SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

AIプロダクトの品質保証はどう進める? 「QA4AIガイドライン」概要と活用

「QA4AIガイドライン」とは何か? AIプロダクトの品質保証における課題と推進のための5つの軸

AIプロダクトの品質保証はどう進める? 「QA4AIガイドライン」概要と活用 第1回

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

チェックリストの質問項目

 QA4AIガイドラインに示されているチェックリストの質問項目は、具体的になっており、回答することでチェックリストを満たしているかを確認することができます。例えば、学習データの量の十分性であれば、以下の質問項目から構成されています。

(a.i) 想定する学習手法の適用前提や統計的観点から十分な量のデータがあるか。

(a.ii) 想定する要求・適用環境において、希少な状況や分類クラスの偏りがある場合であっても、それらに対して十分な量のデータがあるか。

(a.iii) データ量が少ない場合、「かさ増し」(人工的なデータ生成など)で補完が可能か。

 各チェックリストに対して1つから4つの質問項目が設定されています。質問項目はいずれも具体的ですが、担当者の習熟度によっては理解が難しい部分もあります。そこで、元の質問の意図をより明確にするための質問や解説の追加を行うことが必要な場合があります。これについては第2回にて詳しく述べますが、例えば、System Qualityの中の「事故発生の回避性」には次のようなチェック項目があります。

十分な安全機能や耐攻撃性を提供しているか

 システムの安全性に通じていれば問題なく理解できる内容ですが、その知見がないと「十分」という言葉の解釈を誤る可能性があります。QA4AIガイドラインを用いる際はチェックリストを使う担当者の知識レベルを想定した上で、組織ごとに解説を追加することをお勧めします。

チェックリストの評価

 QA4AIガイドラインには、5軸とそのチェックリストの評価結果が例示されており、評価結果を顧客の期待とのバランス、開発フェーズ別のサイズの双方に着目して判断しています(図表2)。全ての軸が高評価となることが良いプロダクトというわけではなく、フェーズやシステムの特性によって満点は変わります。つまり、レーダーチャートを可能な限り大きくすることが必ずしもその時点での正しいアプローチではないということです。ガイドラインを用いてAIプロダクトを評価する際はこの性質をよく理解しておく必要があります。

図表2 QA4AIガイドラインでのレーダーチャート
図表2 QA4AIガイドラインでのレーダーチャート

おわりに

 今回は、AIの品質が注目されている理由と現状の取り組み等を解説し、取り組みの一つの事例であるQA4AIガイドラインの概要の紹介をしました。また、QA4AIガイドラインを現場で適用する際の留意点についても軽く触れておきました。少しでも参考になると感じられた方は、QA4AIガイドラインの原本を読んでみてはいかがでしょうか。

 第2回ではより詳しく現場で適用する際の具体例を示しますので、ご興味がある方は読んでいただければと思います。

参考文献

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事の著者

須原 秀敏(株式会社ベリサーブ)(スハラ ヒデトシ)

 株式会社ベリサーブ所属。車載関係を中心にソフトウェアテスト/品質業務を経験。現在はテスト会社における研究開発部門でモデルベースドテストやAIの品質保証技術の開発に取り組む。JSTQB技術委員、JTC1/SC7/WG26エキスパート

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/17238 2023/02/16 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング