「顧客が抱えるペイン」からクリエイティブを作る
では、クリエイティブターゲティングの訴求軸の導きかたを「骨伝導イヤホン」の訴求を例に考えてみましょう。
骨伝導イヤホンは、国内外でさまざまな商品がありますが、多くの商品は「耳を塞がないことで安全性や快適さを保ちながら、高音質で音楽が聞けること」が特徴です。
こうした特徴があるので、通勤通学時やスポーツ時、あるいは家事をしながら音楽と環境音の両方を聞くというユースケースが考えられます。さらに、耳を長時間塞ぐことに抵抗のある人が快適に音楽を聴くために使う、ということも考えられるでしょう。
このような場合、従来のアプローチではユーザーインタビューやリサーチから「安全性」「快適性」「クオリティ」などの訴求軸を絞り込み、それに即したクリエイティブを制作していました。たとえば、「安全性」「快適性」に訴求軸を絞るのであれば、以下のような訴求例が想定できます。
一般的な訴求軸の考えかたの一例
- 安全性訴求:訴求例「音楽をもっと安全に楽しむなら」
- 快適性訴求:訴求例「耳が塞がらないから快適なつけ心地」
ビジュアルもターゲットをこまかに意識することが大切
しかし、クリエイティブターゲティングの考えかたでは、まずどのような顧客がターゲットになり得るのか、それぞれが抱えるどんなペインポイントを解決し得るのかを、詳細に洗い出します。そうして見えてきたユーザーのターゲットやペインポイントごとに訴求軸を考え、クリエイティブを開発していきます。
たとえば次のような流れです。
クリエイティブターゲティングを行う場合の訴求軸
ターゲット1)家事で忙しいビジネスパーソン- ペインポイント:ニュースや情報をインプットしたいが、その時間がない
- 訴求軸「家事をしながら、オーディオブックを聞くなら」
- ペインポイント:音楽を聞きたいが、耳を聴きたいがうのは危ないと感じている
- 訴求軸 「ジョギング中も、音楽を安全に」
- ペインポイント:骨伝導イヤホンの利便性を理解しているがクオリティに満足していない
- 訴求軸「骨伝導イヤホンの音質に、満足できないあなたへ」
※上記内容はあくまでイメージです。
クリエイティブターゲティングは、もちろんコピーに絞った話ではありません。それぞれの訴求、上記の例で言うとそれぞれのオケージョンに最適なビジュアルに合わせていきます。
たとえば、家事で忙しいビジネスパーソン向けのクリエイティブ、ジョギングをする人向けのクリエイティブなど、わかりやすいオケージョンを、それぞれのコピーとビジュアルで一気通貫して伝えることで、顧客により自分ごと化してもらうことができます。
クリエイティブターゲティングの発想でつくられた、よりパーソナライズされた訴求は、結果的に顧客1人ひとりに深く刺さるものになります。もちろん、マーケティングの目的によっての使いわけは必要ですが、従来型のターゲティングが難しくなりつつある中で、顧客起点で細かいターゲットに最適化したクリエイティブを量産・運用していくというアプローチは、これから間違いなく大切になっていく考えかたでしょう。
いかがでしたでしょうか。今回は、日々大きく変化するデジタル広告において求められる、新しいクリエイティブの発想法についてご紹介しました。最終回となる次回は、デジタル広告制作などに携わるクリエイターがおさえておきたい「顧客理解」の方法をご紹介します。ぜひご期待ください。