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Developers CAREER Boost 2023 セッションレポート(AD)

給料は日本の5倍で、世界から集まる優秀な人たちと働ける──日本のエンジニアがアメリカで働くルートとは?

【A-2】アメリカで働くということ、そして日本人がアメリカで働くために

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 アメリカで働くことは多くの日本人にとって魅力的な選択肢である。特にシリコンバレーなどは「給与が日本の5倍」「世界中の優秀なエンジニアが集まる」といった印象を持たれており、憧れを抱く人も少なくないはず。Google、IBM Research、旧Facebookで働いた経験を持つ株式会社IVRy(アイブリー)の花木健太郎氏は、2023年12月9日に開催された「Developers CAREER Boost 2023」において、アメリカで働くことの魅力と、日本人がアメリカで働くための3つの方法について語った。

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働き方が自由な海外、多くの優秀な人たちと出会える

 花木氏は自然言語処理を専門とし、機械学習に10年の経験を持つ。彼はアメリカのミシガン大学で理論物理の博士号を取得した後、分野を転じてニューヨーク大学でデータサイエンスの修士号を取得した。修士課程在籍中には、ゴールドマン・サックスとFacebook AI Researchでインターンを経験した。卒業後はIBM Researchに入社してコグニティブソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、1年半ほど働いた後、シリコンバレーでの勤務に興味を持ちGoogleの本社に転職。機械学習系のソフトウェアエンジニアやテックリードとして活躍した後、日本のスタートアップへと移った。

株式会社IVRy Principal AI Engineer 花木健太郎氏
株式会社IVRy Principal AI Engineer 花木健太郎氏

 IVRyは主に電話の自動応答サービスを提供している。多くのレストランや店舗では、電話が頻繁にかかってくることで作業が中断されることがある。IVRyは、このような状況を改善するために自動応答システムを導入し、店舗の従業員がより重要な業務に集中できる環境を作り出している。花木氏はここで音声認識とAIを用いた次世代の自動応答サービスの開発を担当している。

 最近、海外で働く日本人エンジニアが増えている(特にXやその他のSNSを見ると、海外で働くエンジニアたちを見かけるようになった)。しかし、海外での就業に関する情報はまだ入手しにくい状況であり、SNSでは散発的な情報が多いため、まとまった情報が得られる場所は少ないと考えられる。花木氏は、自身の経験にもとづきアメリカで働く方法を説明する中で、多くの人の話を聞くことも重要だとし、場合によってはSNSで直接DMを送るなどして情報収集する方法もあるとアドバイスした。

 花木氏は、アメリカと日本の違いは、「給与の高さ」「働き方」「周囲の人々」であるとし、それぞれ説明を始めた。まずは「給与の高さ」だ。例えば、Metaには年収8000万を稼ぐシニアリサーチサイエンティスト、Amazonには新卒で4500万円程度を稼ぐソフトウェアエンジニアがいる。また、統計情報では、サンフランシスコベイエリアのエンジニアの中央値が24万ドル(※1ドル=150円換算)、約3600万円程度とある。Googleは新卒から5〜6年でシニアポジションに昇進できるが、その年収は6000万円ほどだ。花木氏によるとGoogleは人気企業なのでビッグテックのわりに報酬は低いほうだという。

サンフランシスコベイエリアのソフトウェアエンジニアの年収の中央値は日本の3〜5倍
サンフランシスコベイエリアのソフトウェアエンジニアの年収の中央値は日本の3〜5倍

給料は5倍のアメリカで働くメリットと課題

 給与が高い一方で、生活コストもかかるのではないかという懸念がある。ここでも花木氏は統計情報を出し、サンフランシスコの生活コストは東京の2倍程度であることを示した。

 「給与の中央値が3600万で、これは日本の東京の5〜6倍です。生活コストの差よりも年収の差の方が大きいため、手元に1000万円残すことも可能だと思います」(花木氏)

 次に、「働き方」の違いだ。アメリカでは、基本的に結果が全てである。結果を出していれば、自由に働けることが多いため、9時から5時の勤務が厳密に求められることは少ない。例えば、花木氏がFacebookで働いていた時の同僚は、無料ランチが終わる時間ギリギリに出社することがあったが、結果を出していたため特に問題視されなかった。また、ニューヨーク大学時代のクラスメイトは、1日2時間しか働いていなかったが、その間に仕事を終えていたため、誰からも文句は言われなかったそうだ。その一方で、長時間働く人も多い。特に結果を早く出したい若手や昇進を控えた人々は、昇進を目指して長時間働くことがある。

 一方で、個人の結果にかかわらず訪れるのが会社都合のレイオフだ。花木氏は、「レイオフは運次第なので、いつでも転職できるよう常に自分の武器を研ぎ澄ましていくことが大切です」と語った。

