「計画的権限移譲」で定期的にポジションを変える
常松氏がVPoEに就任したのは2022年10月。しかし、その2年以上前から計画的な権限移譲は始まっていた。前任が退職してポジションが空くから常松氏が就くのではなく、前任と常松氏でポジションを変えることが先に決まっていたのだ。
同じ人が長く同じポジションを務めると、経験が溜まって良い面もあるが、変化に耐えられないといった悪い面も出てくる。それならある程度区切りを決めて人を変えたほうが良い。そうするためには、そのポジションに就いた人が、次を任せる人を抜擢・教育するなどの準備をする必要がある。それがこの時「計画的権限移譲」を行った理由だ。
常松氏は、「私も未来永劫VPoEでいるつもりはないし、数年先には後任にバトンタッチしたいと考えています。それまでに解決したい課題についてもメンバーに共有し、できれば私を追い出して計画的に権限移譲させてほしいという話をしました」と話す。
常松氏が最初にマネジメント職に就いたのは、キヤノンでの電子辞書のソフト開発のプロジェクトだった。規模の大きなプロジェクトで、開発が遅延するなどあまりうまくいかなかったという。常松氏は、「自分ではあまりマネージャーとしての手応えを感じていなかったのですが、ステークホルダーからは『助かりました』という声をいただきました。自分はエンジニアとして貢献するよりもマネジメントの方が評価されるようだと思いました」と語る。それがマネージャーを志す原体験となった。
マネジメントの難しさは、どんな仕組みや開発体制がいいのかという正解がないことだと常松氏は言う。企業ごとに異なるのはもちろん、その企業のフェーズによってもあるべき望ましい姿が変わってくるため、その都度考えなければならない。例えば数年前のRettyと今のRettyでは、同じやり方をとっても結果は異なるだろう。
難しい問題に直面した時は、マネージャーの腕の見せ所だと言える。問題に向き合い、時間をかけて理解して原因を調べ、然るべき対処をする。常松氏は「問題の原因を突き止め、仕組みを変えて解決できた時などは、マネージャーの仕事に面白味を感じます」と語った。