロダクトをイメージできるようになる――。そんな人材を増やし、デザイン視点をもとに小さなイノベーションをたくさん起こせる組織体をつくることが、デザイン経営推進においてとても重要だと考えています。

 いかがでしたでしょうか。次回もお楽しみに。

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https://codezine.jp/article/detail/14812 2021/09/06 08:00

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