出島のように、見えない壁を意識してつなげていく
経済産業省のDXレポートによると、「企業が競争上の優位性を確立するには、常に変化する顧客・社会の課題をとらえ、素早く変革し続ける能力を身につけることが重要」である。そのために目的ごとに組織を横断したチームを編成し、顧客視点で優先順位を決め、状況に合わせて意思決定する必要がある。「変化に素早く対応し続ける」ため、アジャイルやマイクロサービスの手法が取り入れられる。
ところが、現状は違う。企業は「安定して効率的に対応し続ける」能力を持っている。具体的には業務、システムの目的ごとに部署を分割して個別最適化をしていく。そして長期的に視点で定めた目的や優先順位に従い、業務をこなす。従来型のウォーターフォールやモノリスはこうした従来の在り方を前提として成り立っている。
そのためDXを推進するとなると、両者の間で悩むことになる。このギャップを解決するために重要なのは「意識的に分離し、つなげる」ことと鈴木氏は言う。イメージとしては長崎の出島だ。従来の世界と完全に分離した孤島にしてしまうと、流通が遅すぎて成果が小さくなってしまう。あるいは半島のような場所だと従来型の影響を受けやすく、結局実態が昔と変わらず成果を出しにくい。
だからこそ、出島だ。陸とは世界が異なるものの、橋でつながっている。鈴木氏は「両者の間にある『見えない壁』を意識して橋を渡す」ことが重要だと話す。