レイオフは当初から覚悟しておくべきで、そのための自己研鑽は必要
レイオフは当初から覚悟しておくべきで、そのための自己研鑽は必要

 そして3つ目の違いは「周りの人々」だ。アメリカには世界中からIT人材が集まっている。花木氏がIBMに所属していた際のチームメンバーの国籍はインドやパキスタン、ポーランド、ヨルダン、ドイツ、中国、日本など多岐にわたっていた。さらに、宗教の多様性も顕著で、ヒンドゥー教徒やイスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒など多様な宗教や国籍を持つ人々と共に働くことで、花木氏はさまざまな視点を身につけることができたという。

 特に強い分野においては、まさに世界選抜のような状況になっている。花木氏が学んだ研究室には、オープンソースの機械学習ライブラリPyTorchのメイン開発者であるSoumith Chintala氏(インド出身)や、OpenAIの共同創業者のWojciech Zaremba氏(ポーランド出身)、DALL·E、DALL·E 2の論文の筆頭著者であるAditya Ramesh氏(インド出身)などが在籍していた。

アメリカで就労できるようになるための代表的な3ルート

 日本のエンジニアがアメリカで働くには、英語力や技術力の壁を越えなければいけないが、最初の障壁は「就労ビザ」である。その取得方法について、花木氏は次のように説明した。

 「アメリカの就労ビザ(H-1B)の取得は抽選制であり、2022年の当選率は30%未満と、採用する企業にとってはリスクとなるので、ビザを持っていない人は選考に進めません。卓越能力者のビザ(O-1)もありますが、これも非常に狭き門です」(花木氏)

 さらに花木氏は、現実的な就労ビザ取得のルートとして、「アメリカ企業の日本支社で働いて、アメリカに転籍(L-1)」「アメリカの大学‧大学院を卒業しそのまま働く(F-1からH-1B)」「アメリカ人またはグリーンカードを取ろうとしている人と結婚する」の3つを説明した。

 アメリカの企業の日本支社で働いた後に本国に転籍するL-1ビザの良い点は、配偶者も就労できることだ。面接が日本語の場合もあり、欠点としては転籍が可能な会社が少ないことだ。花木氏は「GoogleやAmazonは、わりと自由に転籍が可能なので、その辺に入ると良いと思います」とアドバイスした。

 L-1ビザは会社にひもづいているので他の会社に移ることができない。そのため、転職するにはH-1Bやグリーンカードに切り替える必要があるが、日本人がシリコンバレーで働く方法としては一番メジャーな方法だという。

本国に転籍できる米国企業が狙い目
本国に転籍できる米国企業が狙い目

 アメリカの大学‧大学院を卒業しそのまま働く方法は、F-1という学生ビザから、理系の大学大学院卒業後3年間働けるOPTを経てH-1Bに切り替えるルートだ。韓国人や中国人にとってはメジャーな方法だという。

 この方法のメリットについて花木氏は、「英語やアメリカ文化にどっぷり浸れる点はいいと思います。テック企業のコネもつくれますし」と話した。欠点としては、大学院に合格するハードルが高いことであり、たいていの人は10校ほど受験するという。

博士課程の合格は狭き門だが、修士課程ならチャンスあり
博士課程の合格は狭き門だが、修士課程ならチャンスあり

 3つ目のルートは、アメリカ人やグリーンカードを取ろうとしている人との結婚だ。相手さえいれば一番楽な方法だが、そのような相手が都合良く見つかるとは限らない。他にも投資ビザや、カナダ国籍を取得してアメリカで就労するという方法もあるそうだ。

日本のエンジニアは、アメリカでも十分戦える

 花木氏は、日本のエンジニアはアメリカで十分に競争できると考えている。最上層の優秀なエンジニアばかりでなく、日本人の一般的なレベルでも対応可能だという。しかし、日本のエンジニアが直面する課題として、データ構造とアルゴリズムなどに代表されるコンピュータサイエンスに関する知識不足が挙げられる。なぜならアメリカでは、新卒エンジニアはコンピュータサイエンスの学位を持っていることが多いからだ。

 採用試験では、主にデータ構造とアルゴリズムに関する知識が問われるため、これらの知識を取得した上で、コーディング面接準備のプラットフォームである「LeetCode」で問題を解くことが有効な対策となる。ここで難易度Medium以上を50〜400問くらい解くと合格ラインに到達しやすいそうだ。

 最後に花木氏は、「英語力はジュニアレベルならドキュメントの読み書きができれば、さほど問題ではありません。シニアレベルでは各種調整ごとが求められるため、英語でのコミュニケーションスキルが必要となります。今からでもコツコツ英語を勉強しておくことが何よりも重要です」と全体に向けてアドバイスをし、セッションを締めた。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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