長期利用が想定されるシステムでは将来にわたる安定供給が選定のカギ
以上、今回の「Web TECH FORUM 2023 Autumn」で実施された2つの講演の模様をレポートしてきたが、講演終了後には、受講者からの質問に講演者が答えるQ&Aのコーナーも設けられた。以下、そこで行われた2件の質疑応答をピックアップして紹介しておく。
その1つは「Webシステム構築において利用するフレームワークの選定基準として、例えば利用者数や利用対象者の一般/法人の別、ECサイトや基幹といったシステムの違いなどが考えられるが、どういう方針で臨むべきか」という質問だ。
これに対し小林氏は、フレームワークを選ぶときには、開発対象となるシステムがどういうものかが、一般的には選定基準になると強調。例えばECサイトの場合には、SEOにかかわる要件も入ってくるため、通常はサーバーサイドレンダリングの仕組みを選択することとなる。それにより、フレームワークの選択肢も絞られてくるわけだ。
さらに小林氏は「あとは、講演内でも触れましたが、いま世の中でどのライブラリがよく使われているのかという視点も重要だと思います。例えば、長期的にメンテナンスしていく必要のあるシステムでは、当然、将来にわたり安定的に提供され続けるフレームワークを選択する必要があるわけです」と応えた。
2つめは、「利用するライブラリを最小限にするために、定期的にメンテナンスしていく必要があるが、どれくらいの頻度でチェックするのが望ましいか」という質問である。これに対し小林氏は、「当然、それは開発のライフサイクルによって変わってくる。仮に1週間でスクラムを回しているなら週1回、2週間サイクルなら2週間のうちのどこかでアップデートチェックを行うといったプロセスをフローに組み込むかたちとなるでしょう」と語る。
もっとも、高頻度で細かなリリースを重ねるパッケージなどもあり、またチェックには相応の工数を要することから、やはりそこは全体のバランスを見ながら決めていくべきだという。「自分の経験則では、だいたい1週間から1カ月くらいのサイクルでチェックしているケースが多いかと思います」と小林氏は語る。
企業の業務にデジタル活用がますます浸透していく中、Webアプリケーションのフロントエンド領域にも、これまでにない高度なレベルで、機能性や使い勝手のよさにかかわる要件が課せられてきている。そうした要請に応える開発を推進していくうえでは、適宜周辺のフレームワークを併用したReactの活用が1つの重要なカギを握っているものといえる。開発者にとっては、引き続きその動向をしっかりとキャッチアップしていくことこそが肝要だ。