アジャイルを実践したことで得られた学びとは
アジャイル開発は手段であり、目的ではない。欲しい機能を形にすることを優先する。例えビジネス側がユーザーへのリサーチを経て「こういう機能や業務を実現したい」と言えば、開発側が「それなら、こういうやり方がある」と提案し、一緒に開発していくという流れでペアワークを進めていく。
小林氏は「細かいテクニックやデザインの仕方、気分転換の方法など、当初のVMwareとの3カ月でかなり吸収できました。こういうのは本を読むだけではなかなか分かりません。社内メンバーにアジャイル手法を伝授するにも付け焼き刃の知識ではなく『ここはこういう理由で意味がある』と自信をもって説明できます」と話す。隣で岡崎氏は「あれが1カ月だったら無理でしたね」と苦笑いする。貴重な3カ月だったようだ。
アジャイル開発を経験したことで、岡崎氏と小林氏は口をそろえて「選択肢が増えた」と評価している。アジャイル開発を会得したからといって、これからすべての開発がアジャイルになるとは限らない。定型的な業務で今後もそう変わらないのであれば、従来通りの開発手法でもいいかもしれない。今回のように要件を明確に決めるのが難しく、模索が必要な新規開発であれば、アジャイル開発が向いているかもしれない。状況に応じて開発のスタイルを選択することが可能になったと岡崎氏は見ている。今後はガイドラインを整備していく予定だ。
現在、システムは130社ほどが利用している。ユーザーはブラウザでアクセスし、ETFの銘柄コードを入力して送信すると、各社からの提示価格が表示される。最も安いものだけが購入できるようになっており、不利な価格のものは購入できず、不必要な情報は表示しないなどの配慮もある。
また面白いのが金額を入力するところで「1億円」「1000万円」などのボタンが用意してあるところだ。3億円なら「1億円」ボタンを3回押せばいい。ユーザーはプロフェッショナルとはいえ、桁数が大きいため数字の直接入力よりはボタンのほうが楽で確実だ。このボタンはユーザーから好評だそうだ。
これまで電話で30〜40分かけて価格を比較してから購入していたところ、1度に価格が表示されるため数分でこの業務を終えることができるという(ただ操作するだけなら10秒程度だが、金額の大きさや確認事項もあるので実質的には数分程度かかる)。
これからアジャイル開発に挑戦しようとする人や企業に向けて、小林氏は「アジャイル開発に『興味はあるけど、うちはムリ』と思うなら、まずはやってみてください。きっと学びがあると思います。経験を積んだVMwareの先生がついて教えてくれますので、本格的なやり方が分かるようになります」とエールを送る。
続けて岡崎氏も「アイデアは既存業務のなかにたくさん眠っていると思います。今回みたいに『こういうサービスあったらいいのに』と思うケースはたくさんあり、選択肢がウォーターフォールだけでは対応できないこともあると思います。また開発を依頼するのではなく、主体的に開発に携わることで納得感あるプロダクトを作ることができます。これからの新しい手法や選択肢を増やすという意味で、アジャイル開発にチャレンジしてみるといいと思います」とアドバイスした。
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