QA4AIガイドラインとは
QA4AIガイドラインは、正式名称を「AIプロダクト品質保証ガイドライン[5]」といいます。国内の産学の関係者でつくるQA4AIコンソーシアムが発行しており、AIプロダクトの品質保証における共通の指針となることを目的としています。2019年6月の初版から改訂を繰り返し、2022年7月に最新版がリリースされています。
AIとその品質保証は日進月歩で進化しており、QA4AIガイドラインも新たな技術や内容の追加・修正が随時行われています。本連載で紹介する事例も、その事例について検討していた当時のバージョンのQA4AIガイドラインを私たちなりに理解して使ってみた内容となります。ガイドラインの適用を検討する際はこのような性質についてご留意いただき、最新版で確認いただければと思います。
AIプロダクト品質保証の5軸
QA4AIガイドラインでは、次の5つをAIプロダクトの品質保証の軸としています。
- Data Integrity(データがきちんとしているか)
- Model Robustness(精度が高く頑健性が確保されたモデルであるか)
- System Quality(システム全体として品質が確保できているか)
- Process Agility(開発プロセスは機動的か)
- Customer Expectation(顧客の期待は高いか)
これを図式化したものが図表1です。ガイドラインでは各軸にチェックリストが用意されています。これら用いて十分な検討や処置が実施されているかを判断します。
例えば、記憶に新しいStable Diffusion[6]等において著作物を学習データとして使用することが法的に問題ないかという点は、軸「Data Integrity」-チェックリスト「学習データの法的適合性」に該当します。また、自動運転車においてAIシステムが正確な判断を行えない場合にドライバーに運転を委ねる振る舞いは、軸「System Quality」-チェックリスト「事故発生の回避性」に該当します。これは、米国政府が公開した、AI時代の権利憲章に向けたブループリント[7]の5つの原則に含まれる人間による代替、考慮、予備的措置に相当し、5つの原則を守ることでQA4AIガイドラインの品質保証の5軸(の一部)を実現することができると解釈できます。